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第九章
9-29
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一波乱あって後――
違った形で「新たな波乱」を呼びそうな人物が、村への帰還を果たす。
勇者組が日常的、常習的に使わせてもらっている教会内の調理場付きの一室で、少々不機嫌な、斜に構えたリンドウとヒレンを前に、
『マビィイーーーッ♪ 誰っスかぁこちらの「美人さん方」ぁあっぁあ♪』
無神経に騒がしい有頂天を上げたのは、
『オレっちぁインディカっスぅ! お美しいお姉さま方ぁ♪』
大司祭の御使いで王都エルブレスに行っていた彼であった。
二人が「百人の天世人」と未だ紹介されてもいない初対面でありながら、既に跪いて女神様扱い。
都会暮らしで多少なりとも「女子馴れ」した感を窺わせる満面の笑顔の彼に、初対面となる女子二人が受けた第一印象は、
((ウザぁ))
最悪であった。
上辺(うわべ)しか見ていないような物言いに。
冷たい眼差しで彼を見下ろす女子二人にラディッシュ達は苦笑を浮かべ、
《根は悪いヤツじゃないんだけどぉ……》
思った所で口にしなければ通じる筈も無く、否、言ったとしても彼が調子付くのは明らかで、どちらにせよ、
「「…………」」
二人の苛立ちは増すばかり。
ラディッシュ達の気苦労をよそに、当の本人は女子二人から向けられる「批判の眼差し」を意に介する様子も無く、
『かぁー♪ 「くーるびゅてぃ」ってヤツっスねぇ♪』
二人を称賛、絶賛。
満面の笑顔のまま、
「それでラディの大兄貴ぃ、タープの兄貴ぃ♪ コチラの美人さん方はぁどちら様なんっスかぁあぁ♪」
「え、えとぉ、それはぁ、」
ラディッシュが身を明かそうとすると、
『?!』
突如現れた妖精ラミウムが語ろうとした彼の口を小さな両手で塞ぎ、彼女の姿が初見となるインディカが、
「のぉわぁ!?」
慄きを見せる間に、ワルイ笑顔でリンドウとヒレンにアイコンタクト。
彼女の意図を瞬間的に察したリンドウは即興で、
『アーシ達はぁアイドルしぃ♪』
身分を偽り、ポージングまで交えると、
「れぇ、レイヤーアイドルなのよ♪」
ヒレンも珍しく悪ノリ。
ちょっとした意趣返し。
彼から与えられた不快に対する。
イタズラの類であったが、それっぽいポーズまで見せる二人を信じたインディカは、
『マジッスかぁ!』
疑う様子も無く興奮気味に大きく身を乗り出し、
「するってぇとぉ最近話題になってるぅう?!!!」
騒ぐ彼を横目に、口を押さえられたままのラディッシュはゴモゴモと籠った小声で、
(何で秘密にするの、ラミィ? 村のみんなだって知ってる話だよぉ? 気付かれるのは時間の問題で……)
ドロプウォート達も同じ疑問の眼差しを向けると、彼女は「フッ」と小さく笑って小声で、
(この方がオモシロイからさねぇ♪)
(((((((…………)))))))
リンドウとヒレンまでも、興奮冷めやらぬインディカの熱視線の間隙を縫って、ラディッシュ達に、
((フフ♪))
同調の眼差し。
すっかりオモチャ扱いのインディカであったが、自業自得な部分が無きにしも非(あら)ずであり、
(((((((…………)))))))
勇者組の七人が何とも言えない複雑な笑いを浮かべていると、
『ところなんっスが、兄貴たち』
「「「「「「「?」」」」」」」
彼の興味は天世の二人以外にも。
矛先は当然の如く、
「その宙に浮いてる「妙なちんちくりん」はぁ何なんスかぁ?」
「「「「「「「!」」」」」」」
玩具扱いした相手からの、他意無い天然の「ちんちくりん呼ばわり」に、イタズラ好きの身から出た錆であるにも拘らず、
『ッ!』
瞬間逆ギレ、憤慨する妖精ラミウムと、「笑っては彼女に悪い」と思いつつ堪え切れず、肩を震わす勇者組の七人とリンドウ、ヒレン。
怒りと笑いが入り混じる混沌のさ中、勝手口の扉が、
コンコンコォン!
外からノックされると同時に、
『ラミウム様、リンドウ様、ヒレン様、こちらにいらっしゃると伺ったのですが?』
聞こえた声に、
『のぁあッ?!!!』
驚愕するインディカ。
彼の反応に、
《気付かれた♪》
笑ったり、残念がったり、十人十色の形で直感するラディッシュ達。
彼がどれほどガサツな性格の持ち主であったとしても、大司祭であるターナップの祖父の下、司祭となるべく研鑽を積んでいるのは事実であり、ましてや彼は天世の恩恵を受ける中世人である。
扉の外の村人が発した名前が何を意味するのか分からない筈も無く、からかわれていたと知ったインディカは、
「おぉ、オレっちのぉ純真をぉ……」
わなわなと震えながら後退り、
『おぉ、大兄貴たちなぁんてぇ大嫌いっスぅうぅぅぅうぅ!』
半泣きで、捨て台詞と共に勝手口から駆け出して行ってしまった。
状況が呑み込めない様子の、
「あ、あの……村長が呼んでいるのですが……?」
村人Aを置き去りに。
ネタバレに対する、想像以上の彼の反応に、
「あ、アレ……大丈夫なんしぃ?」
「…………」
仕掛けに加わったリンドウとヒレンが、不安げな半笑いを浮かべたが、
『全然大丈夫だぁ♪』
楽観の声を上げたのは、ターナップ。
自信満々に胸を張り、
「飯でも食って一晩寝りゃぁ元通りだ♪」
妖精ラミウムまでも、
「その通りさねぇ♪」
初対面の筈でありながら。
二人の「ドヤの笑顔」に勇者組の仲間たちも笑顔で大きく頷いたが、インディカが見せた反応を想うと、
「「…………」」
若干の胸の痛みを覚えずに居られない、天世の二人であった。
しかし一日経ってその後悔は「取り越し苦労」の類、「不要な杞憂」であったと、思い知る。
違った形で「新たな波乱」を呼びそうな人物が、村への帰還を果たす。
勇者組が日常的、常習的に使わせてもらっている教会内の調理場付きの一室で、少々不機嫌な、斜に構えたリンドウとヒレンを前に、
『マビィイーーーッ♪ 誰っスかぁこちらの「美人さん方」ぁあっぁあ♪』
無神経に騒がしい有頂天を上げたのは、
『オレっちぁインディカっスぅ! お美しいお姉さま方ぁ♪』
大司祭の御使いで王都エルブレスに行っていた彼であった。
二人が「百人の天世人」と未だ紹介されてもいない初対面でありながら、既に跪いて女神様扱い。
都会暮らしで多少なりとも「女子馴れ」した感を窺わせる満面の笑顔の彼に、初対面となる女子二人が受けた第一印象は、
((ウザぁ))
最悪であった。
上辺(うわべ)しか見ていないような物言いに。
冷たい眼差しで彼を見下ろす女子二人にラディッシュ達は苦笑を浮かべ、
《根は悪いヤツじゃないんだけどぉ……》
思った所で口にしなければ通じる筈も無く、否、言ったとしても彼が調子付くのは明らかで、どちらにせよ、
「「…………」」
二人の苛立ちは増すばかり。
ラディッシュ達の気苦労をよそに、当の本人は女子二人から向けられる「批判の眼差し」を意に介する様子も無く、
『かぁー♪ 「くーるびゅてぃ」ってヤツっスねぇ♪』
二人を称賛、絶賛。
満面の笑顔のまま、
「それでラディの大兄貴ぃ、タープの兄貴ぃ♪ コチラの美人さん方はぁどちら様なんっスかぁあぁ♪」
「え、えとぉ、それはぁ、」
ラディッシュが身を明かそうとすると、
『?!』
突如現れた妖精ラミウムが語ろうとした彼の口を小さな両手で塞ぎ、彼女の姿が初見となるインディカが、
「のぉわぁ!?」
慄きを見せる間に、ワルイ笑顔でリンドウとヒレンにアイコンタクト。
彼女の意図を瞬間的に察したリンドウは即興で、
『アーシ達はぁアイドルしぃ♪』
身分を偽り、ポージングまで交えると、
「れぇ、レイヤーアイドルなのよ♪」
ヒレンも珍しく悪ノリ。
ちょっとした意趣返し。
彼から与えられた不快に対する。
イタズラの類であったが、それっぽいポーズまで見せる二人を信じたインディカは、
『マジッスかぁ!』
疑う様子も無く興奮気味に大きく身を乗り出し、
「するってぇとぉ最近話題になってるぅう?!!!」
騒ぐ彼を横目に、口を押さえられたままのラディッシュはゴモゴモと籠った小声で、
(何で秘密にするの、ラミィ? 村のみんなだって知ってる話だよぉ? 気付かれるのは時間の問題で……)
ドロプウォート達も同じ疑問の眼差しを向けると、彼女は「フッ」と小さく笑って小声で、
(この方がオモシロイからさねぇ♪)
(((((((…………)))))))
リンドウとヒレンまでも、興奮冷めやらぬインディカの熱視線の間隙を縫って、ラディッシュ達に、
((フフ♪))
同調の眼差し。
すっかりオモチャ扱いのインディカであったが、自業自得な部分が無きにしも非(あら)ずであり、
(((((((…………)))))))
勇者組の七人が何とも言えない複雑な笑いを浮かべていると、
『ところなんっスが、兄貴たち』
「「「「「「「?」」」」」」」
彼の興味は天世の二人以外にも。
矛先は当然の如く、
「その宙に浮いてる「妙なちんちくりん」はぁ何なんスかぁ?」
「「「「「「「!」」」」」」」
玩具扱いした相手からの、他意無い天然の「ちんちくりん呼ばわり」に、イタズラ好きの身から出た錆であるにも拘らず、
『ッ!』
瞬間逆ギレ、憤慨する妖精ラミウムと、「笑っては彼女に悪い」と思いつつ堪え切れず、肩を震わす勇者組の七人とリンドウ、ヒレン。
怒りと笑いが入り混じる混沌のさ中、勝手口の扉が、
コンコンコォン!
外からノックされると同時に、
『ラミウム様、リンドウ様、ヒレン様、こちらにいらっしゃると伺ったのですが?』
聞こえた声に、
『のぁあッ?!!!』
驚愕するインディカ。
彼の反応に、
《気付かれた♪》
笑ったり、残念がったり、十人十色の形で直感するラディッシュ達。
彼がどれほどガサツな性格の持ち主であったとしても、大司祭であるターナップの祖父の下、司祭となるべく研鑽を積んでいるのは事実であり、ましてや彼は天世の恩恵を受ける中世人である。
扉の外の村人が発した名前が何を意味するのか分からない筈も無く、からかわれていたと知ったインディカは、
「おぉ、オレっちのぉ純真をぉ……」
わなわなと震えながら後退り、
『おぉ、大兄貴たちなぁんてぇ大嫌いっスぅうぅぅぅうぅ!』
半泣きで、捨て台詞と共に勝手口から駆け出して行ってしまった。
状況が呑み込めない様子の、
「あ、あの……村長が呼んでいるのですが……?」
村人Aを置き去りに。
ネタバレに対する、想像以上の彼の反応に、
「あ、アレ……大丈夫なんしぃ?」
「…………」
仕掛けに加わったリンドウとヒレンが、不安げな半笑いを浮かべたが、
『全然大丈夫だぁ♪』
楽観の声を上げたのは、ターナップ。
自信満々に胸を張り、
「飯でも食って一晩寝りゃぁ元通りだ♪」
妖精ラミウムまでも、
「その通りさねぇ♪」
初対面の筈でありながら。
二人の「ドヤの笑顔」に勇者組の仲間たちも笑顔で大きく頷いたが、インディカが見せた反応を想うと、
「「…………」」
若干の胸の痛みを覚えずに居られない、天世の二人であった。
しかし一日経ってその後悔は「取り越し苦労」の類、「不要な杞憂」であったと、思い知る。
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