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第八章

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 リンドウの変貌ぶりに、呆気に取られるラディッシュとゴゼンであったがスグさま正気を取り戻し、ゴゼンは見慣れぬ光景に、

『ね、ねぇラディッシュちゃん……コレぁいったい何なのヨぉ?!』

 戸惑い尋ねたが、問われたラディッシュも「想定外のお祭り騒ぎ」に面を食らい、
(な、なんて……何から説明すればイイんだぁ……)
 咄嗟には考えがまとめられず、

「さ、さぁ……僕からは、何とも……?」

 苦笑するのが精一杯であった。
 すると、

『レイヤーさんの撮影会でさぁ、勇者様ぁ♪』

 聞き覚えのある、嗄(しわが)れた声が。
 思いもしなかった声に驚き振り向き、

『親方ぁ?!』

 そこに居たのは「職人ギルドの親方」であり「どうしてココに?」と思ったラディッシュの疑問は、彼の手に握られた周囲の人達が持つと同様の、手のひらサイズの「白い板」を見れば一目瞭然であった。
(アナタもデスかぁ……)
 ツッコミたい気持ちを堪えつつ、

「お、親方やみんなが手に持ってる「ソレ」って何ですか?」
「コレですかぁい?」

 親方は手にする「白い板」を目線の高さにかざし、

「コイツはぁ、ウチのギルドで新開発した人気商品の「くわめら」ってモンでさぁ♪」
「「くわめらぁ?!」」

「そうですぁ。この板には天技が発動する「陣(じん)」が刻んであって、撮りたい対象に板を向けて表面を触ると、見たままの景色を保存できるでさぁ」
「「?」」

「何なら試しに、御二人を撮ってみぁしょうかい?」
「「とる?」」

 親方は戸惑う二人に板の面を向けると、反対側の面を軽くタッチ。
 物々しい音がするでもなく、発光するでもなく、

「撮れましたで、勇者様ぁ♪」

 タッチした面を二人に見せ、

『『!』』

 驚くラディッシュとゴゼン。
 そこには何とも言えない複雑な表情をした二人が、鮮明に映し出されていて、
「こっ、これ……」
 言葉を失う天世人ゴゼン。
 驚愕する様子に、彼の素性を知らない親方は自慢げに、

『こんな便利なモンはぁ、天世にもありますまいてぇ♪』

 高らかに笑い、
「保存も数十枚できるのでさぁ♪」
 二人が映る画像を指先でスワイプ。
 横に滑らせると、滑らせるたびに他の画像が映し出され、

「しかも機能は、これだけじゃナイでさぁ♪」

 今度は懐から白紙を一枚取り出し、白い板をかざすと、

「転写も出来るんでさぁ♪」
「「てっ、転写ぁ!?」」

 再び驚く二人を尻目に画像が映る面をタップ。

「「!?」」

 映し出されていた画像が紙に美しく。
「す、凄い技術だね親方……」
 感嘆を漏らすラディッシュはこぼすように、
「まるでカメラみたいだ……」
 思わず呟くと、

「かめら?」

 親方の問い返しに、

「え?」
「へ? 勇者様ぁコレが何か知っておいででぇ?!」
「あ、いや、そのぉ……何でしょねぇ?」

 しどろもどろの苦笑いでお茶を濁し、
(僕の記憶って今更だけど……ホントにラミィが全部持って行ったのかな……?)
 妙な不安に苛まれたが、
(でもその話とは別で、勇者が一般の人を不安にさせちゃダメだよねぇ)
 即座に思い改め「記憶の話」には触れず、

「ほ、ホントに凄い技術ですねぇ、親方ぁ♪ これってギルドの誰かの「思い付き」なんですかぁ?」

 するとはぐらかされた親方の方も、
(もしかぁ勇者様はぁ、記憶に関して「触れて欲しくない」ようでぇ……)
 察して、あえて「記憶の話」に触れず、

「コイツぁフルール国の「同人誌の一場面」から着想を得てぇ作ったモンでさぁ~♪」

 自慢げにニカッと笑う、中世の技術者の笑顔に、

『マジでぇ凄くねぇ♪』

 素直な称賛を上げたのは、満面の笑顔の天世人ゴゼン。
 しかしラディッシュはその笑顔の奥に、

(ゴゼンさん……)

 表面上からでは知り得(う)ることが出来ない、複雑な心情を見た気がした。

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