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第九章

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 新参の仲間たちはラミウムと面識こそ無かったが、話は幾度となく耳にし、耳にした容姿を持った天世人に見せた「古参の仲間の驚きよう」に、何が起きたか即座に理解した。
 とは言え、

《どうしてここにラミウムが?!》

 疑問、喜び、戸惑い、言葉が見付けられない七人。
 彼女の最期を見届けたラディッシュ、ドロプウォート、パストリスの三人は特に。

 歩く事さえままならなかったボロボロの体で、燃え尽きる寸前の「蠟燭の炎の如き輝き」を以て戦い、地世に消えて逝ったラミウム。
 その彼女が、以前と何ら変わらぬ「イタズラっぽい笑顔」で現れたのだから、三人の驚きも当然と言える。

 幽霊にでも遭遇した驚き顔で固まるラディッシュ達を、彼女は「キッシッシッ♪」と愉快げに笑い、
「ラディの国じゃ死人にぁ足は無いらしいが、アタシぁちゃんと生えてるさぁねぇ♪」
 恥じらいなく片足を上げて「パシン」と叩いて見せつつ、

「ってかぁ、あっちの記憶の無いラディが知ってるワケ無いさねぇ♪」

 再会を喜んでいる様子でケラケラ笑い、

「記憶を奪ったアタシが言えたこっちゃナイさねぇ♪ キッシッシッ♪」

 変わらぬ笑顔に、

『ラミッ!』

 やっと口を開けたラディッシュ。
 様々な感情が入り混じった結果の呼び声に、彼女はまるで昨日まで普通に会っていたかのような気軽さで、
「んぉ?」
 首を傾げ、

「どうかしたのさねぇ、ラディ?」
『どうしたのじゃないよぉお!!!』

 飄々とした物言いに、ラディッシュの感情は爆発。

「みんなどれだけ心配したと思ってるんだよ! 元気なら元気で何で連絡の一つもくれなかったんだよ! ラミィは「死んだ」と思った人だって沢山いるんだよ!」

 堰を切ったように責め立てる言葉はラミウムより、
(…………)
 むしろドロプウォートの胸に痛かった。

 彼女の無事が本当に、心より嬉しかった反面で。

 しかしラミウムは、彼女の複雑な心中に気付いた素振りも無く、
「そうさねぇ~」
 含みを持たせた上目遣いで小さく笑い、

「ラディは「アタシが死んだ」とは、思って無かったのさねぇ」
『当たり前だよ!』

 ラディッシュは喰い気味に、
「僕の中に在るラミィから貰ったチカラがそう言って!」
『それは残念さねぇ♪』
 逆に言葉尻を食われ、

「え……?」

 仲間たちと一瞬固まり、無言で笑みを浮かべるラミウムに、恐る恐る、たどたどしく、

「な、何が、残念、なの、ラミィ……」

 すると彼女は「フッ」と小さく笑ってから、実(じつ)に平然と、当たり前のように、
「アタシは一遍(いっぺん)キッチリかっちり死んでるのさねぇ♪」

『『『『『『『!?』』』』』』』

 驚愕するラディッシュ達を前に、
「消える寸前だったアタシの魂はプエラリアに復元されてぇ、この体もアイツが造った「模造品」さねぇ♪」
(そ、そんな……)
 ラディッシュは頭と心の整理が追い付かなかった。

 目の前に居るのは、以前と寸分たがわぬ「笑顔の皮肉」を口にするラミウム。
 しかしそれは魔王プエラリアの手により造られた「まがい物」と、彼女は言う。

『でっ、でもぉ!』

 即座に思い付く、あらん限りの言葉でフォローしようとしたが、ラミウムは愉快げに「キッシッシッ」と笑いながら、

「今のアタシは、心も、体も、全てが造り物さねぇ♪」
「!」
「そんなアタシが「本物のラミウム」と言えるのさねぇ?」

 自嘲気味の、皮肉を含んだ笑いに、
「そ、それは……」
 ラディッシュは口にしかけた「薄い言葉」を飲み込んだが間髪を容れず、

『当然ですわぁ!』

 異(い)を叫んだのはドロプウォート。
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