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第八章

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 大切な仲間であるラディッシュとドロプウォートを奪われ怒りに我(われ)を失いかけた勇者組が目にした希望とは、光の柱の中でキスを交わす、二人の無事な姿。

《上書き契約》

 ラディッシュが試みたのは「勇者と誓約者」の再契約などではなく、「百人の天世人と誓約者」による前例の無い《上位契約》であった。

 二人から放たれる天世のチカラは凄まじく、かつてないほど猛り、うねり、そして逆巻く。

 原理は不明であるが、ドロプウォートが単なる中世人の誓約者ではなく、天世によって創られた人造英雄であるが故の、化学反応とも呼ぶべき現象か。

 変化は二人の容姿にもおよび、輝く二人の目は、髪は、白き輝きと言って遜色ないほどの薄紫と白金(しろがね)に。

 仲間たちが声を掛けるのを躊躇うほど神々しく佇む二人であったが、やがてドロプウォートはラディッシュから静かに離れると、予め「何をなすべきか」を話し合っていたかのように、鬼神の眼光で手にする刀を一振り、半分になった巨大ウニを更に半分に。

{ひぃいぃいぃぃいっやぁああぁあぁぁ!}

 悲鳴を上げるフリンジであったが無言の彼女は容赦なく、一切の躊躇いも無しに二振り、三振り、四振りと、徐々に速度を上げて切り刻み、斬り落された部位は白き炎を上げて燃え尽きて、

{さぁっ、再生出来ないですとぉおぉおっぉ!}

 嘆き、狼狽えを口にしたが、その間にも体は神速の速さで以て切り刻まれ、気付けばバレーボールサイズの核(コア)を残して地に転がり、

{ひぃ!}

 彼女はそれを冷淡とも思える眼差しで見下ろすと、切っ先を静かに向け、
「…………」
 今までの因縁の数々が、まるで全て無かったような無感情で、

「終わりですわ」

 最期となる一刀を突き立てようとした。
 しかし、

『『!』』

 何かを察し咄嗟に飛び退く、ドロプウォートとラディッシュ。
 飛び退いた途端、

 ゴォシャアアアァァッァーーーーーーッ!

 黒き落雷が。
 雷(いかずち)は二人が居た場所のみならず仲間たちや周囲にも降り注ぎ、一見すると無差別に落ちているようにも見えたが、その実、二人や勇者組を、コアのみの「むき出し状態」となったフリンジから遠ざけるように。

「「「「「「「!」」」」」」」

 各々が持つ技量で回避、天技や武器でいなし防ぐラディッシュ達。
 しかし真の狙いはドロプウォートであったらしく、彼女が執拗な攻めから逃れる為に大きく回避すると、その着地地点に、その着地のタイミングに、

 ドォゴゴォシャアアアァァッァーーーッ

 極大の黒き雷(いかずち)が。
『ッ!』
 回避に専念していた分、反応が遅れるドロプウォート。
 そこへ、

『させなァい!』

 瞬間移動の如く駆け付け、天法の輝きを纏いし天世の剣、天流虚空丸の一振りで受け止めいなしたのはラディッシュ。
 黒き落雷を相殺(そうさい)した神々しき光を放つ彼は、術者が誰であるのか分かっている素振りの怒りで、

『どうしてこんな事をするんですか!』

 コアだけの状態となったフリンジが転がっていた場所を睨み、

『グランさぁん!』

 立って居たのは、
「…………」
 地世の七草グラン・ディフロイスであった。
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