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第二章

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 数日後――

 当初の予定より、延ばした先の村に近づくラディッシュ達。
 森の中から村を視認出来る所まで来たものの、

「「「「「「…………」」」」」」

 とある懸念から、一歩が踏み出せずにいた。
 その懸念の理由は、ただ一つ。
 
 ドロプウォートは村を遠くに見つめたまま、その「懸念の元を作った原因」に、
「貴方は、よもやあの村でも「悪さ」をしてませんわよねぇ」
 すると、未だターナップの背におぶさる「その原因(サクサン)」は、
「「悪さ」なんてぇ失礼だなぁ。そもそもぼくぁ男女の出会いを、」

『ゴタクはイイのですわぁ』

 鬼の顔して二の句を断ち切ったが、当の本人は先日見せた反省は何処へやら。
 イケメン風の笑みキラリと浮かべ、

「覚えてなぁい♪ 何故なら、自信を取り戻す為に、アチコチの村や町を、手当たり次第に見境なく回ったからね♪」

 まるで大業を成し遂げたかの様に、達成感に満ちた表情で親指を立てて見せ、

『『『『『…………』』』』』

 呆れ果て言葉が出て来ない五人。

 そんな中、原因を背負うターナップが、
「もぅ面倒くせぇから、コイツを差し出して村に入れてもらおうぜぇ」
 半分本気の口調で提言すると、
「冗談でもヤメテぇ」
 半分本気で懇願するハクサンは、ここぞとばかりに、
「ぼくぁ「百人の天世人の序列一位ハクサン」だよぉ? ぼくぁ居れば、フルールなんて審査無しの、顔パスで通れるよ? 女王の下へ直行サぁ!」
 胡散臭い話で「顔パス」の意味も分からなかったが、彼が「百人の天世人の序列一」である事は疑いようのない事実であり、
「「「「…………」」」」
 ドロプウォート、パストリス、ターナップ、ニプルの四人が困惑顔を見合わせる中、ラディッシュだけが素直な驚きを以て、
「ハクさんって、フルール国の女王様とお知り合いなのぉ!?」
「ふふぅん♪ まぁねぇ♪」
 ターナップに背負われた格好のまま、自慢げな顔をするハクサン。

 一国の女王と知り合いなどと、普通に考えれば「眉唾物の話」ではあるが、彼の肩書は一応本物であり、ドロプウォートは迷った末、
「ニプル、今の話は本当ですの?」
 しかし近衛のニプルは、
「こ、公式として発表されていない話をウチに聞くな」
 女王に近い立場上ゆえに、暗に、女王の私的な事を口外にする訳にはいかず「イエスともノーとも言えない」と言ったつもりであったが、

「「「「「…………」」」」」

 バツが悪そうな顔して視線を逸らすドロプウォート達。
 彼女が城下で「よそ者扱い」を受けている話を思い出し。

 ニプルは、その反応から意味を即座にキャッチ。

『ご、誤解だぁ!「可哀そうな人」みたいな顔すんなぁ!』

 憤慨し、
「立場上、言えないダケだぁ! 陛下の名誉に関わるしなぁ!」

「それってヒドくなぁい?!」

 ハクサンがすかさず不満の声を上げ、
「ぼくぅと関わった女性がみんな不幸に、」
 口にしかけた弁明を、
「…………」
 物言いたげなジト目で黙らるニプル。
 
 チリチリと、怒りを感じる眼差しで、
「思い当たるフシが無いとでも?」
「…………」
 スッと、視線を逸らすハクサン。
 
 そんな彼の姿に、
 
((((女王様を相手に、何をやらかしたんだこの人は……))))

 フルール入国に際し、一抹の不安を抱く、ラディッシュ、ドロプウォート、パストリス、ターナップの四人であった。
 
 結局、目視できる距離まで近づいた村ではあったが、余計な迷惑を掛ける可能性(被害女性が加害者に変わる)を考慮し、狩りや採取を続ける事で「食料などのめど」がついたのもあり、入村を諦め、森をそのまま進んでフルール国に向かう事にした。
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