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第二章

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 惑いの一夜が明けた早朝――

 恒例となっている全員集まっての朝食で、教会のダイニングテーブルを囲む、少年少女たち。
 さぞかし「気マズイ食事の時間」を迎えていると思いきや、
「「「「「…………」」」」」
 みな一様に迷惑顔。
 その理由は、
 
『グッ、モーニン! みんなぁ! ぼくぁ帰って来たよぉ!』

 残念イケメン占い師。
 他人の心の機微など気にする素振りも見せず、

「今日も「キャワイイ女子」たちとの、ラブな一日の始っまりだよぉーーー!」

 朝からハイテンションな満面の笑顔に、
「ったく、ウルセェのが戻って来やがったぁ」
 ターナップはあからさまな、露骨な不機嫌顔。
 言っている言葉の意味は分からなかったが「ウザイ事」だけは十分伝わり、追い払う仕草を見せると、ニプルが慌てた素振りで、
 
「たっ!」

 彼に苦言めいた何かを言おうとしたが、笑顔全開の占い師をチラリと見るなり、
「…………」
 口にしかけた言葉を飲み込んだ。
「ん?」
 呼ばれた気がして振り向くターナップ。
 
 しかし、気マズイそうに視線を逸らす彼女に、
「???」
 首を傾げると、
 
『う、占い師さぁん!』

 ラディッシュが意を決して立ち上がり、
 
「僕! ドロプさんから一本取ったんだよ! その後も何回かに一回は一本を取れる様になって! だから約束通りラミィについて!」

 まるで不在であった期間を責めるかのように、急いて問うた一方で、
 
(あぁ……そう言う事でしたの……あの異様な頑張りはラミィ絡み……)

 ドロプウォートは顔にこそ出さず、心の内でショックを受けていた。
 ラディッシュが落ち込んでいたあの時、自身が何日かけても、手を変え、品を変えても、彼に笑顔の一つも取り戻せなかったと言うのに、彼が笑顔を取り戻したきっかけが「ラミウムの話題一つ」であった事実に。
 
 彼女の内なる苦悩を察し、
((ドロプ……))
 同情を禁じ得ないパストリスとニプル。
 
 しかし、待ちわびた「占い師の男の再登場」により、彼女の寂しさに気付く余裕のないラディッシュは、
 
「それでラミィは! ラミィが!」

 答えを急くと、
 
『ハイハァーイ! ストップッ! ストォオォォォォォオオォオォップゥ!』

 男はそれを手で制し、
「ぼかぁ、一回勝った位で情報を教えるなんて「安売り話」は、一っ言も言ってないよぉ?」

「え?! でも、あっ!」

 話も聞かずに突っ走ったのを思い出し、
(たっ、確かに……)
 ぐうの音も出なかったが、ラミウムに関する「何かしらの情報」が得られそうな状況を前に、黙って引き下がる訳にはいかず、

「それなら!」

 食い下がろうとすると、
 
『あと三つ』

「へ?」

「ぼくぉ提示する条件を「あと三つクリア」してくれたら、ぼくぉ持ってる情報を教えてあげるよぉ♪」

 クリアの「言葉」は分からなかったが、言わんとしている「意味」は通じ、
「…………」
(あと三つって……もしかして僕、からかわれてるのかなぁ?)
 疑いが自然と首をもたげたが、残念イケメン占い師は「その思い」を見透かし、
「これは「キミの為」でもあるんだからねぇ」

「僕の為?」

「男に手を貸すなんてぇ、ぼくぅの「本来の主義」に反するんだけどねぇ~」
 アイドル風に前髪をサラッとたなびかせ、
 
「遅かれ早かれ、キミは地世のチカラの浸食を受け始める。それを防ぐ為のクエストなのさぁ♪」

 すると苛立ちが臨界を迎えたターナップが、
 
『いい加減な事を言ってんじゃねぇぞ、ヤサ男ぉ!』

 話に割って入り、
「異世界勇者のラディの兄貴が「地世の侵蝕」なんて受ける筈がねぇだろぉが!」
「はぁ~これだから嫌だねぇ~脳筋はぁ~」
「んだとぉ!」
 逆上に、男はヤレヤレ笑いで、
 
「彼は、もう勇者じゃないのさぁ」

『『『『『!』』』』』

 三者三様ならぬ、五者五様の反応を見せる五人。
 
 そんな彼ら、彼女らに、追い打ちをかけるが如くに、
「彼の体は徐々に、天世、いやぁ「百人の天世人」に近づきつつあるのさぁ♪」
「ばっ、馬鹿なこと言ってんじゃねぇぞ!」
 ターナップが激昂する中、
「「…………」」
 反論も、同意もしないドロプウォートとニプルウォート。

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