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第六章

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 ラディッシュ達が国境の関所に近づきつつあった頃――
 
 甲冑に身を包んだ、高身長で体躯のがっしりとした一人の女性が跪き、視線を伏せ、

『ご報告いたします陛下!』

 彼女の前に居たのは、ベッドの様な玉座にしな垂れかかる様に横たえ、素肌が透けて見えそうな衣に身を包み、妖艶な笑みを浮かべた、フルール国現王。
 ここは謁見の間であり、玉座の彼女は「妖艶な笑み」の中にも女帝と呼ばれるに相応しい、威厳を感じさせる物言いで、

「構わぬぇ」

 報告に上がった女騎士に、続けて語るのを許し、

「ハッ! では申し上げます! 勇者ラディッシュ殿率いる一行が、国境の関所に近づきつつあると一報が、監視班より届きましてございます!」

 すると女王フルールの傍らに立つ、黒髪ストレートが印象的な側近女性リブロンが、毅然とした表情と立ち振る舞いで、

「御苦労様でした。下がりなさい」
「ハッ! 失礼致します!」

 女騎士が謁見の間を後にすると、彼女は毅然を崩さず、
「いよいよですね、陛下」
 眼の端をキラリと光らせ、女王フルールも怪しげな黒のレースの扇で口元を隠し、

「ほんに、早く妾(わらわ)の下へ来るでぇありぃんすぇ♪」

 獲物を狙う女ヒョウの如き眼を光らせたと思いきや、リブロンの胸元で揺れる「チャームの黒猫」を横目でチラ見、からかいを含んだ眼差しで、

「待ち遠しくありんしょう、リブロンや」

 しかし、女王フルールの言わんとしている意図に気付かぬ彼女は、元同僚であるニプルウォートの一時帰国を指していると思い込み、凛とした表情のまま、

「彼女はフルールを追われた身です。外の世界に触れ、どれ程の成長を遂げたか気にはなりますが、それ以上は、」
「そぅでありせぇん」
「え?」

 見つめる女王の顔を不思議そうに見つめ返すと、彼女の眼はニヤリと笑っていて、

『!』

 真意を、やっと理解するリブロン。
 耳まで真っ赤に顔を背け、

「なっ、なぁ、な、な、なぁ何を仰りたいのかぁ私には皆目見当もつきましぇん!」

 そんな彼女に女王フルールは愉快げに、

「初心(うぶ)きことはぁ羨ましきにぃありんすなぁ~♪」
『もぅ! 陛下ぁーーー!』

 凛然とした表情は何処へやら、彼女は乙女の顔で憤慨した。
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