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地上では――
「距離を置いて取り囲み、動きを良くて、複数方向から波状的に攻撃するのだァーーー!」
「「「「「「「「「「おぉーーーーーーーーー!」」」」」」」」」」
エルブの兵たちは血と泥にまみれ、疲弊しながらも人狼を相手に善戦し、頭数を減らしていったが、
「クソォ! コイツ等は、どうしたらイイんだァ!」
サイクロプスを相手にしていた騎士、兵たちは苦戦を強いられていた。
巨体に見合わない素早い動きに加え、近づこうにも「こん棒の一振り」で数十人の兵が殴り飛ばされる怪力。
しかも強靭な肉体は「運動エネルギー」が上乗せされた弓による遠距離集中攻撃を物ともせず、鉄板の様な皮膚は「天法で強化された矢じり」を全く通さない。
城に少しでも近づかせないよう、隙を見て打ち込む剣撃で気を引き、足止めをするので精一杯であった。
せめてもの幸運は、それだけの強力なモンスターを出現させるには「多量の素材(人狼とエルブ兵)」が必要なようで、戦況が不利にならない程度にしか出現させられずに済んだ事であろうか。
戦場のアチコチで好き勝手に棍棒を振り回すサイクロプスを、
「それにしても困りましたねぇ~」
「困りましたわねぁ~」
あまり困っているように聞こえない口調で見つめる男女は、ドロプウォートの両親。
泥にまみれた甲冑姿で切っ先をサイクロプスに向け構え、打開策を見出せない手詰まり感に、一応悩んでいると、何処からともなく、
『私が動きを封じますので攻撃をォ!』
「「!」」
聞き覚えのある女性の声が。
二人が、その「頼もしい声」に感動する間もなく、
≪天世より授かりし恩恵を以て、我が眼前の敵を打ち滅ぼさぁん!≫
声の主が放った白銀の光が戦場に一閃するや、
『ゴォガァアァァーーーーーーッ!』
サイクロプスは両足を切断され、土煙を上げて巨体を横倒しに、すかさずドロプウォートの父親は、
「皆さぁん! 今でぇーーーすッ!」
「「「「「「「「「「オォーーーーーーーーー!」」」」」」」」」」
エルブの兵たちは一斉に群がり剣を闇雲に突き立て、さしものサイクロプスもその活動を停止した。
すると、サイクロプスの両足を一閃の下に斬り落とした何者かが、
『このまま全てを打ち払い! エルブに平和を取り戻しましょうですわぁーーーーーー!』
剣を天に振りかざした金髪甲冑少女は、ドロプウォート。
その勇ましい姿は、世界に安寧をもたらしたと言う「伝説の英雄」その物。
あれほど彼女を忌み嫌っていた兵たちも、その立ち姿に、気勢に、戦乙女の姿を見て、心を激しく揺さ振られ、
「「「「「「「「「「ウォーーーーーー! ドロプウォートォ様ァーーーーーーッ!」」」」」」」」」」
勝どきを上げ、次なる戦場へ向かうドロプウォートの背に、
「ドロプウォート様に続けぇーーーーーーーーー!」
「「「「「「「「「「オォーーーーーーーーーッ!」」」」」」」」」」
一斉に走り出した。
愛娘を「場違いな先祖返り」ではなく、「一人の騎士」として認めた一団を、死地にそぐわぬ穏やかな笑顔で、微笑ましく見送るドロプウォートの両親。
「外の世界を経験して、彼女は見違えるほどの成長をしたようですね」
「うふふ。その様ですわね」
我が子の知らぬ間の成長に目を細め、
「私たちも行こうかねぇ?」
「そうですわねぇ」
緊張感の無い笑みを浮かべた二人も後に続いた。
ドロプウォートの奮闘を遠くから眺めるラディッシュ――
自身が無力であるのは百も承知していたが、
(僕は勇者なのに……こんな所で何をしてるんだ……)
悔しさを感じずにはいられなかった。「守りたい」と思える人達が居るが故に。
それは、パストリスも同じで、
(もっとボクにチカラがあれば……)
親友の傍らに立つ事が出来ない自身の脆弱さに、打ちひしがれていた。
とは言え、彼女に不足していたのは「チカラ」ではなく、「自信」だけ。
ドロプウォートと互角のチカラを内に秘めてはいたが、自分を過小評価するあまり「足手まといなら出ない方がまし」とまで考え、 この場に留まる選択をしていたのであった。
無論「チカラの暴走を恐れて」との理由もあったが。
すると、二人の悩める胸の内を察してか、
『その悔しさを、いつまでも忘れんじゃないさぁねぇ』
ラミウムは小さく笑い、
「強くおなりぃなぁや、二人とも」
単なる気遣いではなく、二人の成長を願った優しい音色に、
(こんな僕でも誰かを守れるくらい強くなれる、のかなぁ……)
(食べて寝てるだけのボクが、人の役に立てるようになれるでぇすぅ……)
気弱な二人が自身の成長を疑い、暗い顔をすると、
「何てぇ顔をしてるのさぁ~ねぇ」
一笑に付し、
「アンタ等ぁアタシが見込んだ「勇者」と「武闘家」さぁねぇ。気持ちより先に、心が負けんじゃないよ。心を強く持って運命すら変えてみなぁや!」
「「!」」
叱咤激励に、二人は曇りの晴れ間から陽が差したような思いで、
「うん!」
「ハイでぇす!」
憂いない返事を返し、光の灯った両眼に変わった二人は「守る為の戦」に身を投じる盟友の姿を、食い入る様に見つめた。
「距離を置いて取り囲み、動きを良くて、複数方向から波状的に攻撃するのだァーーー!」
「「「「「「「「「「おぉーーーーーーーーー!」」」」」」」」」」
エルブの兵たちは血と泥にまみれ、疲弊しながらも人狼を相手に善戦し、頭数を減らしていったが、
「クソォ! コイツ等は、どうしたらイイんだァ!」
サイクロプスを相手にしていた騎士、兵たちは苦戦を強いられていた。
巨体に見合わない素早い動きに加え、近づこうにも「こん棒の一振り」で数十人の兵が殴り飛ばされる怪力。
しかも強靭な肉体は「運動エネルギー」が上乗せされた弓による遠距離集中攻撃を物ともせず、鉄板の様な皮膚は「天法で強化された矢じり」を全く通さない。
城に少しでも近づかせないよう、隙を見て打ち込む剣撃で気を引き、足止めをするので精一杯であった。
せめてもの幸運は、それだけの強力なモンスターを出現させるには「多量の素材(人狼とエルブ兵)」が必要なようで、戦況が不利にならない程度にしか出現させられずに済んだ事であろうか。
戦場のアチコチで好き勝手に棍棒を振り回すサイクロプスを、
「それにしても困りましたねぇ~」
「困りましたわねぁ~」
あまり困っているように聞こえない口調で見つめる男女は、ドロプウォートの両親。
泥にまみれた甲冑姿で切っ先をサイクロプスに向け構え、打開策を見出せない手詰まり感に、一応悩んでいると、何処からともなく、
『私が動きを封じますので攻撃をォ!』
「「!」」
聞き覚えのある女性の声が。
二人が、その「頼もしい声」に感動する間もなく、
≪天世より授かりし恩恵を以て、我が眼前の敵を打ち滅ぼさぁん!≫
声の主が放った白銀の光が戦場に一閃するや、
『ゴォガァアァァーーーーーーッ!』
サイクロプスは両足を切断され、土煙を上げて巨体を横倒しに、すかさずドロプウォートの父親は、
「皆さぁん! 今でぇーーーすッ!」
「「「「「「「「「「オォーーーーーーーーー!」」」」」」」」」」
エルブの兵たちは一斉に群がり剣を闇雲に突き立て、さしものサイクロプスもその活動を停止した。
すると、サイクロプスの両足を一閃の下に斬り落とした何者かが、
『このまま全てを打ち払い! エルブに平和を取り戻しましょうですわぁーーーーーー!』
剣を天に振りかざした金髪甲冑少女は、ドロプウォート。
その勇ましい姿は、世界に安寧をもたらしたと言う「伝説の英雄」その物。
あれほど彼女を忌み嫌っていた兵たちも、その立ち姿に、気勢に、戦乙女の姿を見て、心を激しく揺さ振られ、
「「「「「「「「「「ウォーーーーーー! ドロプウォートォ様ァーーーーーーッ!」」」」」」」」」」
勝どきを上げ、次なる戦場へ向かうドロプウォートの背に、
「ドロプウォート様に続けぇーーーーーーーーー!」
「「「「「「「「「「オォーーーーーーーーーッ!」」」」」」」」」」
一斉に走り出した。
愛娘を「場違いな先祖返り」ではなく、「一人の騎士」として認めた一団を、死地にそぐわぬ穏やかな笑顔で、微笑ましく見送るドロプウォートの両親。
「外の世界を経験して、彼女は見違えるほどの成長をしたようですね」
「うふふ。その様ですわね」
我が子の知らぬ間の成長に目を細め、
「私たちも行こうかねぇ?」
「そうですわねぇ」
緊張感の無い笑みを浮かべた二人も後に続いた。
ドロプウォートの奮闘を遠くから眺めるラディッシュ――
自身が無力であるのは百も承知していたが、
(僕は勇者なのに……こんな所で何をしてるんだ……)
悔しさを感じずにはいられなかった。「守りたい」と思える人達が居るが故に。
それは、パストリスも同じで、
(もっとボクにチカラがあれば……)
親友の傍らに立つ事が出来ない自身の脆弱さに、打ちひしがれていた。
とは言え、彼女に不足していたのは「チカラ」ではなく、「自信」だけ。
ドロプウォートと互角のチカラを内に秘めてはいたが、自分を過小評価するあまり「足手まといなら出ない方がまし」とまで考え、 この場に留まる選択をしていたのであった。
無論「チカラの暴走を恐れて」との理由もあったが。
すると、二人の悩める胸の内を察してか、
『その悔しさを、いつまでも忘れんじゃないさぁねぇ』
ラミウムは小さく笑い、
「強くおなりぃなぁや、二人とも」
単なる気遣いではなく、二人の成長を願った優しい音色に、
(こんな僕でも誰かを守れるくらい強くなれる、のかなぁ……)
(食べて寝てるだけのボクが、人の役に立てるようになれるでぇすぅ……)
気弱な二人が自身の成長を疑い、暗い顔をすると、
「何てぇ顔をしてるのさぁ~ねぇ」
一笑に付し、
「アンタ等ぁアタシが見込んだ「勇者」と「武闘家」さぁねぇ。気持ちより先に、心が負けんじゃないよ。心を強く持って運命すら変えてみなぁや!」
「「!」」
叱咤激励に、二人は曇りの晴れ間から陽が差したような思いで、
「うん!」
「ハイでぇす!」
憂いない返事を返し、光の灯った両眼に変わった二人は「守る為の戦」に身を投じる盟友の姿を、食い入る様に見つめた。
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