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第七章

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 生家を後にラディッシュ達との合流に向かうターナップ――

 仲間たちから遅れる形で村長や鍛冶ギルドなどに挨拶をして回り、道すがら出会った村人たちとも会話を交わし、元より約束をしていた食堂に着いてテーブルを囲むと、

「遅れてすまねぇっス、ラディの兄貴、みんな。それと……」

 申し訳なさげに身を縮めながら、
「見つからなかったっス……それどころか帰って来る筈のねぇジジィが帰って来て、家探ししてるとこを見られちまって怪しまれちまってぇ……」
 企ての失敗に肩を落とした。
 しかし仲間たちはそんな彼に苦笑を見せ合い、

「仕方がないよ、タープ」

 ラディッシュは気遣いを見せ、

「むしろゴメンね」
「へ? 何がっスか?」
「大司祭さんと、ヘンな空気になっちゃったんじゃない?」
「んまぁ、それぁその、いつもの事っ、スからぁ~」

 苦笑を返したが、結果として「何の成果も得られなかった事」に変わりなく、

「「「「「「「…………」」」」」」」

 手詰まり感に、微妙な沈黙に包まれた。
 するとやおらドロプウォートから、

「少し間を置きませんこと?」
「「「「「「?」」」」」」
「王都で休んだばかりで「またか」とは、思うかも知れませんが」
「まぁ確かにそうさねぇ」

 ニプルウォートが珍しく、彼女の提案に素直な同意を示し、
「真意が何処にあるか分からない「親衛隊の眼」がある今、急いて動いて、天世に動向を知られる危険性を高めるのは「愚の骨頂」だからねぇ。しばし間をおいて、様子を窺うのもアリかも知れないさ」
「「「「「「…………」」」」」」
 ラディッシュ達は頷き合い、村での方針が一先ず定まった。
 そんな中、

『あっ、あのぉ! ちょっとヨイなのですぅ!』
「「「「「「?!」」」」」」

 パストリスが唐突に声を上げ、

『じ、時間が出来たならぁ! ぼっ、ボクはラディとの「デートを要求する」のでぇす!』
「「「「「「・・・・・・え?」」」」」」

 あまりに突拍子もない宣言に、御指名を受けたラディッシュを始めとする仲間たちが驚くと、彼女は羞恥で赤く染まった顔して懸命に、

「だっ、だってぇだっってぇ! 最近ドロプばかり優遇されてる気がしてズルイのでぇす!」
『えぇっ?!』

 慄くラディッシュ。

「いっ、いやぁ、ぼっ、僕はそんなつもりはぁ!」

 慌てて弁明しようとすると、ニプルウォートとカドウィードが悪い顔してニヤリと笑い合い、

(これから暇を持て余しそうだったけどさぁ♪)
(良き「暇つぶしのネタ」が早々見つかったでぇありぃんすぅなぁ♪)

 目線で悪巧みを成立。
 すかさず、

「言われてみれば確かに「パストの言う通り」さぁ~♪」
「釣った魚にぃ「餌を与えぬ」はぁ如何なものにぃありぃんしょうなぁ~♪」

 皮肉を多分に含んだ物言いに、何度も深く頷くパストリスに、

「えぇ?! つ、釣った魚って、そんな、僕なんかぁ、」

 ラディッシュがたじろぎ、しどろもどろになっていると、

『今回ばかりは、そう思われても致し方ありませんですわねぇ』

 ドロプウォートのため息交じりの、ボヤキ声が。
 想定外の方角からの支援攻撃に、

「へ?!」

 思わずギョッと振り返ると、彼女は苦々しい顔して、
「私の両親がしでかした「策略の結果」を鑑みれば、仲間内に遺恨を残さぬ為にも、ラディにも腹を括ってもらいませんと、ですわ」
「そっ……!」
(そんなぁ……「彼女いない歴」と「年齢」が一緒の僕なんかが、こんなに可愛い女子と、同人誌で描いた「デート」なんてしてぇそれは許される行為なのぉ?!)
 彼らしい慄きを隠せずに居たが、彼の意見は尋ねられる事も無く、

「お二人は、それで良いですわの?」

 意外に思ったドロプウォートがニプルウォートとカドウィードに問うと、

「ウチ達は「後で」でイイさぁ♪」
「初回はぁ、パストにぃ譲るでぇありぃんす♪」

 二人は自分達も確約を取り付けた上で、余裕ぶって見せ、
『二人ともぉありがとぉなのでぇす♪』
 素直に感謝するパストリス。

 しかし、
「…………」
 ドロプウォートは見透かしていた。
 二人が「先を譲った」のは、善意からだけではない事を。
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