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ドロプウォートは痛々しく変色した両足を、怒り、悲しみ、疑問、後悔、様々な感情が入り混じった表情で見つめ、
(異世界から来たラディならともかく……何故に私は気付けなかったのですっ!)
顔を歪めると、
「だから見せたくなかったのさぁね! オマエ達は過剰に騒ぎ過ぎなんだよ!」
ラミウムは背を向けたまま憤慨し、
「アタシの体の事はアタシが一番よく分かってる。余計な節介焼くんじゃないさぁね!」
檄を飛ばしたつもりが、
「「「…………」」」
落ち込んだまま三人。
三者三様、責任を感じたうつむき顔に、
(ったく、揃いも揃ってお人好しばかりだねぇ……)
ラミウムは呆れ半分、嬉しさ半分、小さい笑みを浮かべ、
「ついでに言っとくが、パストォ!」
「はにゅ!」
「アンタに注がれた「地世のチカラ」は消した訳じゃない。チカラに呑まれない様に気を付けるんだねぇ」
「えっ!?」
面喰うパストリス以上に、
「何ですてぇ!」
落ち込んでいたドロプウォートが驚きのあまり、ガバッと顔を上げ激昂した。
当然である。
それはパストリスが街のど真ん中で汚染獣に変化し、暴走する危険性があるからに他ならなかったから。
ドロプウォートは血相を変え、
「先に「地世との縁(えにし)を絶った」と、言っていたではありませんかぁ! 地世のチカラを浄化していないとは、いったいどう言う了見ですのォ!」
「アタシぁ「絶った」とまで言った覚えは、」
「揚げ足取りですわァ!」
「おっ、ぉ落ち着いてぇ、ドロプさん!」
「これが落ち着いてられますのラディ! 彼女はまた、いつ暴走するかも知れないのですよォ!」
そこへパストリスも参戦し、
「どうして(ボクの中の地世のチカラを)消してくれなかったんでぇすラミウム様ぁ!」
「ぱっ、パストリスさんも落ち着いてぇ! ラミィにだって、きっと何か考えが!」
「だってぇラディッシュさん!」
むしろラディッシュと二人がもめていると、
「あぁ~もぅ~うっさい連中だねぇ!」
ラミウムは両耳を塞ぎ、
「いつか「必要になる」と思ったからさぁね!」
面倒臭げに言い放ち、
「なっ?!」
ギョッとするドロプウォート。
(必要になるなど、何を言ってますの!)
怒りに打ち震え、
「天世のお言葉とは思えませんですわァ! 地世とは「邪悪」そのものォ! その様なチカラなど、そもそも「この世界」に不要、無用の長物ですわァ!」
「地世が邪悪だとぉ?」
今度はラミウムが、怒気を含んだ声で首だけグルリと振り返り、
「アンタは「地世」を何だと思ってるんだァい! 天世が神じゃなけりゃあ、地世も悪魔じゃない! 単なる「立場の違い」なんだよォ!」
「たっ、立場の違いですってぇ?!」
脳裏を横切るは「地世にまつわる者達」が過去に行って来た、非道の数々。
(この人(ラミウム)は、いったい何を考えていますのォ!)
会話だけ聞いていると、どちらが天世人なのかと思えて来る。
「…………」
怒りのあまり返す言葉を見い出せずにいると、ラミウムは二人の激しいやり取りに怯えていたパストリスに視線を移し、
「いいかいパスト、良くお聞き!」
「ひぃうぅ!」
怯え顔でコクコク何度も頷く彼女に、一転した穏やかな口調で、
「今のアンタの体にぁ、強制的に注がれ膨れ上がった「地世のチカラ」と、アタシが与えた同等の「天世のチカラ」が均衡を保っている」
するとドロプウォートが、
「消せば済む話ではないですかァ!」
「横から茶々入れんじゃないよ「箱入り」がァ!」
激しい口調で一喝。
二の句を封じたうえで、悔し気なドロプウォートを静かに見つめ、
「それにアンタは、今のアタシに「ソレをしろ」と強いるのかぁい?」
「!」
ベッドに横たわったまま、自ら起き上がる事もままならないラミウム。
しかもそれは、身から出た錆などでは決してなく、ラディッシュ、ドロプウォート、パストリスを守り、盗賊村の全ての人々の命を守ったがゆえ。
全ては、中世に生きる人々を護った結果である。
良心に訴えかけた、半ば強引な理由で論破される形となったドロプウォートは恨めし気に、
「ず……ズルイですわ、ラミィ……」
声は次第に尻つぼみ、
「今、その様な物言いをされては、もぅ何も……」
人々の為にその身を削った友人の「痛々しい雄姿」に顔を歪めると、ラミウムは自嘲する様に、
「アタシながらに「卑怯な物言い」だとは思ってるさぁね」
小さく笑い、
「ドロプ、アンタの懸念は最もだけどねぇ……まぁ、パストなら大丈夫さぁね……」
パストリスを優しい眼差しで見つめ、
「パストは、村の連中と違って、流されず、事の善悪をよく理解している。簡単に、闇堕ちしたりはしないさぁね」
「「「…………」」」
(だと良いのですが……)
(ラミィがそう言うなら……)
(ボクなんかを信用されても……)
三者三様に思いを巡らす中、三人の不安を感じたラミウムは、
「パスト、ここに来な」
穏やかな口調で傍らに屈ませると、優しく頭を撫で、
「妖人として生まれた人間てのは、元々「地世のチカラ」との親和性が高い。だから一旦消した所で、心のありよう次第でいつ侵蝕され、暴走しちまうかも知れないのさぁね」
「!」
(それならぁ、なおさら消した方が……)
思い悩んだパストリスが、回復後に「地世のチカラを消してもらう確約」を口にしようとした刹那、
「ならぁいっそ、ソイツ(地世のチカラ)を飼い馴らす方法を、身に付けちまった方が得ってモンなのさぁね」
「「飼い馴らぁすぅ?!」」
考えもしなかった発想に、驚嘆するパストリスとドロプウォート。
(異世界から来たラディならともかく……何故に私は気付けなかったのですっ!)
顔を歪めると、
「だから見せたくなかったのさぁね! オマエ達は過剰に騒ぎ過ぎなんだよ!」
ラミウムは背を向けたまま憤慨し、
「アタシの体の事はアタシが一番よく分かってる。余計な節介焼くんじゃないさぁね!」
檄を飛ばしたつもりが、
「「「…………」」」
落ち込んだまま三人。
三者三様、責任を感じたうつむき顔に、
(ったく、揃いも揃ってお人好しばかりだねぇ……)
ラミウムは呆れ半分、嬉しさ半分、小さい笑みを浮かべ、
「ついでに言っとくが、パストォ!」
「はにゅ!」
「アンタに注がれた「地世のチカラ」は消した訳じゃない。チカラに呑まれない様に気を付けるんだねぇ」
「えっ!?」
面喰うパストリス以上に、
「何ですてぇ!」
落ち込んでいたドロプウォートが驚きのあまり、ガバッと顔を上げ激昂した。
当然である。
それはパストリスが街のど真ん中で汚染獣に変化し、暴走する危険性があるからに他ならなかったから。
ドロプウォートは血相を変え、
「先に「地世との縁(えにし)を絶った」と、言っていたではありませんかぁ! 地世のチカラを浄化していないとは、いったいどう言う了見ですのォ!」
「アタシぁ「絶った」とまで言った覚えは、」
「揚げ足取りですわァ!」
「おっ、ぉ落ち着いてぇ、ドロプさん!」
「これが落ち着いてられますのラディ! 彼女はまた、いつ暴走するかも知れないのですよォ!」
そこへパストリスも参戦し、
「どうして(ボクの中の地世のチカラを)消してくれなかったんでぇすラミウム様ぁ!」
「ぱっ、パストリスさんも落ち着いてぇ! ラミィにだって、きっと何か考えが!」
「だってぇラディッシュさん!」
むしろラディッシュと二人がもめていると、
「あぁ~もぅ~うっさい連中だねぇ!」
ラミウムは両耳を塞ぎ、
「いつか「必要になる」と思ったからさぁね!」
面倒臭げに言い放ち、
「なっ?!」
ギョッとするドロプウォート。
(必要になるなど、何を言ってますの!)
怒りに打ち震え、
「天世のお言葉とは思えませんですわァ! 地世とは「邪悪」そのものォ! その様なチカラなど、そもそも「この世界」に不要、無用の長物ですわァ!」
「地世が邪悪だとぉ?」
今度はラミウムが、怒気を含んだ声で首だけグルリと振り返り、
「アンタは「地世」を何だと思ってるんだァい! 天世が神じゃなけりゃあ、地世も悪魔じゃない! 単なる「立場の違い」なんだよォ!」
「たっ、立場の違いですってぇ?!」
脳裏を横切るは「地世にまつわる者達」が過去に行って来た、非道の数々。
(この人(ラミウム)は、いったい何を考えていますのォ!)
会話だけ聞いていると、どちらが天世人なのかと思えて来る。
「…………」
怒りのあまり返す言葉を見い出せずにいると、ラミウムは二人の激しいやり取りに怯えていたパストリスに視線を移し、
「いいかいパスト、良くお聞き!」
「ひぃうぅ!」
怯え顔でコクコク何度も頷く彼女に、一転した穏やかな口調で、
「今のアンタの体にぁ、強制的に注がれ膨れ上がった「地世のチカラ」と、アタシが与えた同等の「天世のチカラ」が均衡を保っている」
するとドロプウォートが、
「消せば済む話ではないですかァ!」
「横から茶々入れんじゃないよ「箱入り」がァ!」
激しい口調で一喝。
二の句を封じたうえで、悔し気なドロプウォートを静かに見つめ、
「それにアンタは、今のアタシに「ソレをしろ」と強いるのかぁい?」
「!」
ベッドに横たわったまま、自ら起き上がる事もままならないラミウム。
しかもそれは、身から出た錆などでは決してなく、ラディッシュ、ドロプウォート、パストリスを守り、盗賊村の全ての人々の命を守ったがゆえ。
全ては、中世に生きる人々を護った結果である。
良心に訴えかけた、半ば強引な理由で論破される形となったドロプウォートは恨めし気に、
「ず……ズルイですわ、ラミィ……」
声は次第に尻つぼみ、
「今、その様な物言いをされては、もぅ何も……」
人々の為にその身を削った友人の「痛々しい雄姿」に顔を歪めると、ラミウムは自嘲する様に、
「アタシながらに「卑怯な物言い」だとは思ってるさぁね」
小さく笑い、
「ドロプ、アンタの懸念は最もだけどねぇ……まぁ、パストなら大丈夫さぁね……」
パストリスを優しい眼差しで見つめ、
「パストは、村の連中と違って、流されず、事の善悪をよく理解している。簡単に、闇堕ちしたりはしないさぁね」
「「「…………」」」
(だと良いのですが……)
(ラミィがそう言うなら……)
(ボクなんかを信用されても……)
三者三様に思いを巡らす中、三人の不安を感じたラミウムは、
「パスト、ここに来な」
穏やかな口調で傍らに屈ませると、優しく頭を撫で、
「妖人として生まれた人間てのは、元々「地世のチカラ」との親和性が高い。だから一旦消した所で、心のありよう次第でいつ侵蝕され、暴走しちまうかも知れないのさぁね」
「!」
(それならぁ、なおさら消した方が……)
思い悩んだパストリスが、回復後に「地世のチカラを消してもらう確約」を口にしようとした刹那、
「ならぁいっそ、ソイツ(地世のチカラ)を飼い馴らす方法を、身に付けちまった方が得ってモンなのさぁね」
「「飼い馴らぁすぅ?!」」
考えもしなかった発想に、驚嘆するパストリスとドロプウォート。
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