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第六章

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 喜劇の一夜が明け――
 
 装飾品で彩られたリビングルームの様な「華やかさを持ったダイニングルーム」で、とてつもなく長いテーブルを囲み朝食をとるドロプウォートの両親と、ラディッシュ達。
 彼女の父親は、幼子の世話を甲斐甲斐しくする「愛娘とラディッシュ」を微笑ましく見つめ、
「その様にしていると、本当の親子の様だねぇ♪」
「本当ですわねぇ♪」
 母親も笑みを浮かべたが、

『ちっ、違いますですわぁ!』

 即座に否定する娘。
 しかし否定はしながらも、そこはかとなく嬉しそうな照れ笑い。
 その一方で、苦笑はラディッシュ。
(((…………)))
 ニプルウォート達、女子三人からの無言の圧力が痛い。

 微妙な空気の中、ドロプウォートの母親が唐突に、

「ドロプさん」
「な、何でしょう、お母様?」
「読書は、旅の間もしていらっしゃるの?」
(うっ……)

 他意無い笑顔の素朴な問い掛けに、思わず返答に詰まった。
 そんな彼女を、不思議に見上げるチィックウィードは、

「ママぁ? どぅかしたなぉ?」
「なっ、何でもありませんですわよぉ~♪」

 無垢な問いにお茶を濁しつつ、
「もっ、勿論ですわぁお母様ぁ♪ 何と言いましても「読書による学び」はぁ貴族としての嗜(たしな)みですわぁ♪」
 立て板に水の如く笑顔で答えこそしたが、それは引きつり笑顔であり、

(((((GL系同人小説に読みふけってるなんてぇ言えないよなぁ)))))

 苦笑交じりの仲間たち。
 本音と建前による「板挟みの心中」を慮(おもんぱか)っていると、

「それは良かったですわぁ♪」

 彼女の母親は喜ばし気に、手を小さくパンと打ち鳴らし、
「貴族街に新たな趣の書店が出来たのですわぁ♪ 興味深い書籍が揃っていますから、行ってみては如何かしらぁ?」
 母親からの勧めに愛娘は、

(貴族街の書店……)

 笑顔を留めながらも内心で、正直な話、気が乗らなかった。
 貴族街にある本と言えば「御堅い物」ばかりであったから。
 しかし未だ「読書好き」であるのを公言してしまった以上、後には引けず、
「…………」
 内心を見透かしているであろう仲間たちの意見を求めて振り返ると、仲間たちは当然の如く愛想笑い。
 その笑顔たちは、

(((((行くしかないんじゃない?!)))))
(やっぱり、ですのぉ……)

 ドロプウォートは「秘密の嗜好」を両親に明かす訳にはいかず、腹を括ると、

「そっ、そぅですわねぇ♪」

 母親に多少引きつった笑顔を見せつつ、

「食後に皆と行ってみましてですわぁ♪」
(((((巻き添えぇ?!)))))

 内心でギョッとするラディッシュ達。
 貴族の「御堅い本」など興味は皆無で、正に、単なるとばっちり。
 すると母親は困惑顔で首を傾げ、

「それは困りましたわぁ」
「何がですの、お母様?」
「その御店は「男子禁制」ですのよぉ」
(((((男子禁制ぇ?!)))))

 貴族ならではの「更なる敷居の高さ」を感じ取り、五者五様に慄く仲間たち。意味が分かっていない様子のチィックウィードは除き。
 ホッと胸をなでおろす男子二人の半面、向かわざるを得ない空気の中の女子四人の率直な思いは当然、

((((行きたくない!))))

 とは言っても、衣食住を頼りきりになっている家主からの「お勧め」では、無下に断る訳にもいかず、

((((…………))))

 顔で笑って、心で泣いた。
 しかしここでドロプウォートの父親から、内心で落ち込む女子四人を更に落ち込ませる提案が。
 父親は、手持ち無沙汰になる男子二人を気遣ってか、

「最近、新たな温泉施設が出来てね、二人はそっちに行ってみてはどうだろう?」
((((!))))

 女子四人からの物言いたげなジト目を尻目に、

『『行ってみまぁす♪』』

 間髪入れず即答する二人。
 新たな厄介提案を持ち出される前にと。
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