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ドロプウォートとパストリスの融和? から数日後――
進めど進めど、うっそうと茂る森の景色に変化は無く、城に近づいていている気配も微塵に感じられなかったが、他に頼る術を持たないラディッシュ、ラミウム、パストリスの三人は、今日も先陣切って歩くドロプウォートの知識を頼りに移動を続けていた。
もはや定位置と化したラディッシュの背で揺られ、
「ははぁ~今日も空が、青いさぁ~~ねぇ~~~」
呑気に、木々の間にのぞく青空を見上げるラミウム。
先日のドロプウォートの大失態により、結局ほんの僅かしか回復出来なかったラミウムは、足の黒ずみも戻り、未だ一人で歩く事さえ出来ずに居たのである。
穏やかな木漏れ日が降り注ぐ空を見上げたまま、
「アタシ等ぁ~飛ばされてからぁ~いったい何日経つのかねぇ~」
暗に、城に中々着かない事を愚痴って見せたのだが、それはラディッシュとパストリスも同じであり、三人の「不安な視線」は、おのずと数メートル前を導き歩く「器用貧乏ドロプウォート」の背に向けられた。
すると何かを察した如くにドロプウォートが前を向いて歩いたまま、
「私の計算では城に着く前に、まず「村」に着く筈ですわ」
憂いや陰りを感じさせない笑顔で勢いよく振り返り、
「ですから「城が見えず」に、未だ「村にも着いていない」と言う事は、方角が合っていると言う証なのですわ!」
自信満々のドヤ顔で言ってのけた。
しかし、
(((それって「逆方向」でも村に着かないんじゃ……)))
心の中でツッコミを入れるラミウムたち。
機嫌を損ねると後が面倒と思い、顔で笑って、心で不安を募らせると、人の「マイナス感情に関してダケ」は察しの良いドロプウォートが、三人の腑に落ちない笑顔にムッとして、
「私の知識に何かご不満でもぉ!」
「「「!?」」」
よもや見透かされるとは思っていなかったラミウム達は、慌てて宥めすかす様に、取り繕う様に、
「わぁ~てるよぉ、わぁ~てるさぁねぇ、信じてるよぉ、なぁ♪」
「う、うん! 僕たち疲れ気味のせいか、つい不安になっちゃってぇ、ねぇ♪」
「はっ、はいでぇす! 信じてまぁすでぇすぅ! よろしくお願いしますでぇす♪」
苦し紛れの笑顔。
「…………」
しばし、疑いの眼差しを向けるドロプウォート。やがて鼻息荒く「フン」と背を向け、
『分かれば良いですのわぁ! 分かればぁ!』
些か不機嫌そうに言い放ち、
「先を急ぎますわよぉ!」
再び先陣切って歩き始めた。
黙ってついて来いと言わんばかりの背に、苦笑を見合わせる三人。
しかし「人の顔色を窺う事」に長けたラディッシュだけは、気付いていた。
一見すると横柄に見える彼女の「強気な態度」が、実は「不安の裏返し」であるのに。
(かなり無理をしてるみたいだなぁ)
その気遣いは正解で、道案内を買って出た責任の重さから、
(うぅ……何やら胃が痛いですわぁ……)
人並みに重圧を感じ、三人分の懐疑の眼差しを背で感じつつ、
(だからと言って先導役の私までもが「不安を露わ」になど、する訳には参りませんですわ!)
決意を新たにしたが、豊富な知識と実力を全く生かしきれていない大失態の数々から、本音の部分では焦りが募り、
(あぁ~は言い切りましたけど……実は「方角を間違っていた」なんて事はありませんわよねぇ?!)
自問し、
(まっ、まさかぁこのまま城に着けず、永遠の放浪の旅をぉ?!)
最悪を自答すると、おのずと悲観が首をもたげ、
(お願いですから「村さん」早く出て来て下さいませぇ~~~)
祈る思いで歩みを進めたが、願いの強さと相反する様に、更に日々を重ねても状況に変化はなく、村の「む」の字も現れる気配はなかった。
それでも、自信たっぷり先頭を歩いて見せるドロプウォート。
彼女に今出来るのは、皆を少しでも不安にさせない「ソレだけ」であったから。
(はぁ……)
心の内で大きなため息を吐き、
(やはりワタクシ……またぁまたぁやってしまいましたのねぇ……)
浴びせ掛けられるであろう罵詈雑言の数々を妄想し、謝罪のタイミングを探しながら先頭を歩いていると、唐突に背後から、
『おい、ドロプゥ!』
何の前触れもなくラミウムの呼び声が。
「はひぃ!」
(謝罪の機会を得る前に呼ばれてしまいましてですわぁ!)
素っ頓狂な声を上げて背筋を伸ばすと、
「アンタぁ、どっから声を出してんのさぁねぇ?!」
半笑いのラミウムが、定位置の「ラディッシュの背から」の上から目線のしたり顔で、
「やりゃぁ出来るじゃないさぁねぇ」
「へ?」
「「へ?」じゃないよ……アンタ気付いてないのかぁい? 「浄化領域」に入ったのさぁね」
「・・・・・・」
頭の処理が追い付かない、キョトン顔のドロプウォート。
一方、聞き慣れない言葉を耳にしたラディッシュは、背のラミウムに肩越し振り返り、
「ねぇ、ラミィ。「じょうかりょういき」って……何?」
「あん? あぁ~そうかい。まぁアンタが知らないのは当然さぁね」
「そうなの?」
「この世界は教会を中心に、天世のチカラで「浄化領域」ってのを作っていてねぇ、町や村、城なんかもその上に建ってんのさぁね。だから「汚染獣」や「地世のチカラ」は、簡単には町ん中にまで及ばないのさぁね」
「つまりはでぇすよ、ラディさん。ボク達が「浄化領域に入った」と言う事は、村や町が近いと言う証なんでぇす!」
パストリスの笑顔に、
「じゃ、じゃあ僕たち、ついに戻って来れたんだねぇ!」
ラディッシュも笑顔満面で振り返り、人知れず心労を重ねていたドロプウォートに、
「凄いよ、ドロプさぁん! 地図も無しに、僕たち生きて城に帰れるんだよぉ!」
賛辞を贈ると、石の様に固まっていたドロプウォートが、
「よ…………」
「「「よ?」」」
「よがぁっだぁでず(良かったです)ばぁあぁあぁぁぁああぁ!」
綺麗な顔をクシャクシャにして、大声を上げて泣き始めてしまった。
そんな彼女を、
「あははは。僕たちが思ってたよりずっと、不安だったみたい」
「そうみたいでぇすねぇ」
「そりゃぁそぅさね。連日アレだけやらかしてりゃぁ、余程の神経無しでもない限り、不安にもなるだろぅさねぇ」
生温かい眼差しで見守る三人であった。
進めど進めど、うっそうと茂る森の景色に変化は無く、城に近づいていている気配も微塵に感じられなかったが、他に頼る術を持たないラディッシュ、ラミウム、パストリスの三人は、今日も先陣切って歩くドロプウォートの知識を頼りに移動を続けていた。
もはや定位置と化したラディッシュの背で揺られ、
「ははぁ~今日も空が、青いさぁ~~ねぇ~~~」
呑気に、木々の間にのぞく青空を見上げるラミウム。
先日のドロプウォートの大失態により、結局ほんの僅かしか回復出来なかったラミウムは、足の黒ずみも戻り、未だ一人で歩く事さえ出来ずに居たのである。
穏やかな木漏れ日が降り注ぐ空を見上げたまま、
「アタシ等ぁ~飛ばされてからぁ~いったい何日経つのかねぇ~」
暗に、城に中々着かない事を愚痴って見せたのだが、それはラディッシュとパストリスも同じであり、三人の「不安な視線」は、おのずと数メートル前を導き歩く「器用貧乏ドロプウォート」の背に向けられた。
すると何かを察した如くにドロプウォートが前を向いて歩いたまま、
「私の計算では城に着く前に、まず「村」に着く筈ですわ」
憂いや陰りを感じさせない笑顔で勢いよく振り返り、
「ですから「城が見えず」に、未だ「村にも着いていない」と言う事は、方角が合っていると言う証なのですわ!」
自信満々のドヤ顔で言ってのけた。
しかし、
(((それって「逆方向」でも村に着かないんじゃ……)))
心の中でツッコミを入れるラミウムたち。
機嫌を損ねると後が面倒と思い、顔で笑って、心で不安を募らせると、人の「マイナス感情に関してダケ」は察しの良いドロプウォートが、三人の腑に落ちない笑顔にムッとして、
「私の知識に何かご不満でもぉ!」
「「「!?」」」
よもや見透かされるとは思っていなかったラミウム達は、慌てて宥めすかす様に、取り繕う様に、
「わぁ~てるよぉ、わぁ~てるさぁねぇ、信じてるよぉ、なぁ♪」
「う、うん! 僕たち疲れ気味のせいか、つい不安になっちゃってぇ、ねぇ♪」
「はっ、はいでぇす! 信じてまぁすでぇすぅ! よろしくお願いしますでぇす♪」
苦し紛れの笑顔。
「…………」
しばし、疑いの眼差しを向けるドロプウォート。やがて鼻息荒く「フン」と背を向け、
『分かれば良いですのわぁ! 分かればぁ!』
些か不機嫌そうに言い放ち、
「先を急ぎますわよぉ!」
再び先陣切って歩き始めた。
黙ってついて来いと言わんばかりの背に、苦笑を見合わせる三人。
しかし「人の顔色を窺う事」に長けたラディッシュだけは、気付いていた。
一見すると横柄に見える彼女の「強気な態度」が、実は「不安の裏返し」であるのに。
(かなり無理をしてるみたいだなぁ)
その気遣いは正解で、道案内を買って出た責任の重さから、
(うぅ……何やら胃が痛いですわぁ……)
人並みに重圧を感じ、三人分の懐疑の眼差しを背で感じつつ、
(だからと言って先導役の私までもが「不安を露わ」になど、する訳には参りませんですわ!)
決意を新たにしたが、豊富な知識と実力を全く生かしきれていない大失態の数々から、本音の部分では焦りが募り、
(あぁ~は言い切りましたけど……実は「方角を間違っていた」なんて事はありませんわよねぇ?!)
自問し、
(まっ、まさかぁこのまま城に着けず、永遠の放浪の旅をぉ?!)
最悪を自答すると、おのずと悲観が首をもたげ、
(お願いですから「村さん」早く出て来て下さいませぇ~~~)
祈る思いで歩みを進めたが、願いの強さと相反する様に、更に日々を重ねても状況に変化はなく、村の「む」の字も現れる気配はなかった。
それでも、自信たっぷり先頭を歩いて見せるドロプウォート。
彼女に今出来るのは、皆を少しでも不安にさせない「ソレだけ」であったから。
(はぁ……)
心の内で大きなため息を吐き、
(やはりワタクシ……またぁまたぁやってしまいましたのねぇ……)
浴びせ掛けられるであろう罵詈雑言の数々を妄想し、謝罪のタイミングを探しながら先頭を歩いていると、唐突に背後から、
『おい、ドロプゥ!』
何の前触れもなくラミウムの呼び声が。
「はひぃ!」
(謝罪の機会を得る前に呼ばれてしまいましてですわぁ!)
素っ頓狂な声を上げて背筋を伸ばすと、
「アンタぁ、どっから声を出してんのさぁねぇ?!」
半笑いのラミウムが、定位置の「ラディッシュの背から」の上から目線のしたり顔で、
「やりゃぁ出来るじゃないさぁねぇ」
「へ?」
「「へ?」じゃないよ……アンタ気付いてないのかぁい? 「浄化領域」に入ったのさぁね」
「・・・・・・」
頭の処理が追い付かない、キョトン顔のドロプウォート。
一方、聞き慣れない言葉を耳にしたラディッシュは、背のラミウムに肩越し振り返り、
「ねぇ、ラミィ。「じょうかりょういき」って……何?」
「あん? あぁ~そうかい。まぁアンタが知らないのは当然さぁね」
「そうなの?」
「この世界は教会を中心に、天世のチカラで「浄化領域」ってのを作っていてねぇ、町や村、城なんかもその上に建ってんのさぁね。だから「汚染獣」や「地世のチカラ」は、簡単には町ん中にまで及ばないのさぁね」
「つまりはでぇすよ、ラディさん。ボク達が「浄化領域に入った」と言う事は、村や町が近いと言う証なんでぇす!」
パストリスの笑顔に、
「じゃ、じゃあ僕たち、ついに戻って来れたんだねぇ!」
ラディッシュも笑顔満面で振り返り、人知れず心労を重ねていたドロプウォートに、
「凄いよ、ドロプさぁん! 地図も無しに、僕たち生きて城に帰れるんだよぉ!」
賛辞を贈ると、石の様に固まっていたドロプウォートが、
「よ…………」
「「「よ?」」」
「よがぁっだぁでず(良かったです)ばぁあぁあぁぁぁああぁ!」
綺麗な顔をクシャクシャにして、大声を上げて泣き始めてしまった。
そんな彼女を、
「あははは。僕たちが思ってたよりずっと、不安だったみたい」
「そうみたいでぇすねぇ」
「そりゃぁそぅさね。連日アレだけやらかしてりゃぁ、余程の神経無しでもない限り、不安にもなるだろぅさねぇ」
生温かい眼差しで見守る三人であった。
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