112 / 706
1-112
しおりを挟む
呆気にとられる四大夫妻と、エルブの兵たち。
そんな彼らを前に、
『私はァ逃げたりしませんでぇすわァ!』
大見得切ったのはドロプウォート。
ラディッシュから託された日本刀をその手に、
「私は四大貴族オエナンサ家が一子ドロプウォートォ! 国の危機に背を向けぇ逃げたりなど致しませんでぇすわァアァ!」
『『『『『『『『『『ッ!!!』』』』』』』』』』
絶対を前に下がりかけた兵たちの士気は否応なく高まり、すかさず総師団長アスパーは、
『賢者隊による天法一斉攻撃開始ぃいぃーーーーーーッ!』
剣を振りかざすと、それを合図に、後陣で騎士、兵士たちに守られ詠唱を続けていた白ローブの一団が錫杖を一斉に振り鳴らし、空へと高々突き上げた。
「仲間に当てるでないぞォーーーッ!」
賢者隊に聞こえる筈も無い総師団長アスパーの雄叫びは、前線で共に戦う騎士、兵たちに対する鼓舞。
彼の魂の叫びと共に、天から白き炎で燃え盛る黒狼目掛け、無数の火球が雨の様に降り注いだ。
黒炎に阻まれた矢とは違い、次々躯体に着弾して爆発炎上、外れた火球も足元で激しく炸裂し、幾つもの火柱と砂煙を激しく巻き上げた。
その様を、人狼、サイクロプス達と未だ死闘を演じながら目にした各所の騎士、兵士たちは、懸命に武器を振るいながらも、
「「「「「「「「「「うおぉぉおぉおぉぉぉおぉーーーーーーッ!」」」」」」」」」」
既に勝利したかのような叫びを上げ、総師団長アスパーは疲労の色が濃厚な兵たちを更に鼓舞する様に、
『後は「でくの坊(サイクロプス)」どもだけだァーーーーーー!』
残るは「余裕で勝てる相手ダケ」であるかのように誇張した声を上げ、疲労困憊の兵たちも、それが誇張であると理解しつつ、己を奮い立たせようと、
「「「「「「「「「「オォーーーーーーーーーッ!」」」」」」」」」」
喊声を上げた。
しかし、もぅもぅと立ち込める爆煙と砂塵、燃え盛る白き火柱の中から、
≪ガァルアァラァ! ったく、ぎゃあぎゃあとぉウルセェんだよォ!≫
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
苛立ちの声が上がり、歓喜に沸いていた兵たちがハッとしたのも束の間、
ボォファァアァァァアアァァァ!
火柱の中から青白きブレスが周囲に吐き撒かれ、
「「「「「「「「「「うわぁあぁぁぁっぁあぁぁ!」」」」」」」」」」
再び多くの騎士、兵士が燃やされると、黒狼パトリニアは全身に纏わる白と赤の炎を、纏う黒き炎で焼き尽くし、
≪ガァルゥア! 甘く見てんじゃねぇぞォ!≫
無傷の姿を露わにした。
「そ、そんな……」
ピークを超えた疲労と、数え切れないほどの仲間の死、そして倒しても倒しても終わりの見えない戦いに、
「ば、バケモノ……」
上がった筈の士気は、一瞬にして勢いを失い、
「クソォ! 負けるものかぁ!」
口先で叫んで剣を振りかざしてみても、折れた心は誤魔化せない。
屈強な人狼とサイクロプスたちを前に、闇雲に剣を振るう騎士、兵士たちは、次第に餌食と化していった。
戦いは黒狼パトリニアが王手、チェックメイト。
棒立ちに等しく、ただ身構えるだけの騎士、兵たちを悠然と薙ぎ払いながら、
≪ガルゥァ。親共々終わりだなぁ先祖返りぃ≫
ゆったり歩みを進め、さしもの両親も焦りの色を隠せずにいると、
『私たちは! まだ負けた訳ではありませんわァ!』
ドロプウォートが気勢を纏った声を張り上げ、
≪天世より授かりし恩恵を以て、我が眼前の敵を打ち滅ぼさぁん!≫
その身を白銀の輝きに包み、気合の入った表情で剣を構えた。
すると、
『よく言ったドロプゥ!!!』
悲愴感漂う戦場に響き渡る、聞き覚えのある女性の声。
「「「「「「「「「「ッ!」」」」」」」」」」
ドロプウォートが、両親が、アスパーが、全てのエルブの兵が絶望の中で、希望の光を見つけた笑顔で振り返り、
≪ガルァ!≫
黒狼パトリニアが咄嗟に大きく飛び退くと同時、
ボォドガァアァァァアァァァァッ!
立っていた地面が爆裂したかの様な大炸裂。
激しい土煙が舞い上がる中、強烈な白き輝きを放つ一つの塊が。
黒狼パトリニアは、その光を腹立たし気に睨み、
≪ガルラァ! ったく、ついに来やがったカァ!≫
咆哮すると、
『いい加減におしぃなぁやパトリニアァアァ!』
説教する様な声が上がり、土煙を右手一閃で消し飛ばして姿を現したのは、白き輝きにその身を包むラミウム。
立つ事さえままならなかった筈の彼女が、明王の如き憤怒の形相で荒ぶり、黒狼の前に凛然と立ちはだかったのである。
威風堂々たるその雄姿に、
「ラミウム様だ……」
消沈していた戦場は、にわかにザワつき始め、
『『『『『『『『『『うおぉーーー! ラミウム様だぁあぁぁぁぁあぁあぁぁ!』』』』』』』』』』
瞬く間に爆発的な大歓声に。
戦意を取り戻した騎士、兵士たちは、
「「「「「「「「「「正義は我らにありィーーーッ!」」」」」」」」」」
残る人狼とサイクロプス達を相手に、炎の灯った両目で立ち向かって行った。
そんな彼らを前に、
『私はァ逃げたりしませんでぇすわァ!』
大見得切ったのはドロプウォート。
ラディッシュから託された日本刀をその手に、
「私は四大貴族オエナンサ家が一子ドロプウォートォ! 国の危機に背を向けぇ逃げたりなど致しませんでぇすわァアァ!」
『『『『『『『『『『ッ!!!』』』』』』』』』』
絶対を前に下がりかけた兵たちの士気は否応なく高まり、すかさず総師団長アスパーは、
『賢者隊による天法一斉攻撃開始ぃいぃーーーーーーッ!』
剣を振りかざすと、それを合図に、後陣で騎士、兵士たちに守られ詠唱を続けていた白ローブの一団が錫杖を一斉に振り鳴らし、空へと高々突き上げた。
「仲間に当てるでないぞォーーーッ!」
賢者隊に聞こえる筈も無い総師団長アスパーの雄叫びは、前線で共に戦う騎士、兵たちに対する鼓舞。
彼の魂の叫びと共に、天から白き炎で燃え盛る黒狼目掛け、無数の火球が雨の様に降り注いだ。
黒炎に阻まれた矢とは違い、次々躯体に着弾して爆発炎上、外れた火球も足元で激しく炸裂し、幾つもの火柱と砂煙を激しく巻き上げた。
その様を、人狼、サイクロプス達と未だ死闘を演じながら目にした各所の騎士、兵士たちは、懸命に武器を振るいながらも、
「「「「「「「「「「うおぉぉおぉおぉぉぉおぉーーーーーーッ!」」」」」」」」」」
既に勝利したかのような叫びを上げ、総師団長アスパーは疲労の色が濃厚な兵たちを更に鼓舞する様に、
『後は「でくの坊(サイクロプス)」どもだけだァーーーーーー!』
残るは「余裕で勝てる相手ダケ」であるかのように誇張した声を上げ、疲労困憊の兵たちも、それが誇張であると理解しつつ、己を奮い立たせようと、
「「「「「「「「「「オォーーーーーーーーーッ!」」」」」」」」」」
喊声を上げた。
しかし、もぅもぅと立ち込める爆煙と砂塵、燃え盛る白き火柱の中から、
≪ガァルアァラァ! ったく、ぎゃあぎゃあとぉウルセェんだよォ!≫
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
苛立ちの声が上がり、歓喜に沸いていた兵たちがハッとしたのも束の間、
ボォファァアァァァアアァァァ!
火柱の中から青白きブレスが周囲に吐き撒かれ、
「「「「「「「「「「うわぁあぁぁぁっぁあぁぁ!」」」」」」」」」」
再び多くの騎士、兵士が燃やされると、黒狼パトリニアは全身に纏わる白と赤の炎を、纏う黒き炎で焼き尽くし、
≪ガァルゥア! 甘く見てんじゃねぇぞォ!≫
無傷の姿を露わにした。
「そ、そんな……」
ピークを超えた疲労と、数え切れないほどの仲間の死、そして倒しても倒しても終わりの見えない戦いに、
「ば、バケモノ……」
上がった筈の士気は、一瞬にして勢いを失い、
「クソォ! 負けるものかぁ!」
口先で叫んで剣を振りかざしてみても、折れた心は誤魔化せない。
屈強な人狼とサイクロプスたちを前に、闇雲に剣を振るう騎士、兵士たちは、次第に餌食と化していった。
戦いは黒狼パトリニアが王手、チェックメイト。
棒立ちに等しく、ただ身構えるだけの騎士、兵たちを悠然と薙ぎ払いながら、
≪ガルゥァ。親共々終わりだなぁ先祖返りぃ≫
ゆったり歩みを進め、さしもの両親も焦りの色を隠せずにいると、
『私たちは! まだ負けた訳ではありませんわァ!』
ドロプウォートが気勢を纏った声を張り上げ、
≪天世より授かりし恩恵を以て、我が眼前の敵を打ち滅ぼさぁん!≫
その身を白銀の輝きに包み、気合の入った表情で剣を構えた。
すると、
『よく言ったドロプゥ!!!』
悲愴感漂う戦場に響き渡る、聞き覚えのある女性の声。
「「「「「「「「「「ッ!」」」」」」」」」」
ドロプウォートが、両親が、アスパーが、全てのエルブの兵が絶望の中で、希望の光を見つけた笑顔で振り返り、
≪ガルァ!≫
黒狼パトリニアが咄嗟に大きく飛び退くと同時、
ボォドガァアァァァアァァァァッ!
立っていた地面が爆裂したかの様な大炸裂。
激しい土煙が舞い上がる中、強烈な白き輝きを放つ一つの塊が。
黒狼パトリニアは、その光を腹立たし気に睨み、
≪ガルラァ! ったく、ついに来やがったカァ!≫
咆哮すると、
『いい加減におしぃなぁやパトリニアァアァ!』
説教する様な声が上がり、土煙を右手一閃で消し飛ばして姿を現したのは、白き輝きにその身を包むラミウム。
立つ事さえままならなかった筈の彼女が、明王の如き憤怒の形相で荒ぶり、黒狼の前に凛然と立ちはだかったのである。
威風堂々たるその雄姿に、
「ラミウム様だ……」
消沈していた戦場は、にわかにザワつき始め、
『『『『『『『『『『うおぉーーー! ラミウム様だぁあぁぁぁぁあぁあぁぁ!』』』』』』』』』』
瞬く間に爆発的な大歓声に。
戦意を取り戻した騎士、兵士たちは、
「「「「「「「「「「正義は我らにありィーーーッ!」」」」」」」」」」
残る人狼とサイクロプス達を相手に、炎の灯った両目で立ち向かって行った。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~
udonlevel2
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。
それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。
唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。
だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。
――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。
しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。
自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。
飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。
その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。
無断朗読・無断使用・無断転載禁止。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる