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第四章

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 数分後――
 
 原形をとどめぬほど顔を腫れさせ気絶した隊長を担いで、

『『『『『『『『『『失礼しましたぁあぁぁぁぁぁあ!』』』』』』』』』』

 脱兎の如く逃げる、タコ殴りにされた騎士兵士たち。
 幼い二人を自分たちの「出世の点数稼ぎ」に利用しようとした、因果応報、自業自得と言ってしまえばそれまでかも知れないが、憐れにしか見えない彼らの後ろ姿に、更に追い討ちをかける様な、

『フゥン!』

 鼻息の荒いドヤ顔を向けるドロプウォートと、怯えた様子の幼子二人を宥める仲間たち。
 そんな傍らで、無事であった事を素直に喜べないラディッシュ。
(もしドロプさんの怒鳴り声が、あと少し、あと数秒、遅れていたら僕は……)
 幼い二人を前に惨劇を繰り広げていたのは確実で、自身の精神の弱さに、自分が自分でなくなった感覚に、
(僕はいつか、みんなをも……この手で)
 可能性を否定する材料は無く、そう考えると益々自分が恐ろしくなり、
(僕は……)
 脳裏に浮かんでは消える仲間たちとの、楽しかったり、悲しかったり、苦労を分かち合ったかけがえのない想い出と共に、

(みんなと一緒に居ない方が良いのかも知れない……)

 悲痛な考えに思い至った。
 しかしその刹那、
(ダイジョウブさぁねぇ)
(?!)
 優しい小声に振り向くと、そこには微笑むラミウムの顔が。
 思わず「ラミィ」と呼びそうになったが、

(!?)

 それは「夢にまで見たラミウム」ではなく、優しく微笑むドロプウォートであった。
(ど、ドロプ……さん……?)
 彼女とラミウムの存在をダブらせた自身に驚きつつ、それと知らぬ彼女は仲間たちには聞こえぬ小声で、
(近頃ラディが「自身の何か」に怯えているのは分かっていましたわ)
(!)
 驚き顔に、彼女は笑顔で「静かに」とジェスチャーしつつ、
(ですが、安心して下さいですわ)
(え?)
(例え貴方に何が起ころうとも、私が必ず、守って差し上げますですわぁ♪)
 ウインクして見せ、
(ドロプさん……)
 ラディッシュが心打たれて見つめていると、彼女は自分が口にしたセリフが急に気恥ずかしく思えたのか赤面顔になり、

(あ、あくまで誓約者としてですわぁ! そして「私達が」に、訂正いたしますわぁ!)

 腰砕けにひより、
(へ? どうしたんだろ、急に???)
 彼女の視線を辿ると、
「あ……」
 そこには「抜け駆けするな」と言わんばかりのジト目を向ける、パストリス、ニプル、カドウィードの姿が。
「「あははは……」」
 バツの悪さを、二人揃って笑って誤魔化していると唐突に、

『『ママも「ゴウカク」なぉ♪』』

 キーメとスプライツが声を上げ、二人が時折、口癖のように言う合否判定が気になったドロプウォートは、
「それはいった何ですの?」
 不思議顔して振り向くと、

「「「「「「「!」」」」」」」

 笑顔の二人がラディッシュとドロプウォートに向け、
((手紙?))
 封筒を差し出していた。
 封筒の開け口には、どこかの一族の紋章と思われるシンボルマークが押された赤い蝋(ろう)、封蝋(ふうろう)で封印が施してあり、明らかに一般庶民の手紙で無い事が窺え、
「ぼっ、僕が開けて良いの?」
 躊躇うラディッシュに、

「「うん!」」

 二人は笑顔で頷くと、
「「パパ、ママ、みんなゴメンなさいなぉ♪」」
 頭を下げ、
「「キーメとスプライツは、おとうさまのいいつけで、パパたちを「シケン」してたなぉ」」
「「「「「「「し、試験?!」」」」」」」
 ギョッとするラディッシュ達に、二人は物怖じする事なく、

「「キーメとスプライツが「ゴウカク」とおもったら、「テガミをわたしなさい」っていわれたなぉ♪」」

 ラディッシュは手渡された手紙の封蝋紋章を、食い入るように見つめながら、
「二人のお父様って、いったい……」
 呟く様に尋ねると二人はニコリと笑い、
「「カデュフィーユなぉ♪」」

『『『『『なっ!?』』』』』

 驚きの声を上げるハクサンと、騎士家系のドロプウォート、ニプル、カドウィード。

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