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第七章
7-12
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チョウカイの「首の一振り」で、どう転ぶか分からない中世の明日。
実質的に彼女と決別した形になっているラディッシュは恐る恐る、
「あ、あの……スパイダさん……」
「?」
「中世に対する、何かその……だ、大丈夫、なんですよね?」
同じ不安を抱いていた仲間たちも答えを待つと、
「…………」
スパイダマグはしばし黙考してから、
「今は、大丈夫でしょう」
『今はぁ?!』
微妙な返答に、不安顔を見せ合うラディッシュ達。
すると彼は淡々とした口調で、
「今の天世は「チョウカイ様の独裁状態」と思われるかも知れませんが、実際は少し違うのです」
「「「「「「「?」」」」」」」
「天世には、チョウカイ様が起こした反旗を「快く思わない勢力」も少なからず居るのです」
「それは「元老院の一部に」ですか?」
「違います」
「「「「「「「???」」」」」」」
「百人の天世人様に、です」
「「「「「「「!?」」」」」」」
「地位は約束してやるが、口は出すな。ただし何か起きたら「責任は取れ」では、軋轢(あつれき)も当然生じるでしょう」
「「「「「「「…………」」」」」」」
「責任は負わせながら「自分たちは高みの見物」を決め込む元老院を、百人の天世人様方はもとより快く思っていなかったのですが、今回の身勝手な振る舞いで不満が噴出。一部勢力とは、内戦がいつ起きてもおかしくない緊張状態にあるのです」
「「「「「「「…………」」」」」」」
「それ故に、彼らに「協力しかねない」と判断された我らは飛ばされて……」
「なるほど、ですわ」
ドロプウォートは得心が行った様子で頷きながら、
「つまり今は「中世にかかずらっている余裕が無い」と、言う訳なのですわね?」
「はい。その様なところです」
スパイダマグと部下たちは静かに頷いた。
そんな中、
『なっ、なんなんスかぁその「ヤバげ」な会話はぁあぁ!?』
うろたえた声を上げる人物が。
それは真っ青な顔して、両手で両耳を塞ぐインディカ。
天世に仕える「僧侶見習いの身」である彼は、初めて耳にした「世界の裏側」に慄きを隠せず、
「なぁっ、何かオレっちぁ、聞いちゃいけねぇ事を聞かされた気がするッスけどぉおぉ?!!!」
彼の反応は、奇異な物では決してない。
天世の恩恵で暮らしが成り立っている中世人にとって、天世人を神と等しく崇める中世人にとって、むしろ正常な反応であり、知るだけで「永久牢獄行き」に等しき禁忌を耳にし打ち震えるインディカの背に、
((((((((((♪))))))))))
悪巧みを思い付く、勇者組と親衛隊、そして大司祭。
彼のヤンチャに手を焼く、別名「被害者の会」。
その中の一人であるターナップは異様なほどの満面の笑顔で以て、震えて縮こまる肩にポンと手を置き、
『これでオメェも「コッチ側」だな♪』
笑い声に、
「ひぃ!」
背筋をゾッと凍らせるインディカ。
『なんなんっスかぁソレぁあぁ!』
真っ青な顔して振り返り、
「オレっちぃその笑顔がぁめっちゃぁ怖ぇえぇっスけどぉ!」
「小っせぇ事を気にすんなってぇ♪」
ターナップはケラケラと笑い、
「ちょーと「天世に目を付けられる」くれぇの話じゃねぇか♪」
「くれぇの話じゃねっスよぉ! 冗談じゃねぇっスよ! オレっちぁまだ「坊さん」にも成り切れてもねぇ半人前なのにぃ、もぅ天世に目ぇ付けられるってぇぁ!」
将来を閉ざされた思いからショックを隠し切れず頭を抱えると、
「なぁ~に、それこそ「箔が付く」ってぇモンじゃねぇかぁ」
したり声に、
(箔ぅ?!)
過剰反応するインディカ。
半泣きが急に泣き止み、
「まっ、マジ、っスかぁ?!」
窺う顔に、相手をするのが少々面倒臭くなり始めていたターナップはここぞとばかり、
「おぅよぉ!」
この機を逃すまいと、
「半人前の身分で「天世に一目置かれる」なぁんてなぁ俺でも経験してねぇぞ!」
『マジっスかぁあぁ!』
高揚した顔するインディカは「おだて」と気付かず、苦笑で見つめるラディッシュ達にさえ気付くこと無く興奮気味に、
「言われてみりゃぁ確かにぃそっスねぇ! なんか、こう「荒くれ者」っぽくてぇカッケェっスねぇ!」
「お、おぉ、だなぁ♪」
「って事ぁオレっちも、対抗出来るだけのチカラを付けねぇとダメっスよねぇ!」
「ん?」
「こうしちゃ居られねぇ! 明日からぁもっと早起きしてぇ、もっともっと修行しねぇっとぉ!」
「…………」
けしかけた策士ターナップを置き去り、彼は何かに思い至り、
『なのでぇオレっちぁもう寝るっス! また明日っスぅ!』
鼻息荒くターナップの家から飛び出し教会へ駆け去って行った。
あっと言う間に夜闇に消えた背を、
「…………」
しばし見つめるターナップであったが、悪い顔してニヤリ。
「ちょろぇぜぇ♪」
「「「「「「…………」」」」」」
仲間の悪知恵に、困惑笑いを浮かべるラディッシュ達。
いとも容易く操られたインディカを、
≪単純だなぁ~≫
そう思う一方で、ある特定の「純粋な部分に関してだけ」は羨ましく思う勇者組であった。
実質的に彼女と決別した形になっているラディッシュは恐る恐る、
「あ、あの……スパイダさん……」
「?」
「中世に対する、何かその……だ、大丈夫、なんですよね?」
同じ不安を抱いていた仲間たちも答えを待つと、
「…………」
スパイダマグはしばし黙考してから、
「今は、大丈夫でしょう」
『今はぁ?!』
微妙な返答に、不安顔を見せ合うラディッシュ達。
すると彼は淡々とした口調で、
「今の天世は「チョウカイ様の独裁状態」と思われるかも知れませんが、実際は少し違うのです」
「「「「「「「?」」」」」」」
「天世には、チョウカイ様が起こした反旗を「快く思わない勢力」も少なからず居るのです」
「それは「元老院の一部に」ですか?」
「違います」
「「「「「「「???」」」」」」」
「百人の天世人様に、です」
「「「「「「「!?」」」」」」」
「地位は約束してやるが、口は出すな。ただし何か起きたら「責任は取れ」では、軋轢(あつれき)も当然生じるでしょう」
「「「「「「「…………」」」」」」」
「責任は負わせながら「自分たちは高みの見物」を決め込む元老院を、百人の天世人様方はもとより快く思っていなかったのですが、今回の身勝手な振る舞いで不満が噴出。一部勢力とは、内戦がいつ起きてもおかしくない緊張状態にあるのです」
「「「「「「「…………」」」」」」」
「それ故に、彼らに「協力しかねない」と判断された我らは飛ばされて……」
「なるほど、ですわ」
ドロプウォートは得心が行った様子で頷きながら、
「つまり今は「中世にかかずらっている余裕が無い」と、言う訳なのですわね?」
「はい。その様なところです」
スパイダマグと部下たちは静かに頷いた。
そんな中、
『なっ、なんなんスかぁその「ヤバげ」な会話はぁあぁ!?』
うろたえた声を上げる人物が。
それは真っ青な顔して、両手で両耳を塞ぐインディカ。
天世に仕える「僧侶見習いの身」である彼は、初めて耳にした「世界の裏側」に慄きを隠せず、
「なぁっ、何かオレっちぁ、聞いちゃいけねぇ事を聞かされた気がするッスけどぉおぉ?!!!」
彼の反応は、奇異な物では決してない。
天世の恩恵で暮らしが成り立っている中世人にとって、天世人を神と等しく崇める中世人にとって、むしろ正常な反応であり、知るだけで「永久牢獄行き」に等しき禁忌を耳にし打ち震えるインディカの背に、
((((((((((♪))))))))))
悪巧みを思い付く、勇者組と親衛隊、そして大司祭。
彼のヤンチャに手を焼く、別名「被害者の会」。
その中の一人であるターナップは異様なほどの満面の笑顔で以て、震えて縮こまる肩にポンと手を置き、
『これでオメェも「コッチ側」だな♪』
笑い声に、
「ひぃ!」
背筋をゾッと凍らせるインディカ。
『なんなんっスかぁソレぁあぁ!』
真っ青な顔して振り返り、
「オレっちぃその笑顔がぁめっちゃぁ怖ぇえぇっスけどぉ!」
「小っせぇ事を気にすんなってぇ♪」
ターナップはケラケラと笑い、
「ちょーと「天世に目を付けられる」くれぇの話じゃねぇか♪」
「くれぇの話じゃねっスよぉ! 冗談じゃねぇっスよ! オレっちぁまだ「坊さん」にも成り切れてもねぇ半人前なのにぃ、もぅ天世に目ぇ付けられるってぇぁ!」
将来を閉ざされた思いからショックを隠し切れず頭を抱えると、
「なぁ~に、それこそ「箔が付く」ってぇモンじゃねぇかぁ」
したり声に、
(箔ぅ?!)
過剰反応するインディカ。
半泣きが急に泣き止み、
「まっ、マジ、っスかぁ?!」
窺う顔に、相手をするのが少々面倒臭くなり始めていたターナップはここぞとばかり、
「おぅよぉ!」
この機を逃すまいと、
「半人前の身分で「天世に一目置かれる」なぁんてなぁ俺でも経験してねぇぞ!」
『マジっスかぁあぁ!』
高揚した顔するインディカは「おだて」と気付かず、苦笑で見つめるラディッシュ達にさえ気付くこと無く興奮気味に、
「言われてみりゃぁ確かにぃそっスねぇ! なんか、こう「荒くれ者」っぽくてぇカッケェっスねぇ!」
「お、おぉ、だなぁ♪」
「って事ぁオレっちも、対抗出来るだけのチカラを付けねぇとダメっスよねぇ!」
「ん?」
「こうしちゃ居られねぇ! 明日からぁもっと早起きしてぇ、もっともっと修行しねぇっとぉ!」
「…………」
けしかけた策士ターナップを置き去り、彼は何かに思い至り、
『なのでぇオレっちぁもう寝るっス! また明日っスぅ!』
鼻息荒くターナップの家から飛び出し教会へ駆け去って行った。
あっと言う間に夜闇に消えた背を、
「…………」
しばし見つめるターナップであったが、悪い顔してニヤリ。
「ちょろぇぜぇ♪」
「「「「「「…………」」」」」」
仲間の悪知恵に、困惑笑いを浮かべるラディッシュ達。
いとも容易く操られたインディカを、
≪単純だなぁ~≫
そう思う一方で、ある特定の「純粋な部分に関してだけ」は羨ましく思う勇者組であった。
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