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真っ青な顔して、
(たっ、確かに最近、ラディの食事が美味し過ぎてぇ、些か(大分)食べ過ぎの感はありましたがぁ?!)
実は座り切れていなかった。
座面に尻が当たる寸前までは来ていたものの、あと少し。
左右の側面板に尻が挟まり、着席までに至っていなかったのである。
(そっ、そんな事ありませんでぇすわぁ! きっと、装備か何かが引っ掛かっているだけでぇ!)
それこそフラグ。
尻にチカラを入れた途端、
バカァーーーン!
確かな職人の手による「匠の技」と、「天法」で強化された堅牢な椅子車は、まるで斧で薪を割ったかのように、いとも容易く左右の側板が外れ、ドロプウォートは勢いそのまま残骸の上に尻餅をつき、
「…………」
「「「「「「「…………」」」」」」」
誰も、何も言わない。
気マズイ静寂の時間。
はたから見れば、ドロプウォートの「魅惑的な尻の一撃」が、職人の天法をも打ち破った様にしか見えないが、高い戦闘力を生まれながらに持つ四大貴族が一子であり、先祖返りでもある、類い稀な「天法の才」を持つ彼女は常に空気を纏うが如く、その身を天法で包んでいて、起きた事象を正確に表現するならば、
≪職人が施した「強化の天法」と、「ドロプウォートが自然に纏う天法」とがチカラ比べをして、負けたが故に椅子車が壊れた≫
なのであるが、職人の男はドロプウォートのその様な体質など知る由も無い、一般人である。
「なぁ~んとぉ流石は四大様じゃ! 無垢なる尻の一撃で、ワシの「強化の天法」を破りなさるとはぁ!」
感嘆の声を上げ、
「職人としてぇワシも「まだまだ精進せねば」じゃわぁい!」
感服至極に深く頷いたが、後に「この逸話」は国中に広まる事となる。
話に過剰な尾ヒレが付与されて。
憐れな残骸と化した椅子車を尻の下に、
「…………」
ただただ、放心するドロプウォート。
その悲哀に満ちた姿に、煽り立てたラミウムでさえ、からかう事も出来ず、掛ける言葉さえ見つけられず、
(や、やり過ぎた……かねぇ……)
困り果てた末にラディッシュの肩をツンツン。
「?」
振り返った顔に、
(何とかおし!)
強要のアイコンタクト。
(えっ?! えぇえぇぇ~~~!?)
露骨に躊躇うラディッシュ。
当然である。
何を、どう考えても、火中の栗でしかないのだから。
とは言え落ち込みから放心する仲間を、いつまでも放置しておく気にはなれず、
(な、何とか励ましてあげなくちゃ!)
脳内を高速回転。
考えに考え、引きつり笑顔で捻り出した言葉は、
「だっ、大丈夫だよぉ、ドロプさぁん。よ、よくある事だよぉお♪」
何の根拠も無い、中身のうっすいフォローに留まり、これにはラミウムも呆れ顔して頭を抱えると、うつむき加減のドロプウォートがポツリと、
「お尻の「大きさのみ」を以て天法を打ち破るコトが……「よくある事」ですの……」
「はぁう!」
ラディッシュ、あえなく撃沈。
(使えないさぁねぇ、まったくぅ!)
目の前の後頭部を軽く叩くと、
(次はパストぉ!)
視線を飛ばし、
(ひっ、ひぃう!)
指名されたパストリスも動揺を隠せずにいたが、彼女もまたラディッシュと同様に、心の距離を縮めたドロプウォートを落ち込んだままにしておけず、
(ぼっ、ボクがドロプを元気づけてぇあげるんでぇすぅ!)
腹を括りながらも、顔は努めて自然な笑顔のつもりで、
「きっ、きっと仮り組み状態だったんでぇす! だから簡単に壊れて、」
「完成品の試乗でしたのに……」
「ほぁうぅ!」
二人目も、いとも容易く返り討ち。
すると頼まれてもいないのに、ターナップが真打登場と言わんばかりの満面の笑顔で、
『安産型で結構な事じゃないっスかぁ、ねぇドロプの姉さぁん!』
「「「「「「!!!」」」」」」
ギョッとするラディッシュたち(※弟子だけチョット嬉しそうに)。
今、一番言ってはいけないワードを平然と口にしたターナップに、
((((((この男はぁあぁぁああぁぁぁ!))))))
心の中で激しくツッコミ(※弟子だけ笑顔で)を入れた途端、ドロプウォートが「羞恥の赤面顔」を両手で覆い隠し、
『(大きくて)ゴメンなさぁいですわぁあぁぁぁあっぁああぁ~~~~~~~~~~~~!』
一目散で逃げ去って行ってしまった。
「おりぃ?」
首を傾げるターナップ。
本人的には、よほどの予想外であったのか、
「褒めたつもり……だったんスけどぉ……?」
戸惑いを見せ、そんな彼に苦笑するしかないラディッシュたちであった。
(たっ、確かに最近、ラディの食事が美味し過ぎてぇ、些か(大分)食べ過ぎの感はありましたがぁ?!)
実は座り切れていなかった。
座面に尻が当たる寸前までは来ていたものの、あと少し。
左右の側面板に尻が挟まり、着席までに至っていなかったのである。
(そっ、そんな事ありませんでぇすわぁ! きっと、装備か何かが引っ掛かっているだけでぇ!)
それこそフラグ。
尻にチカラを入れた途端、
バカァーーーン!
確かな職人の手による「匠の技」と、「天法」で強化された堅牢な椅子車は、まるで斧で薪を割ったかのように、いとも容易く左右の側板が外れ、ドロプウォートは勢いそのまま残骸の上に尻餅をつき、
「…………」
「「「「「「「…………」」」」」」」
誰も、何も言わない。
気マズイ静寂の時間。
はたから見れば、ドロプウォートの「魅惑的な尻の一撃」が、職人の天法をも打ち破った様にしか見えないが、高い戦闘力を生まれながらに持つ四大貴族が一子であり、先祖返りでもある、類い稀な「天法の才」を持つ彼女は常に空気を纏うが如く、その身を天法で包んでいて、起きた事象を正確に表現するならば、
≪職人が施した「強化の天法」と、「ドロプウォートが自然に纏う天法」とがチカラ比べをして、負けたが故に椅子車が壊れた≫
なのであるが、職人の男はドロプウォートのその様な体質など知る由も無い、一般人である。
「なぁ~んとぉ流石は四大様じゃ! 無垢なる尻の一撃で、ワシの「強化の天法」を破りなさるとはぁ!」
感嘆の声を上げ、
「職人としてぇワシも「まだまだ精進せねば」じゃわぁい!」
感服至極に深く頷いたが、後に「この逸話」は国中に広まる事となる。
話に過剰な尾ヒレが付与されて。
憐れな残骸と化した椅子車を尻の下に、
「…………」
ただただ、放心するドロプウォート。
その悲哀に満ちた姿に、煽り立てたラミウムでさえ、からかう事も出来ず、掛ける言葉さえ見つけられず、
(や、やり過ぎた……かねぇ……)
困り果てた末にラディッシュの肩をツンツン。
「?」
振り返った顔に、
(何とかおし!)
強要のアイコンタクト。
(えっ?! えぇえぇぇ~~~!?)
露骨に躊躇うラディッシュ。
当然である。
何を、どう考えても、火中の栗でしかないのだから。
とは言え落ち込みから放心する仲間を、いつまでも放置しておく気にはなれず、
(な、何とか励ましてあげなくちゃ!)
脳内を高速回転。
考えに考え、引きつり笑顔で捻り出した言葉は、
「だっ、大丈夫だよぉ、ドロプさぁん。よ、よくある事だよぉお♪」
何の根拠も無い、中身のうっすいフォローに留まり、これにはラミウムも呆れ顔して頭を抱えると、うつむき加減のドロプウォートがポツリと、
「お尻の「大きさのみ」を以て天法を打ち破るコトが……「よくある事」ですの……」
「はぁう!」
ラディッシュ、あえなく撃沈。
(使えないさぁねぇ、まったくぅ!)
目の前の後頭部を軽く叩くと、
(次はパストぉ!)
視線を飛ばし、
(ひっ、ひぃう!)
指名されたパストリスも動揺を隠せずにいたが、彼女もまたラディッシュと同様に、心の距離を縮めたドロプウォートを落ち込んだままにしておけず、
(ぼっ、ボクがドロプを元気づけてぇあげるんでぇすぅ!)
腹を括りながらも、顔は努めて自然な笑顔のつもりで、
「きっ、きっと仮り組み状態だったんでぇす! だから簡単に壊れて、」
「完成品の試乗でしたのに……」
「ほぁうぅ!」
二人目も、いとも容易く返り討ち。
すると頼まれてもいないのに、ターナップが真打登場と言わんばかりの満面の笑顔で、
『安産型で結構な事じゃないっスかぁ、ねぇドロプの姉さぁん!』
「「「「「「!!!」」」」」」
ギョッとするラディッシュたち(※弟子だけチョット嬉しそうに)。
今、一番言ってはいけないワードを平然と口にしたターナップに、
((((((この男はぁあぁぁああぁぁぁ!))))))
心の中で激しくツッコミ(※弟子だけ笑顔で)を入れた途端、ドロプウォートが「羞恥の赤面顔」を両手で覆い隠し、
『(大きくて)ゴメンなさぁいですわぁあぁぁぁあっぁああぁ~~~~~~~~~~~~!』
一目散で逃げ去って行ってしまった。
「おりぃ?」
首を傾げるターナップ。
本人的には、よほどの予想外であったのか、
「褒めたつもり……だったんスけどぉ……?」
戸惑いを見せ、そんな彼に苦笑するしかないラディッシュたちであった。
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