153 / 706
第二章
2-36
しおりを挟む
二週間が経過し――
奇しくもハクサンの一言により、中世が「かりそめの平和」を取り戻した事で、女王陛下の最側近でありながらラディッシュの「専属鬼教官」と化したリブロン。
木剣片手に鬼の顔して、天法に関する基礎知識から、鍛錬方法、中世の子供が覚える初歩から「詰め込み形式」で朝から晩まで教え、教え込まれたラディッシュは、
「…………」
目の下にクマを作り、青い顔をしていた。
その間に、ターナップはニプルからフルール国直伝の回復系、癒し系の天法を学び、ドロプウォートもより強固な天法取得に向け、女王フルールが厳選した教育係の女性から指導を受ける、そんな中、ドロプウォートは何かをチラ見、
(何やら既視感を覚えますわぁ……)
憐れむ様に呟いた視線の先に居たのは、
『何故なのぉ……』
絶望に打ちひしがれた顔するリブロン。
青い顔して苦笑うラディッシュを前に、
「どぅして、こうも進歩が無い……」
彼の「天法使い」としての成長度合いは彼女のやる気に相反し、ドロプウォートが指導していた時と変わらず「カタツムリの歩み」の如き以上に、成長しているのかさえ疑わしいモノであった。
彼女のやる気はひしひしと伝わって来ていただけに、ラディッシュは「自身のザマ」に、申し訳なさげに身を縮め、
「な……なんか、ほんと、ゴメンなさい……」
憔悴したイケメンの謝罪に、
(!)
思わずキュンとするリブロン。
そして「新たなライバル誕生の可能性」の気配を、
(((ッ!)))
敏感に感じ取るドロプウォート、パストリス、ニプルウォートの女子三人。
リブロンも、毅然とした態度を貫いてはいたが、男性と関わる機会が極端に少なかったが故に、この国の他の女子たちと同様に「男性免疫」が皆無であり、そんな彼女にとっても「女性(ラミウム)が造ったラディッシュ」は、秘めた乙女心を揺さぶるに十分な容姿であった。
彼女がほんの一瞬だけ垣間見せた変化に、
「?」
ラディッシュが首を傾げると、リブロンは自身の「揺れる乙女心」にギクリとし、
(わ、私は何をゆらゆらと!)
動揺した心を立て直そうと、あえて強めの口調で、
「おっ、落ち込んでいるヒマは無いのですよ! もぅ一度初めからです!」
奮起を促し、頷くラディッシュは意識を集中、
≪天世より授かりし恩恵を以てぇ!≫
そんな二人のやり取りを、ハクサンは遠巻きに、呆れ交じりに見つめ、
(そんな教え方じゃ「今の彼」は百年経っても進歩は無いのに……)
ヤレヤレ笑いを浮かべ、
(異世界勇者としてのラディが天法を上手く扱えなかったのは、恐らくラミィが与えた正体不明の「真のスキル」のせいだろうけど……でも今の彼は、そんなの関係なしに……)
何度繰り返しても「術」さえ発動しない懸命なラディッシュの姿を目の当たりに、
「はぁ……」
小さくため息を吐き、
(男の手助けなんて、ぼくぉ主義に反するんだけどさぁ……元老院の御歴歴に気付かれる前に目覚めてもらわないと……)
おっとりがてら立ち上がると、
「キミ達は、何を「無意味」な繰り返しをしてのさぁ~」
呆れ笑いで二人に近づき、
「「無意味!」」
怒り交じりで驚くリブロンと、凹み交じりに驚くラディッシュ。
奇しくもハクサンの一言により、中世が「かりそめの平和」を取り戻した事で、女王陛下の最側近でありながらラディッシュの「専属鬼教官」と化したリブロン。
木剣片手に鬼の顔して、天法に関する基礎知識から、鍛錬方法、中世の子供が覚える初歩から「詰め込み形式」で朝から晩まで教え、教え込まれたラディッシュは、
「…………」
目の下にクマを作り、青い顔をしていた。
その間に、ターナップはニプルからフルール国直伝の回復系、癒し系の天法を学び、ドロプウォートもより強固な天法取得に向け、女王フルールが厳選した教育係の女性から指導を受ける、そんな中、ドロプウォートは何かをチラ見、
(何やら既視感を覚えますわぁ……)
憐れむ様に呟いた視線の先に居たのは、
『何故なのぉ……』
絶望に打ちひしがれた顔するリブロン。
青い顔して苦笑うラディッシュを前に、
「どぅして、こうも進歩が無い……」
彼の「天法使い」としての成長度合いは彼女のやる気に相反し、ドロプウォートが指導していた時と変わらず「カタツムリの歩み」の如き以上に、成長しているのかさえ疑わしいモノであった。
彼女のやる気はひしひしと伝わって来ていただけに、ラディッシュは「自身のザマ」に、申し訳なさげに身を縮め、
「な……なんか、ほんと、ゴメンなさい……」
憔悴したイケメンの謝罪に、
(!)
思わずキュンとするリブロン。
そして「新たなライバル誕生の可能性」の気配を、
(((ッ!)))
敏感に感じ取るドロプウォート、パストリス、ニプルウォートの女子三人。
リブロンも、毅然とした態度を貫いてはいたが、男性と関わる機会が極端に少なかったが故に、この国の他の女子たちと同様に「男性免疫」が皆無であり、そんな彼女にとっても「女性(ラミウム)が造ったラディッシュ」は、秘めた乙女心を揺さぶるに十分な容姿であった。
彼女がほんの一瞬だけ垣間見せた変化に、
「?」
ラディッシュが首を傾げると、リブロンは自身の「揺れる乙女心」にギクリとし、
(わ、私は何をゆらゆらと!)
動揺した心を立て直そうと、あえて強めの口調で、
「おっ、落ち込んでいるヒマは無いのですよ! もぅ一度初めからです!」
奮起を促し、頷くラディッシュは意識を集中、
≪天世より授かりし恩恵を以てぇ!≫
そんな二人のやり取りを、ハクサンは遠巻きに、呆れ交じりに見つめ、
(そんな教え方じゃ「今の彼」は百年経っても進歩は無いのに……)
ヤレヤレ笑いを浮かべ、
(異世界勇者としてのラディが天法を上手く扱えなかったのは、恐らくラミィが与えた正体不明の「真のスキル」のせいだろうけど……でも今の彼は、そんなの関係なしに……)
何度繰り返しても「術」さえ発動しない懸命なラディッシュの姿を目の当たりに、
「はぁ……」
小さくため息を吐き、
(男の手助けなんて、ぼくぉ主義に反するんだけどさぁ……元老院の御歴歴に気付かれる前に目覚めてもらわないと……)
おっとりがてら立ち上がると、
「キミ達は、何を「無意味」な繰り返しをしてのさぁ~」
呆れ笑いで二人に近づき、
「「無意味!」」
怒り交じりで驚くリブロンと、凹み交じりに驚くラディッシュ。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる