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第七章

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 再び森に足を踏み入れしばし後――
 
 そこは「先の森」と違い、人の手が加えられた痕跡が要所要所に見受けられ、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 やがて抜けると村の近づきを感じさせる「次なる農地」が姿を現した。
 しかしここでもやはり、

≪作物に元気が無い≫

 近づいて見ると「先の村」と同様、手入れは中世で見かける畑以上に行き届いているものの、肝心の愛情を込めて育てられた農作物たちは、

「「「「「「「…………」」」」」」」

 中世の凶作年よりも見劣りする出来栄えであった。
(素人の僕が見ても「凄く頑張ってる」のは分かる……分かるのに……)
 労量に見合わない、お世辞にも「芳(かんば)しい」とは言い難い成果にラディッシュ達が悲し気な顔をすると、

『相変わらず「お優しい」わねぇ、アンタ達はぁ』

 サロワートは困った風な笑みを見せ、
「でも仕方が無いのよぉ。そもそもの土地が痩せてるし、「雲が太陽の代わりをしている」と言っても、本物に比べたら限度はあるのよぉ。それに……」
 表情を次第に曇らせ、

「「「「「「「?」」」」」」」

 不思議顔を見合わせる七人を前に彼女はポツリと、
「これから益々厳しくなると思うわ……地世の人達は、まだ気付いていないでしょうけど……」
 嘆くように呟いた。
 そのうつむく横顔に、

「どう言う事? 災害でも近付いてるの?」

 ラディッシュ達が首を傾げると、
「違うわ」
 彼女は「変化を見せぬ曇り空」を見上げ、

「天世とのゲートが、閉ざされてしまったからよ」
「げ、げーとぉ?」
「そうよ……天世で捨てられたゴミが落ちて来る扉」

『『『『『『『ごっ、ゴミぃいぃ?!』』』』』』』

 彼女が切望した物が「天世のゴミ」であったのは驚きであったが、同時に勇者組には「思い当たる節」が。
 天世において、地世の七草の一人が悪用した為に封鎖となった、あの扉の事を。

 その時は良かれと思って「天世でのリサイクル」を提案したラディッシュであったが、
(そんな……あの時はゴミが溜まる一方になる「天世の人の為」に、良かれと思って……)
 今になって「地世の人々の苦悩の片棒」を担いだ心持ちになり、得も言われぬ罪悪感から逃れようと、

「で、でもぉゴミくらいでぇ、地世の人達の暮らしが悪くなるなんて、そんな事が、」

 しどろもどろで「あるのか」と、問おうとすると、

「あるのよ」

 即答のサロワート。
(!?)
 彼女は内心でギクリとするラディッシュを真っ直ぐ見据え、

「地世は、天世が捨てるゴミに支えられている部分があるのよ」
「え?」
「見て分かる通り、この世界(地世)は不毛の土地よ。初代魔王が心血を注いで創り上げた世界と言っても、太陽と同様に限界はあるの。その不足分を補っていたのが、天世からのゴミだったの……それを「アノ馬鹿」が先走ったせいでぇ!」

 とある人物の顔を思い、ワナワナと怒りに打ち震えた。
 アノ馬鹿とは、誰か。
 名を口に出さずとも、

(フリンジ、ですわねぇ……)
(フリンジ、なのでぇすぅ……)
(フリンジ、さねぇ……)
(フリンジ、にありぃんしょぅな……)
(フリンジ、だなぁ……)
(フリンジ、なぉ♪)

 同じ顔を思い浮かべて苦笑する勇者組であったが、一人、
(責任の一端は僕にもある……)
 自責の念に苛まれるラディッシュ。

 苦悩の中に、地世の人々を救う手掛かりを求め、
「じゃ、じゃあ、ゴミが無いままだったら、地世の人達の暮らしはどうなっちゃうの?!」
 するとサロワートは短く一言、一聴(いっちょう)すると冷淡とも聞こえる声色で淡々と、

「どうにもならないわ」
「え?!」
「厳しくなろうとも生きて行くしか無いわ、この世界で」
「「「「「「「…………」」」」」」」
「ただ、」
「「「「「「「ただ?!」」」」」」」
「中世への依存は増す事になるわね」

(((((((!)))))))

 その結果、中世で何が起きるのか、想像するに難(かた)くなかった。
 しかし目の当たりにした地世の人々の暮らし振りを想うと、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 勇者組の心中は複雑。

 中世の世界を、天世の世界を、そして地世の世界を見て来た七人。
 ラディッシュは雲に覆われた「地世の空」を見上げ、見える筈の無い中世と天世を想いながら、三つの世界の関わりに、

「なんてイビツな世界なんだ……」

 呟きにサロワートも、
「…………」
 再び空を見上げ、

「えぇ。ホントに……」

 愛らしい少女の眉間には「言葉で表現しきれぬ不快」が、ありありと浮かんでいた。
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