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四月十三日
しおりを挟むおしゃべりなあたしがぐったり疲れた顔をしてじっと黙ってるものだから、
「嵐の前の静けさか」ですって、失礼しちゃう。
半日の土曜日の仕事を終えて、いつもならため寝の日だけど、今日は防波堤に座ってハンバーガーを食べているの。
シナバーグリーンの薄いカーディガンでも、少しも寒くない。
柔らかい春の海風に、さっきまでどうしようもなく苛立っていた脳みそも顔も心臓も背中も少しずつほぐれて眠たくなる。
平和に平らかになったあたしの眉間をあなたの人差し指が撫でる。
「そこに指を近づけてはダメ!」
なぜなら、眠たい時にそんなことしたら、あたしは明晰夢を見ることになるから。
せっかく気持ちよく目を覚ましている時に、夢の中に入り込んでしまうのはもったいないもの。
何も考えないで、ただ呼吸して目の前に見えるものに心洗われたいもの。
防波堤で長い間黙って空と海を見ている。
「何さがしてるの?」
「何もさがしてないわ」って言ったら涙が出てきた。
パラグライダーの雲のかたちを見つけたと思ったら、それはふるふると崩れてゆく。
ああ、やっぱり空を飛びたくなった。
「ねえ、やっぱり眉間を触って」そして手を繋いでいて。
あたしの明晰夢の中で、雲のパラより高く高くあなたと一緒に空を飛ぶの。
息が苦しくなるほどに高く速く。
このまま次のあなたの旅先に一緒に行ってしまいたい。
あたしはあなたが要ると思うのだけど、あなたにあたしは要るのかな。
古の穴掘り手伝ってもいいんだけどな。
しばらくここでこのままお昼寝してしまおう。
「今度はピザ持ってこようね」
今度って一体いつよ? 夢の最中なんだから話しかけないで。
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