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第九章
9-27
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話は現在に戻り――
新生魔王と対峙していた勇者組が「光の声」に救われて後、ターナップが司祭を務める村の教会の裏庭で、
『何をチンタラチンタラしてぇるのさねぇえ!』
強い口調で喝(かつ)を飛ばすのは、ラミウム。
地世で魔王となった赤紫ラミウムではなく、中世の人々の為に地世に消えた面立ちを持った、薄紫の髪と瞳の彼女。
その彼女が何故に無事でいるかはさて置き、何に対してそれほど憤っているのかと言えば、
『いつまでもヘラヘラ稽古してんじゃナイさねぇ、ラディイ!』
矛先は勇者ラディッシュ。
鍛錬に参加していると思われる他の兵士たちの困惑笑いを横目に、怒り心頭の御様子で剛腕を振りかざし、
『歯を食いしばんなァラディイ!!!』
ラディッシュの横っ面をチカラ任せにブン殴り、闘魂注入。
しかし響いた音は痛々しい「バキッ」ではなく、
ぺちっ!
豆腐の表面を指先で弾いた程度の、やわらかな音。
それもその筈、殴った彼女の拳は成人男性の指先ほどの大きさで、殴られたラディッシュも「叱られた」と言うより、むしろ御褒美顔。
本意にそぐわぬ彼の反応に、
『嬉しそうにしてんじゃナイさぁねぇえ!』
余計に憤慨するは、手乗りサイズのラミウム。
面立ちこそ彼女であったが背中には薄紫色に半透明な羽が生え、一言で表現するなら「妖精」のような姿を成し、ぷんすか怒りながら空中を浮遊していた。
一見すると非力と思える「妖精ラミウム」ではあったが、地世において三代目魔王と化した赤紫ラミウムの魔の手からラディッシュを、勇者組を救った当人である。
全員が動きを封じられた上、ラディッシュの精神が深い闇に浸食され始めた時、彼の中に在るラミウムから引き継いだ「百人の天世人のチカラ」から飛び出したのが彼女であった。
その時は、ラミウムの声を発する「単なる光の球」でしかなかったが。
強大な天法のチカラを発動して赤紫ラミウムから逃れ、中世に戻れた勇者一行は露になった彼女の姿に、
《小っさぁあ!》
サイズ感に対する総ツッコミに、
『「小さ」っ言うんじゃナイさねぇ!』
憤慨する彼女であったが、言われてみれば確かに、
「「「「「「「…………」」」」」」」
羽とサイズを差し引けば、ラミウムの生き写し。
赤紫ラミウムと遜色ない面立ちを持った、地世に堕とされた彼女の容姿であり、
《どうして手乗りサイズ?!》
当然の疑問はあったが、七人の疑問をよそに、本人は空中にフワフワ浮きながら両手を腰に当てて踏ん反り返らんばかりのドヤ顔で以て、
『アタシぁ「ラミウム」さねぇえ♪』
「「「「「「「…………」」」」」」」
笑い飛ばしに、何とも物言いたげな勇者組。
ツッコミどころが多過ぎてツッコめない複雑な表情を見せていると、根拠も言わず、有無を言わせぬ横柄さで、
『アタシがラミウムで何が不満なのさねぇ!』
その、良く言えば勇ましい姿はまさしく、
《ラミィだ》
それに加え、彼女に助けられたのも事実であり、彼女の性質を良く知るラディッシュ達は、
《これ以上に問い詰めてヘソでも曲げられたら後が余計に厄介》
真意を愛想笑いの下にひた隠し、
「「「「「「「いえいえ、べつにぃ♪」」」」」」」
お茶を濁したが、彼女はあしらいに気付く事なく、
「分かりやぁイイのさねぇ♪」
「「「「「「「…………」」」」」」」
満足げに笑う姿に、安堵したような小さい苦笑するラディッシュ達であった。
そんな彼女は村に着くなり手厚い歓迎を受けたのだが、歓迎の酒宴がたけなわを迎えた頃、酔いを感じさせる「ほんのり赤ら顔」で、
『この村ぁなってナイさねぇえ!』
手にした特製(ミニミニ)カップをテーブルに「ゴン」と置き、
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
何にそんなに怒っているのかと思いきや、
『魔王と真っ向勝負を控えるにぃ「この村の体たらく」はどう言う事さねぇえ!』
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
酔いも手伝ってか、村人たちの「緊張感を欠いた振る舞い」に堪忍袋の緒が切れた御様子で、
『ラディ! アンタ達の「地世での体たらく」もぉ何なのさねぇ!』
矛先は勇者組にも。
「行き当たりばったりの幸運にぃいつまで縋(すが)るつもりさねぇ! これから相手にするのはアレ(赤紫ラミウム)なのさねぇ! 今まで通りで済むと思ったら大間違い! アンタ達ぁ負けたら世界が滅ぶさねぇえ!」
「「「「「「「…………」」」」」」」」
苦言に対し、返せる言葉が無かった。
もし、あの時、あの場で、妖精ラミウムが「姿を現していなかったら」と思うと、場酔いの陽気な気分も一気に醒め、その日を皮切りに始まったのが、
『木剣ぉただただ振り回すんじゃなくてぇ敵の攻撃も想像して鍛錬するさねぇえ!』
妖精ラミウム改め、鬼教官ラミウム直接指導による再教育であった。
新生魔王と対峙していた勇者組が「光の声」に救われて後、ターナップが司祭を務める村の教会の裏庭で、
『何をチンタラチンタラしてぇるのさねぇえ!』
強い口調で喝(かつ)を飛ばすのは、ラミウム。
地世で魔王となった赤紫ラミウムではなく、中世の人々の為に地世に消えた面立ちを持った、薄紫の髪と瞳の彼女。
その彼女が何故に無事でいるかはさて置き、何に対してそれほど憤っているのかと言えば、
『いつまでもヘラヘラ稽古してんじゃナイさねぇ、ラディイ!』
矛先は勇者ラディッシュ。
鍛錬に参加していると思われる他の兵士たちの困惑笑いを横目に、怒り心頭の御様子で剛腕を振りかざし、
『歯を食いしばんなァラディイ!!!』
ラディッシュの横っ面をチカラ任せにブン殴り、闘魂注入。
しかし響いた音は痛々しい「バキッ」ではなく、
ぺちっ!
豆腐の表面を指先で弾いた程度の、やわらかな音。
それもその筈、殴った彼女の拳は成人男性の指先ほどの大きさで、殴られたラディッシュも「叱られた」と言うより、むしろ御褒美顔。
本意にそぐわぬ彼の反応に、
『嬉しそうにしてんじゃナイさぁねぇえ!』
余計に憤慨するは、手乗りサイズのラミウム。
面立ちこそ彼女であったが背中には薄紫色に半透明な羽が生え、一言で表現するなら「妖精」のような姿を成し、ぷんすか怒りながら空中を浮遊していた。
一見すると非力と思える「妖精ラミウム」ではあったが、地世において三代目魔王と化した赤紫ラミウムの魔の手からラディッシュを、勇者組を救った当人である。
全員が動きを封じられた上、ラディッシュの精神が深い闇に浸食され始めた時、彼の中に在るラミウムから引き継いだ「百人の天世人のチカラ」から飛び出したのが彼女であった。
その時は、ラミウムの声を発する「単なる光の球」でしかなかったが。
強大な天法のチカラを発動して赤紫ラミウムから逃れ、中世に戻れた勇者一行は露になった彼女の姿に、
《小っさぁあ!》
サイズ感に対する総ツッコミに、
『「小さ」っ言うんじゃナイさねぇ!』
憤慨する彼女であったが、言われてみれば確かに、
「「「「「「「…………」」」」」」」
羽とサイズを差し引けば、ラミウムの生き写し。
赤紫ラミウムと遜色ない面立ちを持った、地世に堕とされた彼女の容姿であり、
《どうして手乗りサイズ?!》
当然の疑問はあったが、七人の疑問をよそに、本人は空中にフワフワ浮きながら両手を腰に当てて踏ん反り返らんばかりのドヤ顔で以て、
『アタシぁ「ラミウム」さねぇえ♪』
「「「「「「「…………」」」」」」」
笑い飛ばしに、何とも物言いたげな勇者組。
ツッコミどころが多過ぎてツッコめない複雑な表情を見せていると、根拠も言わず、有無を言わせぬ横柄さで、
『アタシがラミウムで何が不満なのさねぇ!』
その、良く言えば勇ましい姿はまさしく、
《ラミィだ》
それに加え、彼女に助けられたのも事実であり、彼女の性質を良く知るラディッシュ達は、
《これ以上に問い詰めてヘソでも曲げられたら後が余計に厄介》
真意を愛想笑いの下にひた隠し、
「「「「「「「いえいえ、べつにぃ♪」」」」」」」
お茶を濁したが、彼女はあしらいに気付く事なく、
「分かりやぁイイのさねぇ♪」
「「「「「「「…………」」」」」」」
満足げに笑う姿に、安堵したような小さい苦笑するラディッシュ達であった。
そんな彼女は村に着くなり手厚い歓迎を受けたのだが、歓迎の酒宴がたけなわを迎えた頃、酔いを感じさせる「ほんのり赤ら顔」で、
『この村ぁなってナイさねぇえ!』
手にした特製(ミニミニ)カップをテーブルに「ゴン」と置き、
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
何にそんなに怒っているのかと思いきや、
『魔王と真っ向勝負を控えるにぃ「この村の体たらく」はどう言う事さねぇえ!』
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
酔いも手伝ってか、村人たちの「緊張感を欠いた振る舞い」に堪忍袋の緒が切れた御様子で、
『ラディ! アンタ達の「地世での体たらく」もぉ何なのさねぇ!』
矛先は勇者組にも。
「行き当たりばったりの幸運にぃいつまで縋(すが)るつもりさねぇ! これから相手にするのはアレ(赤紫ラミウム)なのさねぇ! 今まで通りで済むと思ったら大間違い! アンタ達ぁ負けたら世界が滅ぶさねぇえ!」
「「「「「「「…………」」」」」」」」
苦言に対し、返せる言葉が無かった。
もし、あの時、あの場で、妖精ラミウムが「姿を現していなかったら」と思うと、場酔いの陽気な気分も一気に醒め、その日を皮切りに始まったのが、
『木剣ぉただただ振り回すんじゃなくてぇ敵の攻撃も想像して鍛錬するさねぇえ!』
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