上 下
79 / 706

1-79

しおりを挟む
 ラミウムは、クスクス笑うラディッシュ達を背にヤレヤレ顔して、
「大司祭ぃ、アンタの教育はぁなっちゃいないねぇ~」
「?」
 厳罰を免れた安堵より疑問が先行し、

「と、申されますとぉ??」

 首を傾げると、ラミウムはテーブルの上の豪華なフルコースを見る様に促し、
「…………」
 言われるがまま、料理を見る大司祭。
「ッ!?」
 驚きと共に、ワナワナと怒りに打ち震えたかと思うと、

『こぉんのぉ、大馬鹿モンがぁーーーーーーーーーッ!』

 怒髪天を衝くが如く勢いで、ターナップに大激怒。
「へ?」
 怒鳴られた意味が分からず、呆けた顔する孫に、

「天世の方が「浄化されていない中世の食物」を、口に出来る筈が無いじゃろぅがぁ!」
「あぁっ!? ヤベェ!」
「やべぇで済まぬわぁ! この大戯けがぁーーーッ!」

 大司祭の火が出そうな雷が落ちる中、ラミウムが「中世の物が食べられない」事実を初めて知ったラディッシュとドロプウォートも血相を変え、

「今の話は本当なの、ラミィ! 僕たちぃそんな話ぃ聞いてないよぉ!」
「ですわですわぁ! もしや勇者召喚以来ずっと空腹をやせ我慢してましたのぉ!」

 詰め寄ると、

「ゆっ、勇者召喚の儀からじゃとぉおぉ?!」

 大司祭は大仰天。
「どれほど前の話ですじゃ!」
「ラミ姐さぁん、ソイツはマジで死んじまいあすぜぇ!」
「何で言ってくれなかったんだよ、ラミィ!」
「ですわですわぁ!」
 執拗に詰め寄る四人に、

「あぁウッサイねぇ! アタシぁアンタ等みたくヤワな体に出来てないんだよ!」

 面倒臭げな顔を見せたが、ラディッシュとドロプウォートは憤慨交じりに、
「だとしてもだよ! 何で言ってくれなかったんだよ! そりゃ調子も悪くなるよ!」
「ですわですわぁ! 水臭いですわぁ! 私達は仲間ではありませんのぉお!」
 大司祭と若司祭も涙交じりに詰め寄り、
「欠食で弱られている上にぃ、地世のチカラの侵蝕まで御受けになってぇ!」
「ラミ姐さぁん意地っ張りも大概にしねぇと、マジで死んじまいますぜぇ!」
 全ては一人で歩く事も出来ない身を案じての事であると理解しつつ、やいのやいのとまとわりつく四人に、

「だぁあぁもぅ大概しつこいねぇぇえぇ!」

 鬱陶し気な、追い払う仕草を見せると、

『ゴメンなさいでぇす!』

 いきなり声を上げたのは、それまで黙していたパストリス。
「「「「「!?」」」」」
 驚く一人と四人を横目に、まるで堰を切った様に、
「ボクは知ってましたでぇす! でもラミィさんに口止めされてぇてぇ!」

「ぱ、パストォ! アンタお黙りぃなぁや! あの同人みたいにぃ!」

「ヒン剥かれたってボクは黙りませぇぇぇん!」
「!」

 引っ込み思案のパストリスが、ガラッパチのラミウムを思いの強さで黙らせ、
「全てはラディさんと、ドロプさんの為だったんでぇす!」
「僕と?」
「私と?」
 意外な顔する二人に、パストリスは涙ながらに静かに頷き、
「本当の話をすれば、お人好しな上に、勇者と誓約者として実力が発展途上なお二人が、自分の技量も顧みず、急いで城に戻ろうとして、汚染獣や地世信奉者たちとの戦いで命を落とすのが目に見えるからって……」

(((僕・私)達の為ぇ?!))

 ラミウムの秘めた愛情の深さに心打たれる二人であったが、同時に、自分たちの不甲斐なさが心に深く突き刺さり、

(なのに僕は、自分の事しか考えないで強くなる事をためらってばかり……)
(私はラミィの心根を理解しようともせず、独り善がりに責めてばかり……)

 突き付けられた現実に下を向き、語る言葉を見い出せずにいると、
 ドサッ!
「「え?」」
 物音に、うつむく二人が顔を上げるより先、

『『『ラミ(ィさん・ウム様・姐さん)!』』』

 三人の悲痛な叫びに見た物。
 それは、椅子から崩れ落ち、床の上で意識を失うラミウムの姿であった。

『『ラミィーーーッ!』』
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました

竹桜
ファンタジー
 自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。  転生後の生活は順調そのものだった。  だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。  その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。  これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...