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第三章
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一夜が明け――
防壁で囲まれた村の中から幾本も細長く立ち昇る、残り火による黒煙と、周囲に漂う火事場特有の異臭。
防壁の外側には、整然と並べられた幾つもの亡骸が。
その傍らで泣き崩れる遺族たちや村人たちを、憔悴した表情で見つめるのは、煤にまみれたラディッシュ達。
無数の汚染獣に四方八方から襲われた村は、いかな百人の天世人に近づきつつある異世界勇者と、その仲間たちとの特異なチカラを以てしても、防ぎ切る事は出来なかったのである。
彼ら、彼女たちは死力を尽くした。
尽くしてなお、届かなかった。
犠牲者は、村人の半数以上。
その中には助けた筈の、あの親子も。
「「「「「…………」」」」」
かける言葉が見つけられない中、遺族の中から、
「やっぱり、よそ者なんて招き入れるんじゃなかった……」
その嘆きに同調する様に、
「そうだァ! コイツ等が来たからぁこんな事になったんだァ!」
するとプルプレアが同胞たちのやり場のない怒りに理解は示しつつ、
「何を言ってるんだ司祭が言っていただろォ! そもそも犯人はこの村の人間でぇ!」
同胞だからこそ言える苦言を呈そうとしたが、ラディッシュはそれを静かに制し、
「村の人達の言い分は「最も」かも知れない……」
自分たちの存在が引き金であった可能性を示唆し、
(!)
プルプレアが視線を落とすと、村長が申し訳なさげに歩み寄って来て、
「理不尽な物言いであるのは重々承知……じゃが、村の皆の心中を察し、どうか一刻も早いお引き取りを……」
即時出て行くよう促した。
「…………」
返す言葉も無いプルプレア。
「陛下に……陛下には支援要請の手紙を出しておきました……」
それが伝えられる言葉の、精一杯であった。
失意のまま村を後にするラディッシュ達。
チカラを付け、己の心と向き合いながら戦った筈が、結果は「助けた筈の命」さえ守り切れず、肩を落として、うつむき歩き、
(僕のした事の意味っていったい……)
無意味にさえ思えて来た中、
『揃いも揃ってぇ何を辛気臭い顔をしてるんだかぁ』
唐突に呆れ声を上げたのはハクサン。
何を気に病んでいるのかと問わんばかりに、
「あぁなるのを分かった上で生活していたのは、彼らだよぉ? ぼくぁは忠告もした。そしてキミ達は村人の半数も救った。上等じゃないかぁ。キミ達が居なければ全滅だよ?」
普通レベルのイケメンスマイルで前髪をたなびかせたが、
「でもハクさぁん……僕たちが行かなかったら、」
村が襲われなかったか可能性を言おうとすると、
「ノンノンノン」
続く言葉を半笑いで制し、
「百歩譲って「だとしてもぉ」だよぉ? 遅いか早いかの違いで、いずれ起きた事態だよ」
彼なりの(意外な)気遣いなのか、はたまた本心からそう思っているかは分からなかったが、目の前で「守っていた多くの命」を易々と奪われては、気持ちの切り替えなど簡単に出来る筈も無く、
「僕たちはカルニヴァ城に着くまで……もぅ村や町に近づかない方が良いのかも知れない……」
呟きに、ハクサンはヤレヤレ顔を見せたが、うつむき加減のドロプウォート達は小さく頷き同意を示した。
街道を行くラディッシュ達――
プルプレアの話では、城への道程も半分に差し掛かった辺り。
(襲撃を受けた)村を後にして数日、天世の横槍は無く、加えて汚染獣との遭遇も無く、旅路が晴天続きであったが故に、沈んでいた空気も幾分明るさを取り戻し、ラディッシュは青空に浮かぶ雲をぼんやり眺めながら、
「お昼は、何がイイかなぁ……」
何の気なしに呟くと、
「らーめんっ!」
「ちゃ―はんっ!」
「はんばーぐっ!」
「すぱげてぇーっ!」
「ぎょざっ!」
各々、フルール国の同人誌作業で目にし、ラディッシュが再現して気に入った異世界料理の名を上げ、独り言への思わぬ食いつき反応に、
「あははは……」
困惑笑いを浮かべたが、ふと、
「そう言えばプルプレアさん」
「ん?」
「カルニヴァ国の名物料理って、何かあるの?」
「カルニヴァの? そうだなぁ……」
プルプレアは黙考し、
「やはり「肉」だな!」
パッと見せた笑顔に、
「え……」
言葉に詰まるラディッシュ。
(えぇと……料理を聞いたんだけど……僕の「質問の仕方」が悪かったのかな?)
思い改め、
「どんな調理をする、肉料理で有名なの?」
するとプルプレアは、
「ちょうり?」
キョトン顔に、
「え? あ、う、うん……」
戸惑いに、
「そんなもの「丸ごと焼いて丸かぶり」に決まってるだろぅ♪」
満面の笑顔を返され、
(えぇ~~~)
流石に困惑する中、
((((((流石は脳筋国……))))))
苦笑するドロプウォート達であったが、ラディッシュは、
(!)
会話の中から何か料理を閃いた様子で、
「プルプレアさんが気に入るかどうか分からないけど、今日のお昼は肉料理にしてみるよぉ♪」
「「「「「「肉料理ぃ♪」」」」」」
ドロプウォ―ト達も色めき立った。
何だかんだと理由をつけても、体力勝負に「肉」は必須であり、言わずもがな『皆、肉好き』なのである。
防壁で囲まれた村の中から幾本も細長く立ち昇る、残り火による黒煙と、周囲に漂う火事場特有の異臭。
防壁の外側には、整然と並べられた幾つもの亡骸が。
その傍らで泣き崩れる遺族たちや村人たちを、憔悴した表情で見つめるのは、煤にまみれたラディッシュ達。
無数の汚染獣に四方八方から襲われた村は、いかな百人の天世人に近づきつつある異世界勇者と、その仲間たちとの特異なチカラを以てしても、防ぎ切る事は出来なかったのである。
彼ら、彼女たちは死力を尽くした。
尽くしてなお、届かなかった。
犠牲者は、村人の半数以上。
その中には助けた筈の、あの親子も。
「「「「「…………」」」」」
かける言葉が見つけられない中、遺族の中から、
「やっぱり、よそ者なんて招き入れるんじゃなかった……」
その嘆きに同調する様に、
「そうだァ! コイツ等が来たからぁこんな事になったんだァ!」
するとプルプレアが同胞たちのやり場のない怒りに理解は示しつつ、
「何を言ってるんだ司祭が言っていただろォ! そもそも犯人はこの村の人間でぇ!」
同胞だからこそ言える苦言を呈そうとしたが、ラディッシュはそれを静かに制し、
「村の人達の言い分は「最も」かも知れない……」
自分たちの存在が引き金であった可能性を示唆し、
(!)
プルプレアが視線を落とすと、村長が申し訳なさげに歩み寄って来て、
「理不尽な物言いであるのは重々承知……じゃが、村の皆の心中を察し、どうか一刻も早いお引き取りを……」
即時出て行くよう促した。
「…………」
返す言葉も無いプルプレア。
「陛下に……陛下には支援要請の手紙を出しておきました……」
それが伝えられる言葉の、精一杯であった。
失意のまま村を後にするラディッシュ達。
チカラを付け、己の心と向き合いながら戦った筈が、結果は「助けた筈の命」さえ守り切れず、肩を落として、うつむき歩き、
(僕のした事の意味っていったい……)
無意味にさえ思えて来た中、
『揃いも揃ってぇ何を辛気臭い顔をしてるんだかぁ』
唐突に呆れ声を上げたのはハクサン。
何を気に病んでいるのかと問わんばかりに、
「あぁなるのを分かった上で生活していたのは、彼らだよぉ? ぼくぁは忠告もした。そしてキミ達は村人の半数も救った。上等じゃないかぁ。キミ達が居なければ全滅だよ?」
普通レベルのイケメンスマイルで前髪をたなびかせたが、
「でもハクさぁん……僕たちが行かなかったら、」
村が襲われなかったか可能性を言おうとすると、
「ノンノンノン」
続く言葉を半笑いで制し、
「百歩譲って「だとしてもぉ」だよぉ? 遅いか早いかの違いで、いずれ起きた事態だよ」
彼なりの(意外な)気遣いなのか、はたまた本心からそう思っているかは分からなかったが、目の前で「守っていた多くの命」を易々と奪われては、気持ちの切り替えなど簡単に出来る筈も無く、
「僕たちはカルニヴァ城に着くまで……もぅ村や町に近づかない方が良いのかも知れない……」
呟きに、ハクサンはヤレヤレ顔を見せたが、うつむき加減のドロプウォート達は小さく頷き同意を示した。
街道を行くラディッシュ達――
プルプレアの話では、城への道程も半分に差し掛かった辺り。
(襲撃を受けた)村を後にして数日、天世の横槍は無く、加えて汚染獣との遭遇も無く、旅路が晴天続きであったが故に、沈んでいた空気も幾分明るさを取り戻し、ラディッシュは青空に浮かぶ雲をぼんやり眺めながら、
「お昼は、何がイイかなぁ……」
何の気なしに呟くと、
「らーめんっ!」
「ちゃ―はんっ!」
「はんばーぐっ!」
「すぱげてぇーっ!」
「ぎょざっ!」
各々、フルール国の同人誌作業で目にし、ラディッシュが再現して気に入った異世界料理の名を上げ、独り言への思わぬ食いつき反応に、
「あははは……」
困惑笑いを浮かべたが、ふと、
「そう言えばプルプレアさん」
「ん?」
「カルニヴァ国の名物料理って、何かあるの?」
「カルニヴァの? そうだなぁ……」
プルプレアは黙考し、
「やはり「肉」だな!」
パッと見せた笑顔に、
「え……」
言葉に詰まるラディッシュ。
(えぇと……料理を聞いたんだけど……僕の「質問の仕方」が悪かったのかな?)
思い改め、
「どんな調理をする、肉料理で有名なの?」
するとプルプレアは、
「ちょうり?」
キョトン顔に、
「え? あ、う、うん……」
戸惑いに、
「そんなもの「丸ごと焼いて丸かぶり」に決まってるだろぅ♪」
満面の笑顔を返され、
(えぇ~~~)
流石に困惑する中、
((((((流石は脳筋国……))))))
苦笑するドロプウォート達であったが、ラディッシュは、
(!)
会話の中から何か料理を閃いた様子で、
「プルプレアさんが気に入るかどうか分からないけど、今日のお昼は肉料理にしてみるよぉ♪」
「「「「「「肉料理ぃ♪」」」」」」
ドロプウォ―ト達も色めき立った。
何だかんだと理由をつけても、体力勝負に「肉」は必須であり、言わずもがな『皆、肉好き』なのである。
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