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 ターナップを先頭に「村一番の木工職人の工房」へ向かう四人――
 
 そんな一行の中、頭の中がお花畑で満たされた様な「ふぬけ顔」して歩く人物が一人。
(大きな工房の中には何人もの弟子さんが居たりしてぇ、慌ただしく作業とか何とかしてぇ、色々しちゃったりしてるんだろぅなぁ~♪)
 浮かれ気分な人物は、呆れ顔のラミウムを背負うラディッシュである。
 調理の手法や、料理に適した調理道具を作製したりと、モノ作りに関して並々ならぬこだわりを持つ彼は、

≪村一番の木工職人の工房≫

 響きに、期待と妄想を大きく膨らませていたのであった。
 そのイケメンの「緩みきった笑顔」に、

(((キモ……)))

 少々引き気味の女子三人と、苦笑のターナップ。
 同性目線から、趣味人としての気持ちが分からなくも無く、
(兄貴、ちょっと可哀想っす……)
 憐れに思っていると、ドロプウォートがおもむろに、
「そう言えば先刻より、此方の村の女性方と一向すれ違いませんですわ?」
「確かに、そぅさねぇ。この時間は家に籠って「家事に専念」ってぇ訳でもないだろさねぇ?」
「でぇすでぇすねぇ。外での仕事をしている女性もいる筈でぇすぅ」
 女子三人の問いに対し、

「え、えぇ~と、それはッスねぇ……まぁ、一言で言うならぁ……」

 笑顔で口籠るターナップは少々言いにくそうに、
「城下での「噂」が、この村にも届いてやしてぇ、その……」
 ラディッシュをチラ見、

「「「ラディの噂ぁ?」」」

 女子三人も視線を追うと、木工職人に会う事が楽しみでならない鼻歌交じりの彼の耳には、会話が全く入っていなかったようで、見つめる四つの視線の気配に気付き、

≪どぅかしたのぉ♪≫

 振り向きざま、スキル【キラッキラのイケメンスマイル】を無自覚発動。
 女心を鷲掴みにする「光輝くラディッシュの眩しさ」に、

『『『!!!』』』

 女子三人は堪らず手をかざし、

「「「女子の天敵(さぁ・ですわ・でぇす)ねぇ!」」」

 闘技場に居た女性たちの心が「一瞬にして虜にされた件」を思い出したが、当のラディッシュは呑気な笑顔で、
「何かヒドイ言われようなんだけどぉ? 僕は女性に何もしないし、だいいち相手にもされないし♪」
 無自覚とは恐ろしい物。
 逆(女性側からの狂気)を全く考慮しない「残念イケメン」に、女子三人が色々と複雑な意味でため息を吐くと、

『(工房に)着きやしたぜぇ』
「「「「!」」」」

 ターナップに示された建物を見たラディッシュは、

「こっ、コレはっ!?」

 驚愕の表情と共に、言葉を失った。
 一階平屋建て……なのはともかく、壁は隙間が目立つ、雑な横張り板の貼り合わせで、屋根も長板を乗せ、錘代わりの石を乗せて押さえたダケの代物。
 工房と言うより「粗末な部類の馬小屋」と言う印象で、ラディッシュは理想と現実のギャップから、地蔵の様に固まった。
 しかし背中のラミウムは、
「何を期待してたのさぁねぇ、オマエさんはぁ?」
 さも当然と言った辟易笑いで、
「田舎の工房と言やぁ、こん位が普通さぁねぇ」
 同意のパストリスもおずおずと、
「ぼ、ボクの村もぉ、こんな感じでぇしたよぉ」
 こちらの世界の住人が言うのならば、その言葉は疑いようも無く、
「そ、そう言うなんだ……」
 頷きつつ、
(い、一流職人の工房なのに……「トコロ変われば」なのかなぁ?)
 腑に落ちなさを滲ませていると、納得いかない人物が、もう一人。

『なぁん何ですのぉコレはぁあぁーーーーーーッ!』

 ドロプウォートである。
 今にも倒壊しそうな工房を前に怒り心頭、
「職人と言えば、農民と双璧を成す国を支える「宝」ですわぁ!」
 自分がされた仕打ちの如くに大憤慨し、

「しかも「名うて」と聞く職人が、この様な生活水準とは納っ得いきませんでぇすわぁ! この国の役人は、いったい何を見てまぁすのォ!」

 誰にキレると言う訳でもなく荒ぶる姿に、
((((一番怒ってらっしゃるぅ))))
 困惑笑いのラディッシュ達。

 すると工房の、傷みの目立つ木戸がギィと軋みを立てて開き、
「四大(四大貴族)様のご令嬢にそう言っていただけるとはぁ、光栄でございますだ」
 騒ぎを聞きつけたのであろう、幾分背筋の曲がった初老の男性が姿を現した。
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