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第六章
6-101
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とある町に辿り着くラディッシュ達――
そこはディモルファンサが治める領地に隣接する町であり、領地の境までは、眼と鼻の先の距離。
しかしディモルファンサ領を目前にラディッシュ達は、
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
新たな問題に直面していた。
それは検問所。
領内への出入りが、過剰なまでの警備で固められていたのである。
見るからに鍛え上げられた体躯を持った屈強な兵士たちが立ちはだかる、その検閲の厳しさたるや、まるで有事の軍事国レベル。
しかも領地は頑強な鉄柵でグルリと一周覆われていて、猫の子一匹通れない様相。
そんな検問所に、身元不確かな一行が入ろうモノなら不審者として即座の捕縛は免れず、ラディッシュ達は目当ての領地を前にしながら、
「「「「「「「「どうしようぉ」」」」」」」」
眉をひそめ合い、止むを得ず、宿を取っての作戦会議。
目の当たりにした過剰警備を思い返すイリスは、
「あれぁ、ハッタリが通用しそうな空気じゃ無かったさぁねぇ~」
ため息に、
「同感ですわぁ~まさかアレほどとは思いませんのでしたわぁ~」
ドロプウォートも嘆き、
「「「「「…………」」」」」
仲間たちも「どうしたものか」と困惑を隠せずに居ると、
『それなら正攻法で行こうよ♪』
「「「「「「「?」」」」」」」
声を上げたのは、再びのラディッシュ。
意味を求めて集まる視線を前に、
「正々堂々と正面から♪」
珍しく自信満々。
その陰りも見せず主張する姿に、
(((((((フラグ?!)))))))
仲間たちは一抹の不安顔を見合わせつつ一夜が明けた。
明けた一夜のしばし後にラディッシュ達が居たのは――
玉座の如き椅子を配した上座に座し、体躯に恵まれているとは言い難いものの、容姿端麗、眉目秀麗、美少年と呼ぶに相応しき人物の前。
跪くラディッシュ達を前に座する彼は不敵な笑みを小さく一つ、浮かべた後に立ち上り、
『ようこそ我が領地へ御出で下さった勇者一行よぉ!』
過剰とも言える歌劇的、歓迎の意を表した。
しかしその眼の奥には悪党が持つ、独特の病んだヒカリが。
彼こそがイリスの幼馴染みであり、「親殺し」と世間で囁かれ、領民を悪政を以て虐げる、悪名高きディモルファンサである。
ラディッシュ達は彼の下に辿り着いていた。
種明かしをすればカルニヴァ王から直々に賜った通行手形であり、それを見せられた検問所の屈強兵士たちは滑稽にも右往左往、上を下への大騒ぎ。
まさか名高き勇者一行が「密入国する程の御忍びで」と疑いつつも、手渡された通行手形に刻印された天技はカルニヴァ王家を示す物に間違いなく、ラディッシュ達は密入国者集団でありながら、貴賓扱いで謁見の間へ通されたのであった。
跪いたままの勇者一行を前に、
(次期国王と名高き俺の下に「最初の挨拶に訪れる」とは勇者も中々したたか。しかし賢明な判断だなぁ♪)
ほくそ笑み、自画自賛するディモルファンサであったが、
(?)
ふと、
「時に勇者殿」
「何でありましょう?」
目線を伏したままの彼に、
「御仲間が少ないようだが?」
ラディッシュの背後に、訝し気な視線を送った。
彼の指摘した通り、ラディッシュの背後にはドロプウォート、ニプルウォート、そしてフードを目深に被った誰かが一人。
しかしラディッシュは平静に、
「次期国王と名高きディモルファンサ様との謁見に、肩書のない者を連れて参る訳にはいきませんので」
「!」
(俺との謁見に庶民階級を連れては来れぬとぉな♪)
勝手に解釈した彼は更に気を良くし、素顔も晒さぬ一人が居るにも関わらず「世話係」程度に思い歯牙にもかけず、
「ハッハッハッ♪ 勇者殿も中々にして持ち上げ上手ですなぁ♪」
下卑た高笑いをした上で、
「私が国王となる戴冠式には勇者殿にも、是非とも御越し頂きたいですなぁ♪」
黙って居れは眉目秀麗、口を開けば醜男(ぶおとこ)の思い上がりに、
『いい加減にしぃなやァ!!!』
激昂して立ち上がったのは、ラディッシュの背後に控えていたローブの誰か。
「「「「「「!?」」」」」」
驚くディモルファンサや警備の騎士たちを前に、その人物はローブをバサッと脱ぎ去り、
「アンタの悪政で領民がどれほど苦しんでると思ってるさねぇ!」
堂々たるイリス。
彼女は敵地のど真ん中にありながら、
「ここに来るまでアタシぁ散々見て来たさねぇ!」
すると彼は幼馴染みの苦言を前に、
『だっ、誰だキサマはぁ!』
「なっ?!」
「勇者殿の従者とて、俺に対する無礼は容赦せぬぞぉ!」
(アタシがぁ分からないだとぉ?!)
面食らうイリス。
幼少を共に過ごした間柄にありながらの、不埒者扱いに、
「アンタってヤツぁ~」
呆れた様子で頭を抱え、
「性格だけじゃなく、記憶まで腐っちまったのさねぇ~?」
彼を斜に見据えると、
「なぁ『ディーサ』ぁ?」
『ばッ!?』
激しく動揺するディモルファンサ。
(馬鹿なぁ! アイツしか知らない筈の「俺の渾名(あだな)」をどうしてぇ!?)
顔から血の気が一気に引く彼に、イリスは「キッシッシッ」と笑いながら、
「そう言やぁアンタ、この呼ばれ方が「大嫌いだった」さぁねぇ、オンナみたいだから呼ぶなってさぁ♪」
「!!!」
彼は真っ青な顔に多量の脂汗を流しながら、
『でっ、出合え出合えぇ者ども出合わぬかぁぇえぇ!!!』
錯乱気味に配下の騎士、兵士たちを呼び寄せ、
『勇者を偽る密入国者の不届き者だぁあぁ! 全員、斬って捨てるのだぁあ!!!』
狂気染みた表情で両手を振るって処刑を命じた。
しかし、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
躊躇いを見せ合う兵士たち。
何故なら「勇者一行の来訪」は、既に屋敷内に居る全ての家臣の知る所であり、ラディッシュ達が所持していた「カルニヴァ王の手形」の話も。
とは言え、
『なぁ、何をしているかぁ!!!』
暴君と言えど「主君である」に変わりなく、主の命に従わぬは「反逆の意思アリ」と取られ兼ねず、罰は親類縁者に及ぶ可能性もあり、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
兵士たちは息を呑んで腹を括ると、
「「「「「「「「「「ぅおぉおっぉおおぉぉーーーーーーっ!」」」」」」」」」」
勇者一行に襲い掛かった。
「やっぱりぃこうなっちゃうんだなぁ~」
ラディッシュがドロプウォートたちと呆れ笑いを浮かべていた頃、ディモルファンサの屋敷の外では、警備の騎士や兵士たちが中から聞こえ始めた騒ぎに「なんだなんだぁ?」と不思議顔を見合わせ、
「「「「「「歌……」」」」」」
何かに気付くと同時に、卒倒するよう次々眠りに落ちた。
そこへ、
『良き夢をみぃんしぁ♪』
しゃなりしゃなりと姿を現すカドウィード。
扇子で口元を隠しながら騒ぎの館を見据え、
「げにぃ「穏やかに」とはぁ、なりんせぇんなぁ~♪」
妖艶な笑みを浮かべると、
「毎度の事じゃねぇかぁ♪」
半笑いのターナップもやって来て、
「でぇすでぇすねぇ♪」
「ですなぉ♪」
パストリスとチィックウィードも暗がりから姿を現した。
そこはディモルファンサが治める領地に隣接する町であり、領地の境までは、眼と鼻の先の距離。
しかしディモルファンサ領を目前にラディッシュ達は、
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
新たな問題に直面していた。
それは検問所。
領内への出入りが、過剰なまでの警備で固められていたのである。
見るからに鍛え上げられた体躯を持った屈強な兵士たちが立ちはだかる、その検閲の厳しさたるや、まるで有事の軍事国レベル。
しかも領地は頑強な鉄柵でグルリと一周覆われていて、猫の子一匹通れない様相。
そんな検問所に、身元不確かな一行が入ろうモノなら不審者として即座の捕縛は免れず、ラディッシュ達は目当ての領地を前にしながら、
「「「「「「「「どうしようぉ」」」」」」」」
眉をひそめ合い、止むを得ず、宿を取っての作戦会議。
目の当たりにした過剰警備を思い返すイリスは、
「あれぁ、ハッタリが通用しそうな空気じゃ無かったさぁねぇ~」
ため息に、
「同感ですわぁ~まさかアレほどとは思いませんのでしたわぁ~」
ドロプウォートも嘆き、
「「「「「…………」」」」」
仲間たちも「どうしたものか」と困惑を隠せずに居ると、
『それなら正攻法で行こうよ♪』
「「「「「「「?」」」」」」」
声を上げたのは、再びのラディッシュ。
意味を求めて集まる視線を前に、
「正々堂々と正面から♪」
珍しく自信満々。
その陰りも見せず主張する姿に、
(((((((フラグ?!)))))))
仲間たちは一抹の不安顔を見合わせつつ一夜が明けた。
明けた一夜のしばし後にラディッシュ達が居たのは――
玉座の如き椅子を配した上座に座し、体躯に恵まれているとは言い難いものの、容姿端麗、眉目秀麗、美少年と呼ぶに相応しき人物の前。
跪くラディッシュ達を前に座する彼は不敵な笑みを小さく一つ、浮かべた後に立ち上り、
『ようこそ我が領地へ御出で下さった勇者一行よぉ!』
過剰とも言える歌劇的、歓迎の意を表した。
しかしその眼の奥には悪党が持つ、独特の病んだヒカリが。
彼こそがイリスの幼馴染みであり、「親殺し」と世間で囁かれ、領民を悪政を以て虐げる、悪名高きディモルファンサである。
ラディッシュ達は彼の下に辿り着いていた。
種明かしをすればカルニヴァ王から直々に賜った通行手形であり、それを見せられた検問所の屈強兵士たちは滑稽にも右往左往、上を下への大騒ぎ。
まさか名高き勇者一行が「密入国する程の御忍びで」と疑いつつも、手渡された通行手形に刻印された天技はカルニヴァ王家を示す物に間違いなく、ラディッシュ達は密入国者集団でありながら、貴賓扱いで謁見の間へ通されたのであった。
跪いたままの勇者一行を前に、
(次期国王と名高き俺の下に「最初の挨拶に訪れる」とは勇者も中々したたか。しかし賢明な判断だなぁ♪)
ほくそ笑み、自画自賛するディモルファンサであったが、
(?)
ふと、
「時に勇者殿」
「何でありましょう?」
目線を伏したままの彼に、
「御仲間が少ないようだが?」
ラディッシュの背後に、訝し気な視線を送った。
彼の指摘した通り、ラディッシュの背後にはドロプウォート、ニプルウォート、そしてフードを目深に被った誰かが一人。
しかしラディッシュは平静に、
「次期国王と名高きディモルファンサ様との謁見に、肩書のない者を連れて参る訳にはいきませんので」
「!」
(俺との謁見に庶民階級を連れては来れぬとぉな♪)
勝手に解釈した彼は更に気を良くし、素顔も晒さぬ一人が居るにも関わらず「世話係」程度に思い歯牙にもかけず、
「ハッハッハッ♪ 勇者殿も中々にして持ち上げ上手ですなぁ♪」
下卑た高笑いをした上で、
「私が国王となる戴冠式には勇者殿にも、是非とも御越し頂きたいですなぁ♪」
黙って居れは眉目秀麗、口を開けば醜男(ぶおとこ)の思い上がりに、
『いい加減にしぃなやァ!!!』
激昂して立ち上がったのは、ラディッシュの背後に控えていたローブの誰か。
「「「「「「!?」」」」」」
驚くディモルファンサや警備の騎士たちを前に、その人物はローブをバサッと脱ぎ去り、
「アンタの悪政で領民がどれほど苦しんでると思ってるさねぇ!」
堂々たるイリス。
彼女は敵地のど真ん中にありながら、
「ここに来るまでアタシぁ散々見て来たさねぇ!」
すると彼は幼馴染みの苦言を前に、
『だっ、誰だキサマはぁ!』
「なっ?!」
「勇者殿の従者とて、俺に対する無礼は容赦せぬぞぉ!」
(アタシがぁ分からないだとぉ?!)
面食らうイリス。
幼少を共に過ごした間柄にありながらの、不埒者扱いに、
「アンタってヤツぁ~」
呆れた様子で頭を抱え、
「性格だけじゃなく、記憶まで腐っちまったのさねぇ~?」
彼を斜に見据えると、
「なぁ『ディーサ』ぁ?」
『ばッ!?』
激しく動揺するディモルファンサ。
(馬鹿なぁ! アイツしか知らない筈の「俺の渾名(あだな)」をどうしてぇ!?)
顔から血の気が一気に引く彼に、イリスは「キッシッシッ」と笑いながら、
「そう言やぁアンタ、この呼ばれ方が「大嫌いだった」さぁねぇ、オンナみたいだから呼ぶなってさぁ♪」
「!!!」
彼は真っ青な顔に多量の脂汗を流しながら、
『でっ、出合え出合えぇ者ども出合わぬかぁぇえぇ!!!』
錯乱気味に配下の騎士、兵士たちを呼び寄せ、
『勇者を偽る密入国者の不届き者だぁあぁ! 全員、斬って捨てるのだぁあ!!!』
狂気染みた表情で両手を振るって処刑を命じた。
しかし、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
躊躇いを見せ合う兵士たち。
何故なら「勇者一行の来訪」は、既に屋敷内に居る全ての家臣の知る所であり、ラディッシュ達が所持していた「カルニヴァ王の手形」の話も。
とは言え、
『なぁ、何をしているかぁ!!!』
暴君と言えど「主君である」に変わりなく、主の命に従わぬは「反逆の意思アリ」と取られ兼ねず、罰は親類縁者に及ぶ可能性もあり、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
兵士たちは息を呑んで腹を括ると、
「「「「「「「「「「ぅおぉおっぉおおぉぉーーーーーーっ!」」」」」」」」」」
勇者一行に襲い掛かった。
「やっぱりぃこうなっちゃうんだなぁ~」
ラディッシュがドロプウォートたちと呆れ笑いを浮かべていた頃、ディモルファンサの屋敷の外では、警備の騎士や兵士たちが中から聞こえ始めた騒ぎに「なんだなんだぁ?」と不思議顔を見合わせ、
「「「「「「歌……」」」」」」
何かに気付くと同時に、卒倒するよう次々眠りに落ちた。
そこへ、
『良き夢をみぃんしぁ♪』
しゃなりしゃなりと姿を現すカドウィード。
扇子で口元を隠しながら騒ぎの館を見据え、
「げにぃ「穏やかに」とはぁ、なりんせぇんなぁ~♪」
妖艶な笑みを浮かべると、
「毎度の事じゃねぇかぁ♪」
半笑いのターナップもやって来て、
「でぇすでぇすねぇ♪」
「ですなぉ♪」
パストリスとチィックウィードも暗がりから姿を現した。
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