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第六章

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 馬車で街道を進むラディッシュ達――

 無事に関所を通過したのであるが、その車内は、
『『『『『『『アハハハハハハハハハ♪』』』』』』』
 明るい笑いに包まれていた。

 その笑い声に、
「みんなぁ笑い過ぎだよぉ」
 バツが悪そうに憤慨するのは、御者台で手綱を引くラディッシュ。
 彼の「無自覚褒め殺し」が関所を通過した後で指摘され、そこで初めて兵士たちに追い打ちを掛けていたのを知り、

『のぉっ?!』

 そんな彼の天然振りがツボにはまった仲間たちが、思わず笑ってしまったのであった。
「悪い悪い♪ 悪気は無いさぁねぇ~♪」
 イリスは笑いが収まらない様子の涙目で、
「アンタが懸命に助け舟を出してやればやるほどぉ、アイツらの肩身がどんどん狭くなるのがぁついぃ、ププっ♪」
 ドロプウォート達も笑いが収められない様子でクスクス笑い合い、ラディッシュは自身の迂闊さを自省しつつ、

「で、でもさ、パラジット国って実際の話で、今もそんなに嫌われてる国なの? 重ねた悪行の罰は受けたんだし、」
『嫌われもしんしょぅ』
「え?」

 妖艶な笑みの中に、微かな悲しみを滲ませるカドウィード。
 集まる仲間たちの視線を前に、

「共和国とは名ばかりぃ。先王アルブルが命じて王族を処断した日までぇ「犯した所業」の数々を口にするのも悍(おぞ)ましきぃ、高位の国としてぇやりたい放題と耳にしてぇおりんす。故に天世の仕打ちも、歓迎を以て迎える者が数多くぅ」

 他者が受けた罰を「喜ぶべきではない」と道徳的には理解しつつ、そのまま野放しにされていたらと思うと、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 同情の言葉は出て来なかった。
 そんな中、

(天世が下した罰って……どれ程の被害を産んだんだろ……)

 素朴な疑問が湧くラディッシュ。
 人伝(ひとづて)の言葉で「町が一つ消し飛ばされた」とは聞いているが、人の噂には尾ヒレが加わり、誇張され易い物。
 自分の眼で確かめたい思いが首をもたげ始めると、現場を直接見たイリスが彼の心中を察し、

「気になるさねぇラディ?」
「!」

 見透かされたと知る彼は、包み隠さず、
「他の町や村も……同じ目に遭う可能性があるから……」
 その口振りには、天世に対する不信感が見て取れた。
 しかし彼が抱いた想いは仲間たちも同様で、先んじてドロプウォートが、
「イリィ、貴方は直接見たのですわよね?」
「あぁ。見て来たさねぇ♪」
「「「「「「「…………」」」」」」」
 不敵な笑みに仲間たちが息を呑むと、イリスは怒り、嫌悪、悲しみ、様々な感情が入り混じった複雑な表情で顔を曇らせ、

「あれは中世人を人として見ていると思えやしない、羽虫を踏み潰す所業さぁねぇ」
「「「「「「「…………」」」」」」」

 黙する勇者たち。
 そして沈黙の後、パラジット国における一行の目的地は四国同盟の手により置かれた「仮設の中央政府」から変更となった。
 当然の意見の一致と言うべきか、彼ら、彼女たちが「新たに定めた行き先」は言わずもがな、

≪正式名称パラジット連邦共和国の王都パラジクスがあった場所≫

 王城もろとも跡形も無く消し飛ばされた、連邦共和国を名乗りながらも、王政を強いた傲慢の地。

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