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第三章
3-26
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数時間後――
夜闇の森を進み、場所を変えたラディッシュ達。
各々風呂で戦いの汚れを落とし、一つの焚き火を神妙な面持ちで囲んでいた。
最初に口を開いたのはプルプレア。
「先ずは「盾」と「鎧」の処理を手伝って頂いた事に感謝致します」
恭しく頭を下げた。
倒した合成獣が纏っていた国家機密を野晒しにしておく訳にはいかず、かと言って実力不足のプルプレでは破壊する事が出来ない為、ラディッシュ達に「天法による許容越え」を使っての破壊を頼んだのであった。
その上で、
「合成獣どもが纏っていた鎧や、装備していた盾は、我がカルニヴァ国が研究開発を進めていた、天法攻撃を無効化する防具だ」
経緯はどうであれ、言い逃れや、隠し立てした所で「今更」であり、包み隠さず正直に話すと、
『天世に内緒でね♪』
笑顔でツッコム、ハクサンに、
「うぅ……」
バツが悪そうな顔するプルプレア。
そんな彼女を、ラディッシュはクスリと笑いながら、
「それにしても「無効化」って? それに「許容越え」って?」
「…………」
プルプレアは「国家機密の種明かし」にためらいを覚えたが、過剰なニコニコ顔で見つめるハクサンの目から、
≪これ以上の誤魔化しは「天世に対する更なる裏切り行為」だよ≫
言っているのを悟り、気持ちを静める様に小さく深呼吸。
改めて、
「正確には、無効化している訳では無い。受けた天法を吸収し、周囲に拡散排出する事で無効化した様に見せる技術だ」
「なるほどですわぁ」
得心が行ったのか頷くドロプウォートと、
「だから破裂する様に壊れたのさね」
ニヤリ顔を見合わせるニプル。
「「「?」」」
ラディッシュ、パストリス、ターナップが、理解しきれていない顔を傾げると、
「簡単な話さ」
ニプルは笑いながら、
「パンパンに膨らんだ風船に、更に息を吹き込んだらどうなるさぁ?」
「「「あ!」」」
「そう言う事さぁ♪ 要するに、ウチらの一撃に、吸収出来る容量を超えちまったか、拡散が間に合わなくなったかで、ぶっ飛んじまったって事なのさぁ。なぁ、プルプレア♪」
ご満悦なしたり顔の解説に、
「……そ、その通りだ」
若干、悔し気な顔を見せると、素朴な疑問を持ったラディッシュが、
「でもさぁ」
声を上げ、
「アレって、カルニヴァの国が天世に内緒にしてまで開発していた「国家機密」だったんでしょ? なのに、どうして? なんで合成獣が着ていたの? どうして持ち出せたの? 誰が僕たちを襲わせたの?」
矢継ぎ早の質問に、プルプレアの脳裏に一人の顔が浮かんだが、
「そ、それは……」
確証はなく、実行犯と思いたくない気持ちから答えを躊躇っていると、
「やっぱり(王様の)弟さぁん?」
見透かされた様な問い掛けに、彼女は思わず血相を変え、
『あの子は人より自己表現が下手なだけで「そこまでする子」じゃなァい!』
あまりの剣幕に、
「ひぃ! ゴメンナサぁイ!」
頭を抱えるラディッシュと、
(((((あの子……)))))
意味ありげな言葉の端から、ただの幼馴染みではない何かを感じ取るドロプウォ―ト達。
平静かつ冷静に、そして事務的に、
「ですが彼は「宰相アルブリソの傀儡」と化しているのでしょ?」
ドロプウォートの問い掛けは、以前にプルプレア自身が「口にした言葉」の返しであり、
「そ、」
言葉に詰まり、
「うと……ビフィーダ様に、その様な権限は……」
口にしかけた何かを言い改め、擁護すると、ターナップが焦れた顔して、
「んならぁ消去法で(犯人は)王様しかねぇじゃねぇかぁ」
『違っ! 王は断じて「その様な方」ではなァい!』
食って掛かる様に即応したが、アレも違う、コレも違うと、ソレは論拠の無い「単なる身びいき」としか取れない熱であり、縁故を持たないドロプウォートはその様な熱に当てられる事なく、
「では問います。ラディが問うた通り、いったい誰が持ち出し、誰の指示の結果ですの?」
仲間の誰かが命を落としていてもおかしくなかった状況下、静かなれど、責める様な物言いに、
「わ、分からない……分からないんだ……」
プルプレアは、悲痛な表情で頭を抱えた。
幼き頃、共に遊んだ二人(現カルニヴァ王とビフィーダ)の笑顔を思い起こし。
親しき者たちを疑わなければならない彼女の心中に、
「「「「「…………」」」」」
かける言葉が見つけられないラディッシュ達。
そんな中にあってプルプレアには、何を差し置いても確認しなければならない「重大案件」があった。
落ち込みを隠せない、うつむき加減のまま、
「は……ハクサン……様……」
重苦しく口を開き、
「わ、我が国は……天世の教えに背き、新防具開発の報告を怠った我が国は……そして我が君は……どの様な責めを負う事に……」
故国の存亡を賭けた問い。
緊張は否応なし頂点を迎えたが、ハクサンから返った答えは、
「無いよぉん♪」
その、あまりの肩透かしな返答に、
「・・・・・・え?」
呆けた顔をすると、
「だってぇ、何処の国にも「自国を守る為の秘密」があるのは当然だと、ぼくぁ思うからねぇ♪」
笑顔を見せつつ腹の中では、
(元老院のジジィ共は、どう思っているか知らないけど……報告する気なんて、さらさら無いしねぇ♪)
御歴歴を嘲笑いながら、
「現にフルールも「内緒の開発」をしてたけど、ぼくのぉ権限で不問に付したしねぇ」
「そっ、そぅなのかぁ!?」
ギョッとした顔を向けると、ニプルはケラケラと笑いながら、
「まぁな♪」
その笑顔に、
「そ、そうか……」
救われた、安堵の笑みをこぼすプルプレアであった。
夜闇の森を進み、場所を変えたラディッシュ達。
各々風呂で戦いの汚れを落とし、一つの焚き火を神妙な面持ちで囲んでいた。
最初に口を開いたのはプルプレア。
「先ずは「盾」と「鎧」の処理を手伝って頂いた事に感謝致します」
恭しく頭を下げた。
倒した合成獣が纏っていた国家機密を野晒しにしておく訳にはいかず、かと言って実力不足のプルプレでは破壊する事が出来ない為、ラディッシュ達に「天法による許容越え」を使っての破壊を頼んだのであった。
その上で、
「合成獣どもが纏っていた鎧や、装備していた盾は、我がカルニヴァ国が研究開発を進めていた、天法攻撃を無効化する防具だ」
経緯はどうであれ、言い逃れや、隠し立てした所で「今更」であり、包み隠さず正直に話すと、
『天世に内緒でね♪』
笑顔でツッコム、ハクサンに、
「うぅ……」
バツが悪そうな顔するプルプレア。
そんな彼女を、ラディッシュはクスリと笑いながら、
「それにしても「無効化」って? それに「許容越え」って?」
「…………」
プルプレアは「国家機密の種明かし」にためらいを覚えたが、過剰なニコニコ顔で見つめるハクサンの目から、
≪これ以上の誤魔化しは「天世に対する更なる裏切り行為」だよ≫
言っているのを悟り、気持ちを静める様に小さく深呼吸。
改めて、
「正確には、無効化している訳では無い。受けた天法を吸収し、周囲に拡散排出する事で無効化した様に見せる技術だ」
「なるほどですわぁ」
得心が行ったのか頷くドロプウォートと、
「だから破裂する様に壊れたのさね」
ニヤリ顔を見合わせるニプル。
「「「?」」」
ラディッシュ、パストリス、ターナップが、理解しきれていない顔を傾げると、
「簡単な話さ」
ニプルは笑いながら、
「パンパンに膨らんだ風船に、更に息を吹き込んだらどうなるさぁ?」
「「「あ!」」」
「そう言う事さぁ♪ 要するに、ウチらの一撃に、吸収出来る容量を超えちまったか、拡散が間に合わなくなったかで、ぶっ飛んじまったって事なのさぁ。なぁ、プルプレア♪」
ご満悦なしたり顔の解説に、
「……そ、その通りだ」
若干、悔し気な顔を見せると、素朴な疑問を持ったラディッシュが、
「でもさぁ」
声を上げ、
「アレって、カルニヴァの国が天世に内緒にしてまで開発していた「国家機密」だったんでしょ? なのに、どうして? なんで合成獣が着ていたの? どうして持ち出せたの? 誰が僕たちを襲わせたの?」
矢継ぎ早の質問に、プルプレアの脳裏に一人の顔が浮かんだが、
「そ、それは……」
確証はなく、実行犯と思いたくない気持ちから答えを躊躇っていると、
「やっぱり(王様の)弟さぁん?」
見透かされた様な問い掛けに、彼女は思わず血相を変え、
『あの子は人より自己表現が下手なだけで「そこまでする子」じゃなァい!』
あまりの剣幕に、
「ひぃ! ゴメンナサぁイ!」
頭を抱えるラディッシュと、
(((((あの子……)))))
意味ありげな言葉の端から、ただの幼馴染みではない何かを感じ取るドロプウォ―ト達。
平静かつ冷静に、そして事務的に、
「ですが彼は「宰相アルブリソの傀儡」と化しているのでしょ?」
ドロプウォートの問い掛けは、以前にプルプレア自身が「口にした言葉」の返しであり、
「そ、」
言葉に詰まり、
「うと……ビフィーダ様に、その様な権限は……」
口にしかけた何かを言い改め、擁護すると、ターナップが焦れた顔して、
「んならぁ消去法で(犯人は)王様しかねぇじゃねぇかぁ」
『違っ! 王は断じて「その様な方」ではなァい!』
食って掛かる様に即応したが、アレも違う、コレも違うと、ソレは論拠の無い「単なる身びいき」としか取れない熱であり、縁故を持たないドロプウォートはその様な熱に当てられる事なく、
「では問います。ラディが問うた通り、いったい誰が持ち出し、誰の指示の結果ですの?」
仲間の誰かが命を落としていてもおかしくなかった状況下、静かなれど、責める様な物言いに、
「わ、分からない……分からないんだ……」
プルプレアは、悲痛な表情で頭を抱えた。
幼き頃、共に遊んだ二人(現カルニヴァ王とビフィーダ)の笑顔を思い起こし。
親しき者たちを疑わなければならない彼女の心中に、
「「「「「…………」」」」」
かける言葉が見つけられないラディッシュ達。
そんな中にあってプルプレアには、何を差し置いても確認しなければならない「重大案件」があった。
落ち込みを隠せない、うつむき加減のまま、
「は……ハクサン……様……」
重苦しく口を開き、
「わ、我が国は……天世の教えに背き、新防具開発の報告を怠った我が国は……そして我が君は……どの様な責めを負う事に……」
故国の存亡を賭けた問い。
緊張は否応なし頂点を迎えたが、ハクサンから返った答えは、
「無いよぉん♪」
その、あまりの肩透かしな返答に、
「・・・・・・え?」
呆けた顔をすると、
「だってぇ、何処の国にも「自国を守る為の秘密」があるのは当然だと、ぼくぁ思うからねぇ♪」
笑顔を見せつつ腹の中では、
(元老院のジジィ共は、どう思っているか知らないけど……報告する気なんて、さらさら無いしねぇ♪)
御歴歴を嘲笑いながら、
「現にフルールも「内緒の開発」をしてたけど、ぼくのぉ権限で不問に付したしねぇ」
「そっ、そぅなのかぁ!?」
ギョッとした顔を向けると、ニプルはケラケラと笑いながら、
「まぁな♪」
その笑顔に、
「そ、そうか……」
救われた、安堵の笑みをこぼすプルプレアであった。
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