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四月三日

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最近、すっかり見かけなくなった野良猫様の姿を見つけた

と思ったら、睨み合いの真っ最中

何があったんだ? きっと他愛ないこと

ふたりとも全身の毛を逆立てて、斜めに構えたまま固まって

あのS形に膨らんだもっふもふのしっぽ

喧嘩の行方が気になって、動かぬふたりから動けないあたし

どのくらい時間が経ったのだろう

猫様の睨み合いはゆっくり円を描きながら、斜め度合いを高めながら、じりじりとこちらに寄ってくる

彼らにきっとあたしは見えてない……と言うより生えてる草とか石と同じようなものだろう

雨がぽつぽつ落ちてきた

ああ、彼らの結末が気になる


傘がバッと開き、あたしの頭上に差し掛けられた

同時に、驚いた猫様たちが目にも止まらぬ速さで左右に消えた

「ただいま」

「今ここで傘を広げるなんて、なんてデリカシーのないことを」

「ただいま」

「あたしはお話のクライマックスを中断された気分よ」

「ただいま」

「……おかえり、傘、ありがとう」
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感想 43

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