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四月十九日

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 今日は風が強かった。

 横断歩道の赤信号、僕らは立ち止まる。
 君の視力は僕よりも良く、横断歩道の上の何かを凝視している。

「診察前にドクターは、スリープ状態のパソコンの真暗いモニター画面を見て頭を直します。なぜでしょう? チッチッチッチッチッチッ…………」

「なに? なぞなぞ?」

「そ、なぞなぞ」

「え? 身だしなみ? わからないよ、なぞなぞだなんて知らなかったから、ちゃんと聞いてなかった」

「身だしなみ、半分正解。ヒント。あたしの場合、診察前に髪を梳かしてきゅーってゴムで結い直します」

 君は降ってきた夜のにわか雨に、昼間差していた日傘を広げる。
 パラパラパラと乾いた日傘に雨粒がぶつかる。
 信号が青に変わり、僕らは横断歩道を歩き出す。
 二、三歩踏み出したとこら辺に、黒いへなへなしたその状態では見慣れない物体が……
 
「あたしは髪を梳かすの。ドクターは頭を直すの。なぜでしょう?」

「そういうの、なぞなぞって言わないだろ……君って時々酷いやつだな」

「飛んじゃった時はショックだったでしょうね、きっと」
 君は目に涙を溜めている。

 僕はすこぶる真面目そうに返した。
「僕が将来そうなったら、君はそう言うのか?」

「ちっちゃい日傘だけど、あなたも早く入って、将来のためにも」

 それ答えになってないよ。

「あたしね、日傘の布に弾かれる雨の音が好きなの。こうしていろんな音が聴こえてきて楽しくて穏やかになれる……肩はだいぶ濡れちゃうけどね」

 答える気ないな。

「あたしだって、ほら。ストレス性の何とやらはここに存在してるわ」
 君は空いてる右手で左側頭部の髪をめくった。



 
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