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第八章
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ラディッシュ達が「手にした成果」に笑みを見せ合っていると、
『ゴホン』
村長が改まった様子で、あえて注目を集めるように咳払い。
思惑通りに視線が集まると、
「それでは……」
仕切り直しの言葉を短く発し、
『現状を祝して宴会と参りましょうぉーーー♪』
「「「「「「「「「「うおぉっぉぉぉぉーーーーーーーーー♪」」」」」」」」」」
村を上げての大宴会が始まった。
アイドルポジションを取り戻したリンドウが歌い、信者(熱烈ファン)たちがオタ芸で舞い踊る中、ラディッシュ達の無事な帰還に、フリンジの撃退に、サロワートの快気祝いなどなど。
特に「サロワートとの信頼関係修復」を手探りしていた村人たちにとっては、またとない好機の酒宴となった。
飲めや歌えの、お祭り騒ぎ。
そこには天世も、中世も、地世も関係なく、あちらこちらから上がる明るい笑い声や、笑って怒って気の置けないツッコミの入れ合いがあり、女子トークに花を咲かすサロワートやヒレン、ドロプウォート達の姿も。
その様を緩んだ笑顔で、
(世界も、こんな風になったら良いのになぁ~♪)
眺めるのは、ラディッシュ。
膝の上には、愛らしい寝息を立てるチィックウィードの横顔が。
やがて宴もたけなわとなった頃、
『村長さん、ちょっとイイかしら?』
サロワートが上機嫌な赤ら顔に歩み寄り、
「どぅしまいたかなぁサロワートさぁん♪」
今ならば、どんな無理、難題でも聞いてくれそうな笑顔に、彼女は奥歯に物が挟まった物言いで、
「そ、その……」
「?」
顔色を窺うように、
「む、村の外にある廃屋を……良かったらアタシに譲って、」
『モチロンですともぉ!』
言葉尻も待たずに二言返事で快諾する村長。
多少、酒に酔った勢いを感じさせつつも、
「貴方が村を、子供たちを守る為にしてくれた献身を、皆も忘れてはおりません! 確かに当初は「地世の七草」と知り、戸惑ってしまいましたがぁ」
照れ笑うと、改めて彼女を見つめ、
『ですから「村の外の廃屋」などとは言わず、是非に村の中に!』
話を聞いていた村人たちも笑顔で頷いたが、
「そ、それは嬉しい申し出だけど……」
彼女は口籠り、申し訳なさげに小さく首を振ると、
「辞退するわ♪」
「それはまた何故ですかな?」
「どう取り繕ってもアタシは、地世の人間」
「…………」
「そのアタシを敷地内に住まわせることで、そのぉ……お、お気に入りのこの村が不利益を被るようなマネ、したくないのよぉ……」
宴席の勢いに釣られてか、素直な本音を口に照れる彼女に、
(これ以上は無粋でしかないですねぇ)
村長たちは諦め笑い、
「分かりました。お好きに使って下さい」
「ありがとう村長さん♪」
サロワートは憂いの無い笑顔を見せた。
『ゴホン』
村長が改まった様子で、あえて注目を集めるように咳払い。
思惑通りに視線が集まると、
「それでは……」
仕切り直しの言葉を短く発し、
『現状を祝して宴会と参りましょうぉーーー♪』
「「「「「「「「「「うおぉっぉぉぉぉーーーーーーーーー♪」」」」」」」」」」
村を上げての大宴会が始まった。
アイドルポジションを取り戻したリンドウが歌い、信者(熱烈ファン)たちがオタ芸で舞い踊る中、ラディッシュ達の無事な帰還に、フリンジの撃退に、サロワートの快気祝いなどなど。
特に「サロワートとの信頼関係修復」を手探りしていた村人たちにとっては、またとない好機の酒宴となった。
飲めや歌えの、お祭り騒ぎ。
そこには天世も、中世も、地世も関係なく、あちらこちらから上がる明るい笑い声や、笑って怒って気の置けないツッコミの入れ合いがあり、女子トークに花を咲かすサロワートやヒレン、ドロプウォート達の姿も。
その様を緩んだ笑顔で、
(世界も、こんな風になったら良いのになぁ~♪)
眺めるのは、ラディッシュ。
膝の上には、愛らしい寝息を立てるチィックウィードの横顔が。
やがて宴もたけなわとなった頃、
『村長さん、ちょっとイイかしら?』
サロワートが上機嫌な赤ら顔に歩み寄り、
「どぅしまいたかなぁサロワートさぁん♪」
今ならば、どんな無理、難題でも聞いてくれそうな笑顔に、彼女は奥歯に物が挟まった物言いで、
「そ、その……」
「?」
顔色を窺うように、
「む、村の外にある廃屋を……良かったらアタシに譲って、」
『モチロンですともぉ!』
言葉尻も待たずに二言返事で快諾する村長。
多少、酒に酔った勢いを感じさせつつも、
「貴方が村を、子供たちを守る為にしてくれた献身を、皆も忘れてはおりません! 確かに当初は「地世の七草」と知り、戸惑ってしまいましたがぁ」
照れ笑うと、改めて彼女を見つめ、
『ですから「村の外の廃屋」などとは言わず、是非に村の中に!』
話を聞いていた村人たちも笑顔で頷いたが、
「そ、それは嬉しい申し出だけど……」
彼女は口籠り、申し訳なさげに小さく首を振ると、
「辞退するわ♪」
「それはまた何故ですかな?」
「どう取り繕ってもアタシは、地世の人間」
「…………」
「そのアタシを敷地内に住まわせることで、そのぉ……お、お気に入りのこの村が不利益を被るようなマネ、したくないのよぉ……」
宴席の勢いに釣られてか、素直な本音を口に照れる彼女に、
(これ以上は無粋でしかないですねぇ)
村長たちは諦め笑い、
「分かりました。お好きに使って下さい」
「ありがとう村長さん♪」
サロワートは憂いの無い笑顔を見せた。
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