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四月二十一日

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 今日こそ本当の日曜日、うむ、間違いない。
 間違いないのだが……そうだ、あたしには休日だからといってのんびりしている朝の時間はなかった。

 はぁ~、今日のあたしには朝の七時半から、団地周辺、中庭、公共の公園も含めた、自治会の「草取り」と言う名目の重要かつ重労働任務がある。

 天候は曇り空だからして、太陽ジリジリ攻撃は免れそうだ。
 けれど、世帯数の半分にもまるで満たないこの出席率はどうなの?
 あまりの不参加が多いため、入居まもなくの頃、罰金制度ができた。
 けれど効果は最初だけで、結局参加者はいつも同じだし、ほとんどが罰金未納状態。
 あたしは世間からズレてる人間だということは百万も承知だけれど、少なくとも自分が持ってる病で動けなくならない限りは、参加しようと決めている。

 でも、実のところ、本当にヘトヘトだ。
 職場でも人はいるのに人手不足、草取りも人はいるのに人手不足。
 あたしは怒ってるんだ、ずっと。 

 もっと言えば、これは「草取り」じゃない。もちろん草も取り除くけれど、樹木の伐採だ。
 素人が枝切りバサミで団地まわりや公園の木を坊主になるほど切って束ねる。
 これって住民の仕事なのか…管理者が職人を雇ってくれないから自分達でやる。
 木だって美しくない姿にさせられて可哀想。
 あたしはね、怒ってるの。

 でも、朝から3時間半、やり遂げてきたわ。
 やれ、もう一日分のエネルギーは100%使い果たしたわ。
 また、絵の前で居眠りするのは必至。

 あなたは昨夜からラボに泊まりがけだから、からかう相手がいなくてつまんないし、なんだか不貞腐れちゃう。

 汗だくでヘトヘトだけど、シャワーしてアイスを食べたら、そーだ、市長選に行ってこなくちゃ。
 くどいようだけど、あたしって世間からズレてるってよく言われるけれど、意外にちゃんとしてるところもあるのよ。
 もちろん、帰ってきたら不貞寝してやるけれど。

 あ、大粒の雨が落ちてきた。
 雨の降り始めの匂いは、その季節を感じるから好き。
 目を閉じるとその匂いに記憶が蘇るんだもの。

 草取りって言えば、ここに越してきた頃、わりかし近い場所に母方の叔父が居た。
 もんのすごい気遣いあふれる優しい叔父で、あたしはこの叔父が大好きだった。
 ある日、友人の結婚式で、どうしても草取りに参加出来ない時があった。
 まだ罰金制度はなかった頃だったと思う。
 なのに、その団地とは全く関係の無い叔父が、あたしの代わりに草取りに参加してくれたのだ。こんな人、中々いない。
 わざわざ誰も知らない人達に混じって作業してくれるなんて。
 そんなこと思い出したら、なんだかお胸がいっぱいになって、優しい気持ちになって、叔父に抱きつきたくなった。
 叔父はもういない。あのあと病であっという間に逝ってしまったのだった。
 会いたいけど会えない人。

 さあ、絵とにらめっこしたら不貞寝不貞寝。
 あなたが戻ってくる頃を見計らって、今度はあたしがクローゼットから飛び出してやるわ。
 こないだのお返しだからね。
 夜が楽しみ。

 
 
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