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第二章

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 二週間が経過し――

 奇しくもハクサンの一言により、中世が「かりそめの平和」を取り戻した事で、女王陛下の最側近でありながらラディッシュの「専属鬼教官」と化したリブロン。
 木剣片手に鬼の顔して、天法に関する基礎知識から、鍛錬方法、中世の子供が覚える初歩から「詰め込み形式」で朝から晩まで教え、教え込まれたラディッシュは、

「…………」

 目の下にクマを作り、青い顔をしていた。
 その間に、ターナップはニプルからフルール国直伝の回復系、癒し系の天法を学び、ドロプウォートもより強固な天法取得に向け、女王フルールが厳選した教育係の女性から指導を受ける、そんな中、ドロプウォートは何かをチラ見、
(何やら既視感を覚えますわぁ……)
 憐れむ様に呟いた視線の先に居たのは、

『何故なのぉ……』

 絶望に打ちひしがれた顔するリブロン。
 青い顔して苦笑うラディッシュを前に、
「どぅして、こうも進歩が無い……」
 彼の「天法使い」としての成長度合いは彼女のやる気に相反し、ドロプウォートが指導していた時と変わらず「カタツムリの歩み」の如き以上に、成長しているのかさえ疑わしいモノであった。
 彼女のやる気はひしひしと伝わって来ていただけに、ラディッシュは「自身のザマ」に、申し訳なさげに身を縮め、
「な……なんか、ほんと、ゴメンなさい……」
 憔悴したイケメンの謝罪に、
(!)
 思わずキュンとするリブロン。
 そして「新たなライバル誕生の可能性」の気配を、

(((ッ!)))

 敏感に感じ取るドロプウォート、パストリス、ニプルウォートの女子三人。

 リブロンも、毅然とした態度を貫いてはいたが、男性と関わる機会が極端に少なかったが故に、この国の他の女子たちと同様に「男性免疫」が皆無であり、そんな彼女にとっても「女性(ラミウム)が造ったラディッシュ」は、秘めた乙女心を揺さぶるに十分な容姿であった。

 彼女がほんの一瞬だけ垣間見せた変化に、
「?」
 ラディッシュが首を傾げると、リブロンは自身の「揺れる乙女心」にギクリとし、

(わ、私は何をゆらゆらと!)

 動揺した心を立て直そうと、あえて強めの口調で、
「おっ、落ち込んでいるヒマは無いのですよ! もぅ一度初めからです!」
 奮起を促し、頷くラディッシュは意識を集中、

≪天世より授かりし恩恵を以てぇ!≫

 そんな二人のやり取りを、ハクサンは遠巻きに、呆れ交じりに見つめ、
(そんな教え方じゃ「今の彼」は百年経っても進歩は無いのに……)
 ヤレヤレ笑いを浮かべ、
(異世界勇者としてのラディが天法を上手く扱えなかったのは、恐らくラミィが与えた正体不明の「真のスキル」のせいだろうけど……でも今の彼は、そんなの関係なしに……)
 何度繰り返しても「術」さえ発動しない懸命なラディッシュの姿を目の当たりに、
「はぁ……」
 小さくため息を吐き、
(男の手助けなんて、ぼくぉ主義に反するんだけどさぁ……元老院の御歴歴に気付かれる前に目覚めてもらわないと……)
 おっとりがてら立ち上がると、

「キミ達は、何を「無意味」な繰り返しをしてのさぁ~」

 呆れ笑いで二人に近づき、

「「無意味!」」

 怒り交じりで驚くリブロンと、凹み交じりに驚くラディッシュ。

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