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自身が女性から「好意を向けられた」などとは露も思わず、
(いっ、いきなり二人にソッポを向かれたぁ?!)
慄き、何かしら不始末をしでかしたと思い込み、
(どっ、どうしよう~きっとぉまた何かやらしてぇ怒らせたんだぁあぁぁ~~~)
血の気の引いた青い顔して、
(こ、これは少しでも美味しいゴハンを作って挽回しないと見捨てられるぅ!)
右も左も分からない異世界の、暗い森の奥深く、ポツンと取り残された自身を想像し、
(そ、その為にもぉ!)
引きつり笑顔でおずおずと、
「あ、あのぉ……」
女性二人の顔色を窺いつつ、恐る恐る、
「ちょ、調理するのにナイフがあったらぁ助かるんでぇすけどぉ……」
お伺いを立てる様に尋ねると、未だ赤面と動悸が治まらないドロプウォートが左手で顔を覆い隠したまま、右手で懐から一本の小型ナイフ(隠しナイフ)をサッと取り出し、
「さっ、差し上げますですわ! 新品ですので好きに使うと良いですわぁ!」
顔を見せること無く、柄の方から差し出して来た。
見ようによっては、つれなく突き放す態度に、
(そぅとぅ怒ってらっしゃるぅうぅ~!)
震えあがるラディッシュ。
(いったいぃ、いったい僕はぁ今度はぁ何をしでかしたんだぁあぁぁ~ああぁ!)
激しく衝撃を受け心の中で頭を抱えたが、何をしでかしたか分からないうえに、今更やってしまった何かは取り返しようも無く、少しでも印象を良くしようと精一杯の作り笑顔で、
「あぁ、ありぃがとうぅドロプウォートさぁん」
ナイフを受け取り食材に視線を移すと、
(こっ、これは!)
彼は気付いた。
料理を作る上で、とても重大な「とある不備」がある事に。
更なる怒りを買う可能性に、
(ど、どうしよう……)
悩んではみたもののソレ無くして料理を作るなど不可能であり、腹を括ると、引きつり笑顔で冷や汗を流しつつ、
「そっ、その……つ、ついでにそのぉ……「火」もぉ、起こしてもらえるとぉ……」
するとラディッシュの懸念通り、雑用依頼の連続に、
(なっ!?)
ドロプウォートの中の「四大貴族令嬢」としてのプライドが、首席「誓約者候補生」としての意地が、彼女の怒りの導火線に火を点け、
(これは一言申しませんとぉ!)
厳しく苦言を呈そうと勢いを以って顔を上げたが、彼女は彼女で失念していた。
自身の顔が、ラディッシュのキラキラスマイルに当たられた高揚から、未だ「真っ赤」であった事を。
「!」
気付きはしたが、顔を上げてからでは後の祭り。
(どぉ、ど、ど、ど、どうしましょ! この様な顔を見られては「好意を持たれている」と、誤解されてしまいますですわぁ!)
心の内で激しく狼狽。
その動揺こそ、好意を持ち始めていた気持ちの裏返しに他ならなかったが、国を守る使命を後回しに「男に現を抜かす」など彼女の信念が許さず、ましてや相手は最弱勇者。なおのこと事実と認める訳にはいかず、赤面を「怒りによる物」と誤魔化す為に、
「わっ、ワタクシは「貴方の小間使い」ではなくてよォ!」
不愉快をことさら強調する様に素っ気なくプイッと横を向き、憤慨を猛アピール。
するとその怒り様が、気弱なラディッシュの目には「怒髪冠を衝くが如き怒りよう」に見え、
(ヒィイィィ! 「激怒」していらっしゃるぅぅぅううぅぅう!)
跳ねる様に土下座し、
「ゴメンナサイ! ゴメンナサァイ! ゴメンナサイイ! ゴメンナサアァァァイィ!」
泣きながら平身低頭、何度も頭を上げ下げ平謝り。
その過剰なまでの連続謝罪攻撃に、
(わっ、ワタクシそこまで厳しく怒ったつもりはありませんですわよぉ!???)
ギョッとするドロプウォート。
驚きと共に、自身の羞恥を誤魔化す為に演じた「過剰な不機嫌」であったが故の後ろめたさから、
(い、言い過ぎましたのでしょうか?!)
後悔にも似た戸惑いを覚えていると、更なる追い打ちをかけられる様に、
「!」
ラミウムの批判する様なジト目が。
向けられた「物言いたげな眼差し」に、
(う……)
良心がチクリ。
しかしだからと言って、不機嫌を演じた理由(好意を持ち始めた可能性)を語って聞かせるなど、気高きドロプウォートは口が裂けてもする訳にはいかず、あえてツンとした態度を押し貫き、
「べぇ、別に責めている訳ではありませんですわぁ!」
つれない物言いでお茶を濁すと、落ち込みを見せるラディッシュを前に、
「しぃ、仕方ないですわねぇ! まっ、まったくぅ! 本当に「まったくぅ」ですわぁ」
不承不承である事を強調した上で懐から小袋を取り出し、中に入っていた親指サイズの「黒くて小さな石」二つを、集めた枯れ葉の山の上で「カッカッカッ」と打ち鳴らした。
(いっ、いきなり二人にソッポを向かれたぁ?!)
慄き、何かしら不始末をしでかしたと思い込み、
(どっ、どうしよう~きっとぉまた何かやらしてぇ怒らせたんだぁあぁぁ~~~)
血の気の引いた青い顔して、
(こ、これは少しでも美味しいゴハンを作って挽回しないと見捨てられるぅ!)
右も左も分からない異世界の、暗い森の奥深く、ポツンと取り残された自身を想像し、
(そ、その為にもぉ!)
引きつり笑顔でおずおずと、
「あ、あのぉ……」
女性二人の顔色を窺いつつ、恐る恐る、
「ちょ、調理するのにナイフがあったらぁ助かるんでぇすけどぉ……」
お伺いを立てる様に尋ねると、未だ赤面と動悸が治まらないドロプウォートが左手で顔を覆い隠したまま、右手で懐から一本の小型ナイフ(隠しナイフ)をサッと取り出し、
「さっ、差し上げますですわ! 新品ですので好きに使うと良いですわぁ!」
顔を見せること無く、柄の方から差し出して来た。
見ようによっては、つれなく突き放す態度に、
(そぅとぅ怒ってらっしゃるぅうぅ~!)
震えあがるラディッシュ。
(いったいぃ、いったい僕はぁ今度はぁ何をしでかしたんだぁあぁぁ~ああぁ!)
激しく衝撃を受け心の中で頭を抱えたが、何をしでかしたか分からないうえに、今更やってしまった何かは取り返しようも無く、少しでも印象を良くしようと精一杯の作り笑顔で、
「あぁ、ありぃがとうぅドロプウォートさぁん」
ナイフを受け取り食材に視線を移すと、
(こっ、これは!)
彼は気付いた。
料理を作る上で、とても重大な「とある不備」がある事に。
更なる怒りを買う可能性に、
(ど、どうしよう……)
悩んではみたもののソレ無くして料理を作るなど不可能であり、腹を括ると、引きつり笑顔で冷や汗を流しつつ、
「そっ、その……つ、ついでにそのぉ……「火」もぉ、起こしてもらえるとぉ……」
するとラディッシュの懸念通り、雑用依頼の連続に、
(なっ!?)
ドロプウォートの中の「四大貴族令嬢」としてのプライドが、首席「誓約者候補生」としての意地が、彼女の怒りの導火線に火を点け、
(これは一言申しませんとぉ!)
厳しく苦言を呈そうと勢いを以って顔を上げたが、彼女は彼女で失念していた。
自身の顔が、ラディッシュのキラキラスマイルに当たられた高揚から、未だ「真っ赤」であった事を。
「!」
気付きはしたが、顔を上げてからでは後の祭り。
(どぉ、ど、ど、ど、どうしましょ! この様な顔を見られては「好意を持たれている」と、誤解されてしまいますですわぁ!)
心の内で激しく狼狽。
その動揺こそ、好意を持ち始めていた気持ちの裏返しに他ならなかったが、国を守る使命を後回しに「男に現を抜かす」など彼女の信念が許さず、ましてや相手は最弱勇者。なおのこと事実と認める訳にはいかず、赤面を「怒りによる物」と誤魔化す為に、
「わっ、ワタクシは「貴方の小間使い」ではなくてよォ!」
不愉快をことさら強調する様に素っ気なくプイッと横を向き、憤慨を猛アピール。
するとその怒り様が、気弱なラディッシュの目には「怒髪冠を衝くが如き怒りよう」に見え、
(ヒィイィィ! 「激怒」していらっしゃるぅぅぅううぅぅう!)
跳ねる様に土下座し、
「ゴメンナサイ! ゴメンナサァイ! ゴメンナサイイ! ゴメンナサアァァァイィ!」
泣きながら平身低頭、何度も頭を上げ下げ平謝り。
その過剰なまでの連続謝罪攻撃に、
(わっ、ワタクシそこまで厳しく怒ったつもりはありませんですわよぉ!???)
ギョッとするドロプウォート。
驚きと共に、自身の羞恥を誤魔化す為に演じた「過剰な不機嫌」であったが故の後ろめたさから、
(い、言い過ぎましたのでしょうか?!)
後悔にも似た戸惑いを覚えていると、更なる追い打ちをかけられる様に、
「!」
ラミウムの批判する様なジト目が。
向けられた「物言いたげな眼差し」に、
(う……)
良心がチクリ。
しかしだからと言って、不機嫌を演じた理由(好意を持ち始めた可能性)を語って聞かせるなど、気高きドロプウォートは口が裂けてもする訳にはいかず、あえてツンとした態度を押し貫き、
「べぇ、別に責めている訳ではありませんですわぁ!」
つれない物言いでお茶を濁すと、落ち込みを見せるラディッシュを前に、
「しぃ、仕方ないですわねぇ! まっ、まったくぅ! 本当に「まったくぅ」ですわぁ」
不承不承である事を強調した上で懐から小袋を取り出し、中に入っていた親指サイズの「黒くて小さな石」二つを、集めた枯れ葉の山の上で「カッカッカッ」と打ち鳴らした。
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