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第四章

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 チィックウィードはダガーと呼ばれる短刀のナイフを左右の手に持ち、幼いながらも俊敏な動きで敵を翻弄しつつ、繰り出される攻撃を次々かわしながら撃破し、守られるだけの存在ではないのを余すところなく披露した。

 剣豪サジタリアとグラン・ディフロイスに関しては言わずもがな。

 そして仲間たちが切り開いた道を突き進むのは、白き輝きをその身に纏ったラディッシュとドロプウォート。
 目指すは、黒狐ハクサン。

 しかし彼は、劣勢になりつつある現状を理解できているのか、いないのか、分身体である小黒狐たちの戦いには目もくれず、迫り来る二人だけを真正面で捉え、

『ぼくぉ認めなかったオマエ達などぉぉぉおっぉおぉ!』

 九つの黒い尾を長く伸ばし、前後左右、上方からと巧みに襲い掛かり、対して二人は、右に、左に、前に、後ろにと、攻守を目まぐるしく入れ替えながらも、互いの背中を守り、距離を詰めたが、
「「!」」
 誘導されたが如く逃げ場を失ったところへ、黒狐ハクサンが待ち構えていたように、

『消えてしまぇぇえぇっぇえっぇ!!!』

 獣の大口を開けて牙を剥き出し、
 バァオォォオオオォッォオォオォーーーーーーッ!
 特大の「黒炎のブレス」を放った。
 進路上に居た、小黒狐たちをも巻き込みながら。
 迫る強大な黒炎に二人は、

『行くよ、ドロプ!』
『無論ですわ、ラディ!』

 臆する事も、怯む事もなく、迎え撃つと言わんばかり、白き輝きの中で剣を構えると、突如目の前に、

『二人だけで何を盛り上がってるのさぁ!』

 白き輝きを放つニプルが背を向け立ち、続けて、

『パパ、ママ、不合格なぉ!』
『でぇすでぇすよ!』
『俺らは置いてけぼりっスかぁ、兄貴! 姉さん!』
『二人で格好をつけ過ぎだ、もとい、つけ過ぎですわ!』

 チィックウィード、パストリス、ターナップ、カドウィードも、迫る黒炎から二人を守る様に立ちはだかり、
 ドォシャアァァアアァッァァーーーーーーッ!!!
 五人がかりで受け止め四散させながら、

『『『『『今だァーーーッ!』』』』』

 思いを受け取ったラディッシュとドロプウォートは気合の入った表情で頷き、

≪≪天技ィ!≫≫

 白き輝きを眩き輝きに増し、パストリスたちに背を押されたが如く、

≪≪(千桜乱舞・炎空斬)ッ!!!≫≫

 特大の術を、黒炎の奥に居る黒狐ハクサンを見据えて放った。
 即座に射線上から飛び退くターナップたち。

 放たれた二人のチカラは黒炎を消し飛ばし、巨大な光りの柱となって唸りを上げて突き進み、立ち塞がる小黒狐たちを蒸発させるが如くに撃ち消しながら突き進み、遂には、

『キィシャアァァァァァアァアアアアアァアアァ!』

 黒狐ハクサンをも飲み込んだ。
 甲高い悲鳴を上げ、浄化される様に消えて行く黒狐の姿。
 その中心核とも言えるハクサンは、白き光の中で髪が、瞳が、本来の薄紫色に戻りつつ、

(あぁ……死なない筈の「ぼくと言う存在」が、次第に消えて逝く……)

 浄化される様に消えながら、皮肉にも正気を取り戻し、
(ぼくぁいったい何にこだわっていたんだ……)
 ラディッシュ達と共に旅をした日々を思い返しながら、悔やむ様に、
(今となっては、そのこだわりの全てが馬鹿馬鹿しい……)
 そして彼は己の身を以て知った、

(そうか……そうだったのか……ラミウムが彼に与えた本当のチカラとは≪天世殺し≫……)

 最後に残った天世に対する「悪意の一欠けら」で、
(クックック……やっぱり彼女も、ぼくぅと同じ穴の狢……)
 歪んだ笑みを見せながら、
(吉報を待っているよ、ラミウム。地球人の言う「地獄の底」と言う場所でね……)
 光の中で完全消滅した。

 しかし事態は「これで終わり」ではなかった。
 ラディッシュとドロプウォートが撃ち放った天技は、黒狐ハクサンが背後に守っていた謎の秘密兵器にも直撃し、小さい火花がアチコチで飛び始めたかと思うと、

 ドォン! ドォオォ! ドドォン!

 大爆発へと繋がりそうな、小爆発を次々起こし始め、ラディッシュは勝利の余韻に浸る間もなく、
「こ、これはちょっとマズイんじゃ……」
 うろたえ数歩後退ると、

『にっ、逃げますですわよぉおぉぉぉおっぉおっぉ!』

 ドロプウォートが血相を変え、仲間たちとサジタリア、そしてグラン・ディフロイスも、

「「「「「!!!」」」」」
「「!!!」」

 出口に向かって一斉に駆け出した。
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