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第九章

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 ドロプウォートは内に秘めた恋慕に端を発する胸の痛みをひた隠し、

「復元されようが! 造られようが! ラディが貴方の魂を「ラミィ」と信じたならば、貴方は紛れもなくラミウムなのですわぁ!」
「…………」

 チカラ強く言ってのけた言葉に、贈られたラミウムは気圧気味の驚き顔を一瞬こそ見せたが、昔と変わらぬイタズラっぽい笑顔で「キッシッシッ♪」と笑い、
「嬉しいことを言ってくれるさねぇ、ドロプ♪」
 陰りの無い笑顔で、

『ならぁまた一緒に始めようさぁねぇ~前みたいにぃ♪』

 そこにかつての笑顔を重ねたラディッシュは「ほっ」と胸を撫で下ろし、ドロプウォートに感謝の視線を送りつつ、
「そうだね♪ それで何から始めようか♪」
 ドロプウォートの内なる葛藤に気付いた様子も無く笑顔で問うと、

『そんなの決まってるさねぇ♪』

 ラミウムはニカッと憂い無く笑って、

「天世を「ぶっ壊す」のさねぇ♪ 跡形も残さず♪」
(((((((え?!)))))))

 陰りのない笑顔から発せられた物騒に、ラディッシュ達が戸惑いを覚える中、
「何をそんなに驚いてるのさねぇ~♪」
 彼女はケラケラ笑いながら、

「相変わらずアンタ達ぁ心配性さねぇ~♪ 魔王のチカラを得たアタシに、百人の天世人ラディ、英雄のチカラを持つドロプに、七草のチカラを持つパスト達ぃ♪ これだけのメンツが揃ぇぁ敵なんざ、」
『そう言う事じゃないよラミィ!』

「んぉ?」

 堪らず声を上げるラディッシュ。
 仲間たちの想いを代弁する焦燥で以て、

『天世を跡形もなく壊すって何っ!』
「…………」

「ラミィが天世で受けた仕打ちはリンドウさん達から聞いたし、元老院のやり方も確かに目に余る物はあるよぉ!」
「あぁ、あの女どもからぁ」
「けど元老院と無関係に! その日を懸命に暮らしている天世の人達だって沢山居るんだよ!」

 再会の喜びを忘れるほど荒ぶる彼に、ラミウムはため息を吐くような、
「何を言い出すかと思えば、さねぇ~」
 半笑いの呆れで、

「相っ変わらずアンタ達はぁ「甘(あま)チャン」さぁねぇ~中世人の「祈りのチカラ」を利用して怠惰を貪る連中を守って、いったい何になるのさねぇ~」

 するとドロプウォートも、

『事は「天世だけ」では済みませんのですわぁ! 天世が乱れれば煽りは中世にも!』

 厳しい口調の苦言に対する「半笑いラミウムの答え」にラディッシュ達は、
『『『『『『『ッ!』』』』』』』
 我が耳を疑った。

 彼女は「血よりも濃い絆」で繋がっていた筈の仲間たちを前に、我が身を削ってまで中世や天世の「民の為」に尽力して来た七人を前に、

《ならぁ中世もブッ壊せばイイのさねぇ♪》

 そして屈託無く平然と、

『創造主に等しいアタシが居れぁ地世の他は「不要」さねぇ♪』
「「「「…………」」」」

 失意のあまりに言葉を失う、古参のラディッシュ、ドロプウォート、パストリス、ターナップ。
 目の前に居るのは紛れもなくラミウムでありながら、彼女の口から語られた本意に。

 直接な対面が初となる、新参のニプルウォート達でさえ「彼女の献身」は幾度となく耳にしていて、
《彼女は他の天世人とは違う》
 人知れず尊崇の念さえ抱いていた。

 その畏敬が、敬愛が、その他全ての想いが、ガラガラと音を立てて瓦解して逝く。
 人伝(ひとづて)に聴かされた噂話などではなく、本人の口から語られた言葉によって。

(クッ……)

 ラディッシュはうつむき、唇の端を噛んだ。
「何を言ってるんだよ、ラミィ……」
「んぁ?」
 悔しかった。

 幾度となく夢に見、再会を心より願った彼女に「やっと逢えた」と思いきや、奈落の底に。
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