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色々整理するのは当然で。
所詮、儚いものなのか。
しおりを挟む誰。と、問われましてもねぇ 二人称代名詞が変わったのは、踏み込んできたせいかな。
「辺境伯様は、誰だと思いますか?」
失礼を知りつつ、質問に質問で返す。
「……それがわからないから聞いている。誰かはわからないが、君がリリアーネ嬢ではないということは確信しているがな」
「ただ単に、別人に見えるように演技をしているだけだとしたら?」
私の問いに、ふむと一拍考える間をおいて、辺境伯が口を開く。
「それならばたいした演技力だとほめよう。しかし、確信している理由は、別に自分の感のみというわけではない。君は『彷徨える禁書』という本のことを誰かから聞いたことはあるか?」
そんな厨二っぽい本、見たことも聞いたこともないので首を横に振る。
「必要とする人間の前に、必要とされた時に現れると言われる、どの系列の魔法にも分類されない『術』が載った本だ。その本に『魂替術(たまかえじゅつ)』というのがあるらしい。人間の魂を入れ替える術だ。俺が聞いた方法は、人の道に外れれば容易い」
あ、一人称も変わった。じゃなくて、本当にあるのか、そういう魔法……じゃなくて、術。
「俺は直接は知らないが、俺より五歳ほど年が上の世代は、実際、魂替術が使われたのを見ている。魔力が少なく、使えるのも土魔法のみ、容姿もまぁ……人並以下の子爵子息が、同級生の侯爵令息を妬んでな……」
うわー わかりやすい。
土魔法は、農民にはありがたい魔法だけど、貴族だと使えない魔法ナンバーワンだもんね。よっぽど魔力があれば、石礫をいっぱい生み出して発射! とか、落とし穴掘って魔物を生き埋め! みたいなこともできるけど、農民の魔力ならまあせいぜい、手のひらいっぱいの土を出すとか、畑ひと畝耕しましたみたいな魔法。植物の成長を促したりはできない。
はずれ中のはずれ。
「魂替術を使われて、子爵令息になった侯爵令息は当然ありのまま訴えたが、誰も最初は真に受けなかった。その前の魂替術が使われた事件が身内で完結していたせいで、その危険性があまり広く浸透していなかったこともあって、教師陣も信じなかったらしくてな。本当の子爵令息がいつも侯爵令息を逆恨みするようなことを言っていたのを周りは知っていたし、なんというか、周りも彼を軽んじていたからな。何をバカなことをと一笑に伏された」
「え、じゃあ、そのまま?」
「いや、魂替術は……長続きしないんだ。魔力が少ないものが使おうと思ったら他人の魔力を奪わねばならんのだが、禁忌を犯しても、術は割とすぐ効かなくなる。父が言うには、魂が本来の姿を取り戻そうとするから、徐々に外見が変わってくるんだ。侯爵令息に入れ替わったやつもな、最初は人気者になれてちやほやされていたらしいが、すぐにぼろがでた」
え、あ。じゃあこの髪の色がなんとなく元に戻ってる感じはそういうこと? せっかく美少女になったけど戻るんだ。いや、いいけど。私は私の外見の方がいいけど。この胸くらいは……残ってくれないかな、胸……
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