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第四章

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 一夜明け――

 日の出と共に、早々に目覚めたラディッシュ。
 自身の身支度も早々に、竈に火を起こし朝食の準備をしていると、

「ッ!」

 近づく人の気配が。
 森の奥の、朝靄の中ら姿を現し、

「早いな、ラディ」

 それは、ニプル。
 笑顔に笑顔を返し、

「ニプルさんも、お疲れ様」

 鍋で温めていたスープを木製カップに移して手渡すと、
「おぅありがてぇ」
 受け取り、熱さに用心しながら一飲み。

「くぅかぁあぁぁあぁ温っまるぅ~沁みるさぁ~♪」

 途端に見せた満足気な笑みに、
(なぁんか、おじさんみたい♪)
 怒られそうなので言いはしなかったが、ラディッシュは小さく苦笑しつつ、
「それで、後ろの方はどぅだった?」
 問い掛けに、

「ごちそうさぁん」

 彼女は飲み干したカップを手渡すと、
「三十人ほどの騎士兵士が野営をしてたさ。怪しい気配の正体は、恐らく奴らの斥候……偵察部隊といった所だったんだろぅさ。引き上げた経緯までは分からないけどねぇ」
「どう? 追い付かれそうな感じ?」
 不安げな表情に、ニプルは気休めの楽観を口にする事なく、率直に、包み隠さず、
「恐らくさ。ウチには、チビども居るしさ」
「…………」
(接触は避けられないか……)
 憂いた表情で、ドロプウォートの添い寝で小さな寝息を立てる幼子二人をチラリと見て、

「やっぱり目的は二人、なのかなぁ……?」

 ニプルも二人を見つめて表情を曇らせ、
「あぁ、時宜的に言って間違いないだろうさ」
「あんなに幼い二人に……いったい何があるんだろ?」
「…………」
 ニプルは一瞬黙った後、

「まぁ、二人の家があるって言う、王都アルブレスに着けば何か分かるんじゃないさ?」

 それまでは「余計な詮索は無し」で、二人を守る事に「専念しよう」との意の表れに、察したラディッシュも頷くと、

「そうだね」

 すると幼子二人が、話し声から人の気配を感じてか、
「「う……うぅ~ん……」」
 目をクシクシ擦りながら起き上がり、

「「パパ……ニプルおねぇぃちん、おはぁいおぉ~なぁぉ~」」

 眠そうな様子に、
「おはよう、キーメ、スプライツ」
 ラディッシュが笑みを見せ、
「おぅ、チビどもぉ♪」
 ニプルがニカッと笑うと、寝床に横たえたままのドロプウォートから、

「ニプルさん……貴方の言葉遣いは……」

 いつもの覇気が無く、今にも消えそうな苦言に、

「「「「???」」」」

 四人が顔を覗き込むと、彼女は未だすぅすぅ寝息を立てていて、
「なんだぁコイツ、ウチに寝言で文句言ってらぁ?」
 ニプルが小さく呆れ笑うと、ラディッシュも幼い二人と声を潜めて笑い合った。
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