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第八章

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 悪事千里を走る。

 捕らえられた二人が大陸中から指名手配されていた大物窃盗犯と判明するのに、さほど時間は要しなかった。

 庇護者である勇者組の性格を反映してか、発展著しい村でありながら人と人との繋がりを大切にするこの村に、過ぎた欲を出してやって来たのが運の尽きであった。

 とは言えそれは後日の話で、今は疑念を持たれた眠り姫サロワートの話。
 容疑者が拘束され村人たちは平時の精神状態を幾分取り戻したが、いざ冷静さを取り戻すと、

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 恩人を手前勝手な決めつけで「盗人(ぬすっと)呼ばわり」してしまった事に、今更ながらバツが悪い。
 サロワートの意識があるならば即座に謝罪も出来ようが、彼女は椅子車で眠ったままである。

 例えラディッシュたち勇者組に頭を下げたとしても、それは「本質的な謝罪」と異なるのが分かるが故に、

((((((((((どうしよ……))))))))))

 思い惑った。
 すると、

『悩む必要ナイしぃー♪』

 笑顔のリンドウが高らかに声を上げ、
「そもぉそもぉこのオンナが目を覚まさないからぁ「ややこしい事」になるのしぃ♪」
 意気揚々と袖まくり。
 眠り姫に近付いて行き、不穏を察したラディッシュたち勇者組は、

『ちょちょっリンドウさぁん!』

 慌てて止めに入ろうとしたが、彼女は気にする風も無く勢いそのまま右腕を大きく振りかぶりながら、

《アーシの内なる天世のチカラを以てアーシは行使すぅ!》

 その身を白き輝きに包み、

「ダメだってリンドウさぁん!」
『イイ加減に目を覚ますしぃー♪』

 制止も聞かず高々掲げた右手を彼女の額に押し当てようとした。
 しかし次の瞬間、

『アタシの体を目覚めさせるんじゃナイわよぉパリピ女ぁ!』

 背後からの声に即座に術を止め、

『ダレぇがぁ「パリピ」しぃ!』

 振り向くリンドウは勇者組や村人たちの、
《貴方しか居ないでしょ》
 ツッコミたげな顔に気付くことなく、

『誰が言ったのしぃ!』

 憤慨顔で声の主を探し、
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
 その場に居た全員が驚いた。

 声の主は大人相手に先陣切って異を唱えて見せた、オキザリスであった。
 先程まで見せていた彼女らしい振る舞いは何処へやら。
 仁王立ちの腕組みで、リンドウを真っすぐ睨みつけていた。

 幼馴染のトロペオラムとフリージアも彼女の変貌ぶりに言葉を失う中、オキザリスは幼女らしからぬ毅然で以て、

『アタシはサロワートよ!』
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
「アタシの体には、あのゲス男(フリンジ)が狂暴な合成獣化する地法を掛けてるの! だから絶対に目覚めさせるんじゃないわよ!」

 不機嫌に横を向くツンデレ姿は、正にサロワートであった。
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