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第三章
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その場に居た誰もが、語る言葉を見い出せずにいた中、
「クラリアよ……」
カルニヴァは重々しく口を開き、
「オマエは、愛しきプレアにここまで言わせて尚、それでも首謀者の名を口にせぬのか?」
(ッ!)
一瞬、泣き出しそうなほどの辛そうな顔を見せるウトリクラリアであったが、それでも彼女は答えを拒否する様に顔を背け、すると 彼は責めるでなく、まるで諭すように、
「オマエの一声があれば、証拠は無くとも正義の御旗の下、我らはアルブルに対し立つ事が出来るのだぞ」
「…………」
それでも応えぬ彼女に、
『あぁもぅ間怠っこしぃねぇえっぇっぇ!』
業を煮やし、声を上げたのはニプル。
じれったそうに立ち上がり、
「ウチはフルール国での所属がらさ、この手(黙秘)の事案も多くてねぇ!」
顔を背けたままのウトリクラリアをじっと見据え、
「天法を使った「意地の悪い尋問」も、色々と得意としているのさぁ!」
それは本人の意思に関係なく、自白が可能であるのを意味し、
「ッ!」
驚愕した表情で振り返るウトリクラリア。
話す訳にはいかない理由が、そこにはあったから。
しかしカルニヴァはニプルの提案に凛然と、
「やむを得んな」
(!)
彼女は咄嗟に逃げ出そうとしたが、団長トムフォルが即座に取り押さえ、あがく彼女にプルプレアは、
『往生際が悪いよォ、クラリアぁ!』
それでもなお抵抗し、
「はっ、放しなさぁい! プレア! これは貴方の為でもあるのよぉ!」
「何を言ってる?!」
言い争う二人を尻目にカルニヴァは凄然と、
「ニプル殿、よろしく頼む」
「あいよぉ、任されたぁ」
ニプルは気合を入れるが如くに袖まくり、
≪天世より授かりし恩恵を以て我は問う≫
右手に白銀の輝きを宿し、
「やっ、止めなさァい!」
あがくウトリクラリアを舌なめずりしながら見下ろし、
「往生しぃや、お姫様ぁ」
なおも抵抗する彼女の顔に、輝く右手を向け開くと、
(!)
ウトリクラリアの両目は次第に「虚ろなモノ」へと変わって行き、そんな彼女にニプルは手をかざしたまま、
「さぁてぇ答えてもらおうかねぇ、お姫様ぁ。貴方の後ろに就いている「黒幕の名前」をさぁ」
しかし、謁見の間に居た全ての人々が固唾を呑んで見守る中、
「…………」
彼女の唇は声を発せず、抗う様に震えるだけ。
自白の術を掛けられてなお、心の強さで抵抗し、その意志の強さに、
「やるねぇ~粘るねぇ~流石は大国のお姫様だねぇ~♪」
ニプルはからかいを交えた半笑いで感嘆こそ漏らしたが、
『だがねぇ!』
無念の内に消えて逝った村人たちを想い、怒りの眼差しで以て睨むように彼女を見下ろし、
「手前勝手に多くの(臣民の)命を奪っておいてぇ張る虚勢じゃないだろさァアァ!」
一瞬ビクリと身を震わせる、虚ろな目のウトリクラリア。
術中の彼女が、問われた言葉以外に反応する筈が無いにもかかわらず。
それ程までに、心に深い傷を負っている証であるのか。
それでもなお、黒幕の名前を頑なに言わない彼女であったが、ニプルの術は実戦で積み上げ、鍛え上げられた百戦錬磨の産物。
揺らぎを見せた彼女の心を逃しはせず、答えを拒み続けた唇が、次第に震えながら、
「ぁ…………」
ゆっくりと「あ段」の形に開き始め、黒幕の名前が今まさに語られようと言う刹那、
(ヤバイッ!)
瞬間的に飛び退くニプル。
『団長も離れなァ!』
それは第六感的、実践で磨かれた「野生の勘」とでも言うべきか。
彼女が反射的に飛び退いた次の瞬間、
『『アァアァァアァァァーーーーーーッ!』』
ウトリクラリアとプルプレアが悲鳴を上げ、団長トムフォルも飛び退くと、二人は体内から外へ向かってほとばしる「黒き稲光」に全身を包まれ、もがき苦しみ、大切に想う二人の異変に、カルニヴァが驚愕の表情で立ち上がり、
「ニプル殿ォ! コレはいったァいぃ!」
「黒幕の名前を口にしようとすると発動する術が仕込まれていたようなのさ! 用意周到な黒幕さァ!」
「何故にプレアまでに!」
「ソイツは分からない! それにしても、いつの間に?! まさかずっと以前からぁ!?」
疑問は次々浮かんで来るも、のたうつ二人を救う術は浮かんで来ず、するとドロプウォート達が堪らず、
「何とかなりませぇんの、ニプル!」
「どぅにか出来ないのぉ!」
「手はネェのかよぉ!」
「どぅしたらぁ良いのでぇすぅ!」
ともすれば責める様な物言いに、術を施した結果が故に責任を感じる彼女は、
『出来るモノならぁとうにしているサァ!』
逆ギレ気味に声を上げ、謁見の間が混乱と狼狽に包まれるさ中、扉が「バァン」と勢い良く跳ね開き、
『ヤベェぞォ大将ぉ! 合成獣の急襲だァ!』
四団長の一人ルサンデュが血相を変えて飛び込んで来て、
「何だとォ!」
(この最悪の時宜にィ!)
現王カルニヴァは歯ぎしり、
「何処が襲われているのかァ!」
怒り交じりの叫び声に、ルサンデュは青い顔して、
「こっ、国内全域だぁ……」
『こくっ?!!!』
(ばっ、馬鹿なぁ国内一斉多発だとぉ!)
それ程までに「不穏な兆候」など情報として届いていなかった。
「クラリアよ……」
カルニヴァは重々しく口を開き、
「オマエは、愛しきプレアにここまで言わせて尚、それでも首謀者の名を口にせぬのか?」
(ッ!)
一瞬、泣き出しそうなほどの辛そうな顔を見せるウトリクラリアであったが、それでも彼女は答えを拒否する様に顔を背け、すると 彼は責めるでなく、まるで諭すように、
「オマエの一声があれば、証拠は無くとも正義の御旗の下、我らはアルブルに対し立つ事が出来るのだぞ」
「…………」
それでも応えぬ彼女に、
『あぁもぅ間怠っこしぃねぇえっぇっぇ!』
業を煮やし、声を上げたのはニプル。
じれったそうに立ち上がり、
「ウチはフルール国での所属がらさ、この手(黙秘)の事案も多くてねぇ!」
顔を背けたままのウトリクラリアをじっと見据え、
「天法を使った「意地の悪い尋問」も、色々と得意としているのさぁ!」
それは本人の意思に関係なく、自白が可能であるのを意味し、
「ッ!」
驚愕した表情で振り返るウトリクラリア。
話す訳にはいかない理由が、そこにはあったから。
しかしカルニヴァはニプルの提案に凛然と、
「やむを得んな」
(!)
彼女は咄嗟に逃げ出そうとしたが、団長トムフォルが即座に取り押さえ、あがく彼女にプルプレアは、
『往生際が悪いよォ、クラリアぁ!』
それでもなお抵抗し、
「はっ、放しなさぁい! プレア! これは貴方の為でもあるのよぉ!」
「何を言ってる?!」
言い争う二人を尻目にカルニヴァは凄然と、
「ニプル殿、よろしく頼む」
「あいよぉ、任されたぁ」
ニプルは気合を入れるが如くに袖まくり、
≪天世より授かりし恩恵を以て我は問う≫
右手に白銀の輝きを宿し、
「やっ、止めなさァい!」
あがくウトリクラリアを舌なめずりしながら見下ろし、
「往生しぃや、お姫様ぁ」
なおも抵抗する彼女の顔に、輝く右手を向け開くと、
(!)
ウトリクラリアの両目は次第に「虚ろなモノ」へと変わって行き、そんな彼女にニプルは手をかざしたまま、
「さぁてぇ答えてもらおうかねぇ、お姫様ぁ。貴方の後ろに就いている「黒幕の名前」をさぁ」
しかし、謁見の間に居た全ての人々が固唾を呑んで見守る中、
「…………」
彼女の唇は声を発せず、抗う様に震えるだけ。
自白の術を掛けられてなお、心の強さで抵抗し、その意志の強さに、
「やるねぇ~粘るねぇ~流石は大国のお姫様だねぇ~♪」
ニプルはからかいを交えた半笑いで感嘆こそ漏らしたが、
『だがねぇ!』
無念の内に消えて逝った村人たちを想い、怒りの眼差しで以て睨むように彼女を見下ろし、
「手前勝手に多くの(臣民の)命を奪っておいてぇ張る虚勢じゃないだろさァアァ!」
一瞬ビクリと身を震わせる、虚ろな目のウトリクラリア。
術中の彼女が、問われた言葉以外に反応する筈が無いにもかかわらず。
それ程までに、心に深い傷を負っている証であるのか。
それでもなお、黒幕の名前を頑なに言わない彼女であったが、ニプルの術は実戦で積み上げ、鍛え上げられた百戦錬磨の産物。
揺らぎを見せた彼女の心を逃しはせず、答えを拒み続けた唇が、次第に震えながら、
「ぁ…………」
ゆっくりと「あ段」の形に開き始め、黒幕の名前が今まさに語られようと言う刹那、
(ヤバイッ!)
瞬間的に飛び退くニプル。
『団長も離れなァ!』
それは第六感的、実践で磨かれた「野生の勘」とでも言うべきか。
彼女が反射的に飛び退いた次の瞬間、
『『アァアァァアァァァーーーーーーッ!』』
ウトリクラリアとプルプレアが悲鳴を上げ、団長トムフォルも飛び退くと、二人は体内から外へ向かってほとばしる「黒き稲光」に全身を包まれ、もがき苦しみ、大切に想う二人の異変に、カルニヴァが驚愕の表情で立ち上がり、
「ニプル殿ォ! コレはいったァいぃ!」
「黒幕の名前を口にしようとすると発動する術が仕込まれていたようなのさ! 用意周到な黒幕さァ!」
「何故にプレアまでに!」
「ソイツは分からない! それにしても、いつの間に?! まさかずっと以前からぁ!?」
疑問は次々浮かんで来るも、のたうつ二人を救う術は浮かんで来ず、するとドロプウォート達が堪らず、
「何とかなりませぇんの、ニプル!」
「どぅにか出来ないのぉ!」
「手はネェのかよぉ!」
「どぅしたらぁ良いのでぇすぅ!」
ともすれば責める様な物言いに、術を施した結果が故に責任を感じる彼女は、
『出来るモノならぁとうにしているサァ!』
逆ギレ気味に声を上げ、謁見の間が混乱と狼狽に包まれるさ中、扉が「バァン」と勢い良く跳ね開き、
『ヤベェぞォ大将ぉ! 合成獣の急襲だァ!』
四団長の一人ルサンデュが血相を変えて飛び込んで来て、
「何だとォ!」
(この最悪の時宜にィ!)
現王カルニヴァは歯ぎしり、
「何処が襲われているのかァ!」
怒り交じりの叫び声に、ルサンデュは青い顔して、
「こっ、国内全域だぁ……」
『こくっ?!!!』
(ばっ、馬鹿なぁ国内一斉多発だとぉ!)
それ程までに「不穏な兆候」など情報として届いていなかった。
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