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第三章

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 ラディッシュが指摘した通りの六人組の一団は、白いローブを頭の天辺から足先まですっぽり羽織り、顔まで白い一枚布で隠し、何かしらの宗教団体を思わせる集団ではあったが、見えざる素顔と裏腹に、その体躯はローブ内に収まりきらず、大胸筋は、広背筋は、上腕二頭筋は、ローブを破らんばかりに隆々たる素顔を曝け出していた。
 森の中を錫杖を鳴らしながら、無言で徐々に近づくマッチョな一団に、緊張は否応なしに高まった。
 身構えるラディッシュ達。
 しかし次の瞬間、警戒心は、
 
「「「「「え?!」」」」」

 驚きと共に、呆気に変わった。
 一団の中でもひときわ体躯が大きく、先頭で「異様を放つマッチョ」がハクサンの前に跪くと同時、他のマッチョ五人も一斉に跪いたのである。
「「「「「…………」」」」」
 何事かと思うラディッシュ達を前に、先頭の巨マッチョは恭しく頭を下げ、

「お迎えに上がりました、一位様。元老院の方々がお待ちです」

 その体躯に負けず劣らず野太い声からは、拒絶を許さぬ「信念」の様なものさえ感じさせた。
 すると足を止めてから今まで一言も発しなかった「おしゃべりハクサン」が、

『イヤぁ~~~だねぇ♪』

 突然のからかい口調でターナップの大きな背に隠れ、
「誰が行くもんかぁ。ベロベロべぇ~~~」
 マッチョ達に舌を見せつけ、幼稚な挑発までして見せた。
 まるで「大人と幼児」の様なやり取りに、

「「「「「…………」」」」」

 思わず呆れて絶句するラディッシュ達。
 とは言え「カルニヴァ入国の根回しをした」と言っていた彼を連れて行かれてしまっては、入国審査で問題が起きる可能性があり、まかり「カルニヴァ国に入れない」とでもなれば、聖具が揃えられないラディッシュの身に「地世の影響が出る」のみならず、ラディッシュが喉から手が出るほど欲する「ラミウムの情報」も得られなくなるのを意味し、

(諦める訳にはいかない!)

 ラディッシュは腹を括りながらも恐る恐る、愛想笑いを交え、
「あっ、あのぉ……い、今ハクさんを連れて行かれると僕たち(主に自分が)凄く困、」
 困ると言い終わるより先、先頭の大型マッチョの背後に控えた中型マッチョの一人がハクサンに対しては跪いたまま、

『黙れぇ! 異世界人の「生き残り如き」がァ!』

 激しい面罵に、
「ひぃうっ!」
 ラディッシュは怯え頭を抱えたが、罵った彼を筆頭に白装束の一団は次の瞬間、

「「「「「「!?」」」」」」

 愕然と息を呑んだ。
 鬼の形相して日本刀を構えるドロプウォートと、

『『『ラディが、何だってぇ?!』』』

 凄むターナップ、ニプル、パストリスに。
 ドロプウォートの剣先は、ラディッシュに暴言を吐いた中型マッチョの首元にピタリと当てられていて、いつの間に大型マッチョの横をすり抜けたのか、
(はっ、早い! しかも親衛隊隊長である、この『スパイダマグ』の真横をだとっ!)
 一枚布の下の素顔は驚愕と同時、隊長としてのプライドを部下の前で著しく傷つけられた悔しさに歪んでいた。
 一方、当事者二人を置き去りに、もめる二集団に、

((みんな気が短いんだからぁ~))

 苦笑いするのは、当事者のラディッシュとハクサン。
 そんな中、心中穏やかでなかったスパイダマグが怒りを以て、
 
『貴様らぁ我々が天世元老院直下の親衛隊と知っての狼藉かァ! 事と次第によっては国元にも罰が及ぶのだぞォ!』

 恫喝まがいで謝罪を強要した。
 それでもハクサンに跪いたままと言う所が、彼の生真面目さを物語ってもいたが。
 しかし、動じることなく、

『知った事ではありませんわァ!』

 即答の一喝で突っぱねるは、ドロプウォート。
「なっ!?」
 おののく元老院親衛隊隊長スパイダマグ達。
 それは天世人の彼らにとって思いもしない反応であったのか、戸惑いを隠せない彼らを前に、

「私達はとうに故国と決別し、今は勇者の一行の一人にすぎませんわ! その「私達の勇者を愚弄する」は「私達を愚弄する」と同意ィ! 否、それ以上ですわァ!」

 言い切ったその眼には怒りと共に、この場で彼らを無礼討ちにする覚悟さえ浮かんでいた。
 その気迫に、
(ばっ、馬鹿な……)
 内心で焦りを覚えるスパイダマグ達。
 その理由は、単に「気迫に気圧された」ダケではない。
 真相は、
『彼女たちに、君達お得意の「天威(てんい)」は効かないよぉん♪』
「「「「「「!」」」」」」
 動揺を隠せない彼らを前に、ハクサンの口より明かされる。
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