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前世の記憶は突然に。
いっそすがすがしいくらい自分のことばっかりだな。
しおりを挟むそうこうしているうちに月日は流れる。
貴族籍上は娘はまだ生きてることになっているので、男爵位は保持しているが、この春、娘が生きていれば十二歳になった年に、貴族の子供が必ず通わなくてはならない王立学園から、入学手続きの通達が届いたからさぁ大変。
王立学園は十三から十八までの五年間通うものらしい。来春、王都の学園に娘を行かせなければ貴族院から監査が入り、娘がすでに死んでいることがばれてしまう。
よほど体が弱かったりすると行かなくていいけれど、それはそれで爵位を継ぐのにふさわしくないということになり、その子しか子供がいなければやっぱり御家断絶である。色々武功を上げて新しく爵位を得る人がいれば、失う人もまたいるということか。
どうにか娘の代役を立てようと、見合う貴族の中から探し出したのが、同じく男爵家出身のマイト。
マイトの初めの夫は準騎士爵。どうして亡くなったのかは言ってくれなかったけど、幼い娘を残して亡くなったのだという。その娘を代役にしてしまえばいいと脂肪が詰まった頭でひらめいた。
しかし、いざ結婚してみれば、マイトの娘はまだ七歳。どう頑張っても十三だとは言い張れない幼さだった。
これについて、おっさんは騙されただの何だとぎゃあぎゃあ言っていたらしいが、幼い娘を女手一つで育てる苦労を知っているマイトは、離婚するつもりはない。
マイトの実家である男爵家は、兄が継いだのだがその兄もすでに亡くなっていて、その妻、マイトの義姉は一応家督が継げる対象であるマイトと娘を排除したいのを隠しもしないのだとか。貴族怖い。
マイトの方も、実家には何の未練もなく、この再婚は渡りに船だった模様。貴族の離婚は、お互いの了承なしには行えないから、男爵がいくら喚いたところで結婚してしまえばこっちのもんって顔だった。
あとから顔合わせをしたマイトの娘のミルリは、はにかんだ笑顔がかわいらしい少女だった。
「あたしに似なくてほんとによかったわ」
と、マイトはカラカラ笑っていた。
マイトたちは平穏な生活を手に入れたが、おっさんの抱えた問題は一つも解決していなかった。
そして、焦ったおっさんは、手っ取り早く娘の身代わりを立てることにした。
とはいえ、そこら辺の平民では魔力がなさ過ぎてやっぱり爵位を継ぐのにふさわしくないってことになりかねないので、そこそこの魔力を持ち、貴族の特権振りかざしたら何とかなる領民の中から。
焦っているとき、突然やってきた中央の教会の関係者から、辺境の村にものすごい治癒魔法を使う娘がいると聞いて、彼らが村にたどり着く前に、横からかっさらったわけである。
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