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色々整理するのは当然で。

なんでも、ない。ですよ?

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「……どうした?」

「ハッ! いえ、ナンデモナイデス」


 無意識にたわわな胸をつかんでいた……辺境伯の視線が痛い。痴女ではないですよ。これが消えたらもったいないなと思っただけですよ……


「続けていただいてもいいですか?」

「……ああ、魂替術は、使った者の魔力を喰らう。全部だ。足らなければ他から充填する術もご丁寧に記載されている。そして術は魔法じゃない。つまり──」


「……魔力が、なくなる?」

 続きを促すような間に、つい口をはさむと、正解だと言わんばかりに辺境伯が頷く。


「本来の侯爵子息は風、火、水の三属性の魔法が使えて、魔力量も底なしかってくらい多かったんだが、入れ替わったあと、全く魔法が使えなくなった。最初はなんだかんだとごまかしていたが、そのうちなんとなく背が縮んで、横に増えて……髪の色が変わって、顔かたちも。逆に、入れ替わりを訴えていた子爵令息の方は、徐々に背が伸び、すらりとした体形になり、髪の色も本来の明るい青に戻っていったんだ。その上、魔法は四属性全部使えるようになっているし、魔力量もけた違いに上がっていた。ばれるまでにひと月とかからなかったそうだ」


 辺境伯が、お茶で口を湿らせて、続ける。


「この件で、本当の子爵令息は捕らえられ、子爵家は取りつぶしになった。うわさでは一族郎党鉱山送り」

「……人生掛けるにはヤバい術ですね」

「だな。この事件の時俺は十歳になるかならないかくらいだったが、父に繰り返し言われたよ『人を呪えば必ずその報いは返る、他人を恨むな、妬むな、負の感情が『彷徨える禁書』を引き寄せる。もし禁書が現れても、決して手にしてはいけない』とな。他の貴族でも、おそらく禁書の恐ろしさは子供に伝えてるもんだと思うんだがなぁ 禁書には『魂替術』以外にも、呪い殺す術もある。実際、五年に一回くらいの頻度で、禁書が原因と思われる事案が発生する。主に思春期の──学園に通う世代が事件を起こす」


 リリアーネは、見つけちゃったんだ。『彷徨える禁書』を。


「ハイ。なんで禁書が原因だとわかるんですか? 当事者が自白するとか?」

 右手を上げて質問したら、辺境伯もちゃんと答えてくれた。


「いや……例えば、呪い殺そうとしたとする。恨まれていたものと恨んでいたものが、同時に消えるんだよ。俺の一つ上の学年の高位貴族に、下位貴族の子女を退学に追い込んだり、無理やり襲って傷物にしたりする割とクソみたいな連中がいたんだが、親の権力も相まって教師陣も制裁しかねてたんだが、ある日その高位貴族たちが、白昼突然黒い靄になって消えたんだ。残ってたのは服だけだ。同時に一人、下位貴族の子息が行方不明になった。部屋に、抜け殻みたいな衣服を残してな」

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