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プロローグ
プロローグ
しおりを挟む高校の美術教師だった私は、十余年先の定年を待たずに教職を辞め、人里離れたこの山に入った。
美術部の学生たちの個性溢れる創作パワーに感心するのを通り越して、自分の古臭い表現に疑問を感じるものの、そこから抜け出せない歯痒さから山生活を選んだのだ。
長年空き家になっていた掘立小屋、もとい山小屋を譲ってもらい、独り者の私は気楽に四輪駆動の軽自動車一台で移り住んだ。
山の神秘は私のあらゆる感情を飲み込み、それを私に体現させようとする。
そんな時、自分は紛れもなく人間であると感じると同時に、何か違う者と一体化するというか、変化するというか、そんな心持ちになるのである。
けれども、ここに移ってから描くのは暗闇ばかり。その奥の得体を今以て描くことができないでいた。
しばしば夜中の鳥の不気味な声や、木々を伝い蠢くけものに少々怯えつつも、昼の山の動物たちとも親交を深め自然と交わりながら、山暮らしにも慣れた。
一年ほど経った頃から、卒業した教え子たちが自分たちの作品を携えて、この山小屋を訪れるようになった。
彼らの若い才能から逃げ出したはずなのに、こうして私を慕ってこんな山奥にまで遊びにやってくる。これは喜ぶべきところなのだろう。
そして私を訪れる教え子やその友人たちは、それぞれの不可解な体験を共有し、ここにすっかり置いていくのだった。
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