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色々整理するのは当然で。

きっと頭の中に私とは違う何かが詰まってる。

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 今の短い間だけど、辺境伯は普通にまじめで普通の思考ができる、極めて常識的な人だと感じた。

 つまり、あの公爵に脅されるような弱みはない。むしろ、あれは盛大な逆恨みというか、嫉妬みたいなもの。ゴミ(リリアーネ)の処理兼、嫌がらせ。


 だから、話せばわかってもらえるかなと思ったんだけど。


「あー あの、器は公爵令嬢でも、中身が平民……しかも半農の大工の娘とか無理でした? そういうことなら私、このまま出ていきますけど?」

「待て!」


 腰を浮かしかけた私に、辺境伯が待ったをかけたので、もう一回座りなおす。


「まず、最初にきちんと言おう。私は死んだ妻以外の伴侶をとるつもりはない。したがって君と結婚はできない。これは君に問題があるわけではなく、私が決めたことだ」

 あ、ハイ。すみませんでした。奥様ごめんなさい。


「大体、貴族の結婚は庶民のそれより時間がかかる。国王の承認と貴族籍の変更、なんだかんだで成立するまでにひと月はかかる」

 割と面倒なのね、貴族の結婚って。


「加えて今回は『魂替術』のこともある。中身が別人であることがわかれば、おそらくこの婚約自体が白紙に戻されるだろう。君が国や公爵の思惑に沿わなければならない理由がない」

「あ、そうなんですか」

 確かに、私がリリアーネとは別人だと証明できるのなら、そうなるか。でもなぁ まるっきりフリーになっちゃうと、またあのボンクラ王子がエンジンふかし出しそう。


「合わせて収集した第一王子の情報も……仮にも王族がとるものではないな。彼が立太子される条件の最重要事項が後ろ盾でもあったエステルソリス公爵の娘であるリリアーネとの婚約だったことは大抵の貴族は知っていたし、本人も理解していたと思ってたんだが……」

「え? 本人一ミリも理解してなかったですよ? 絶対」

 でなきゃ、あんな意気揚々とリリアーネを断罪できないだろう。


「そりゃあもう、婚約破棄自体も、それを言い渡すのもうれしくて仕方ないって顔でしたから」


 卒業パーティーの少し前から得意げな顔で計画してた。

 何回も止めた。せめてもう少し穏便にって提案もした。

 破棄ではなく解消でも、結果が同じでも負うダメージが違ってくる。

 私史上めちゃくちゃ頑張って媚び媚びしたけどダメだった。

 当日、もうどうにでもなぁれって気分でブッチしようとしたけどげに恐ろしきは強制力。

 逃げる直前に王子とゆかいな仲間たちにつかまって、彼らが準備した死ぬほど悪趣味なドレスを着つけられた。

 私を飾るように指示されたメイドさんたちの、あの気の毒そうな顔は忘れられない。


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