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第九章

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 勇者組の各々が、過去に直面した「地世が絡んだ事象」を想う中、
「救い難い悪党どもが持つ「負の感情」ってぁ、この世界の維持に好適(こうてき)なのさぁねぇ~キィッシッシッ♪」
 悪辣(あくらつ)の徒(と)が相手の話とは言え、人を物として捉え、人を人とも思わず、自業自得とでも言いたげな笑い声に、

『なんと無慈悲な事を致しますわのォオ!』

 ドロプウォートは堪らず声を荒げたが、
「無慈悲ぃ?」
 ラミウムは「ククッ」と嘲笑い、皮肉たっぷり、

「相変わらずお行儀のぉ良い、優等生な「問い詰め」さねぇドロプぅ♪」

『んなぁっ、何でぇすってぇぇえ!』

「ならぁ逆に問うがぁ、何の落ち度も無い一般人が犯罪者に襲われ命を落すのを、アンタは「無慈悲」とは言わないのさねぇ?」
「そっ、それは……」
「地世は「人に害ナス連中」を、有効活用してるだけさぁねぇ♪ キッシッシッ♪」

 ケタケタ笑い出すと、積もりに積もった鬱積を一気に吐き出すように、

『ラミィの顔と声でぇ下品に笑うなァアアァア!』

 ラディッシュが怒声を上げ、嫌悪の怒りで以て、

『オマエはラミィじゃナイッ!』

 向けられた強い拒絶の眼差しに、
「…………」
 彼女は下卑た笑いの中に、ほんの一瞬、微かな表情変化を滲ませ笑いを止めた。
 その僅かに見せた表情変化が意味する物が、怒りであるのか、寂しさであるのか、両面が複合された物であるかは不明であるが、仄暗い気配は強さを増し、笑いを収めながら無感情に、

{先代とアタシが天世で受けた数々の屈辱を、非情な仕打ちを、向こうの世界に絶望したアンタなら、理解してくれると思っただけどさぁねぇ}
『『『『『『『!』』』』』』』

 宝石アメジストのようであった美しき瞳が、艶やかであった薄紫の髪が、放つ地世のチカラの上昇に合わせ、ドス黒い赤紫に変色して行く。
 憎悪を増しながらラディッシュを睨むように見据え、

{思い出させてやるさぁねぇ、ラディ。アンタが味わった「絶望」ってヤツをさねぇ}

 右手をかざすと、

「うぅっ動けないぃ!?」
『『『『『『『ッ!』』』』』』』

 ドロプウォート達は即座に彼の救助、援護、そして反撃、各々の判断で動こうとしたが、
{邪魔はさせないさぁねぇえ}
 ラミウムは左手を仲間たちの方へ向け、

((((((うごけない!))))))

 話す事さえ許されないほど、動きを強く封じられ、

{そこで黙って見ているさぁねぇ。ラディが記憶を取り戻し、アタシと同じになる様(さま)をさねぇ♪}
((((((!))))))

 深い闇を感じさせる笑みを浮かべ、
{さぁ、ラディ}
 動けぬラディッシュに視線を戻すと、

{絶望を思い出す時間の始まり始まり、始まりさぁねぇ~♪}

 一瞬にして暗闇と化す視界。
 やがて、

 キィ~ンコンカァ~ンコォ~ン♪
 キィ~ンコォンカァ~ンコォ~ン♪

 何処からともなく、気の抜けたメロディーが耳に。
 記憶にない曲である筈が、

(これは!)

 懐かしさを感じてハッと両目を開けるラディッシュ。
 しかし眼を開け、放った第一声は、

「みんなは!?」

 仲間の身を先に案じる辺り何とも彼らしくはあったが、周りを見回し、

(何処……?)

 西陽が差し込むアルミサッシの大きな窓に、コンクリート打ちっ放しの無機質な長い廊下。
 目の前の大部屋には椅子とセットになった机が数多く整然と並び、窓の外や遠くからは、何人もの掛け声や、笑い声が聞こえて来る。
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