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前世の記憶は突然に。
成長すると行動範囲も増えていく。
しおりを挟む村長さんがうまいことやってるのと、このあたりを治めている男爵がずぼらな間抜けなのとの合わせ技で、取れ高が増えていることをごまかしているらしく、六割といっても、以前の四割取られていたころより、残る分が多いとお父さんが笑ってたけど。
ちなみに、日持ちしない野菜は税としてカウントされない。植える時期と場所をずらせば、同じ畑でそれなりに収穫できるようになってきた。
あと!
なんと!!
お父さんから、森の浅いところまでなら行ってもいい許可が下りました!
お兄ちゃんたちと一緒に行く、一時間以上森にとどまらない。物音を聞いたらすぐ逃げる……などなどの注意はあるものの、腐葉土や小枝くらいなら拾ってきてもいい事になったのです!
時間は早朝に限る。魔獣が出にくい時間帯らしい。
お兄ちゃんが仕掛けた罠の確認に行くのに同行する感じ。
獲れる獲物はキジに似た鳥や、前世の兎くらいのサイズの鼠。
大きな森イノシシは、もう少し奥に生息していて、秋口に男性陣が数人がかりで狩る。
私は本当に森の入り口あたりででっかい背負子に腐葉土とか枝とかをわんさかぶっこんで帰るのが任務。
「リリ、今日はいいとこに連れてってやるぞ」
とある初夏の日、お兄ちゃんが、いつもとは違う場所に連れて行ってくれた。
立ち入りが制限されていて、そこに行くには村長さんの許可がいるような場所と聞いて、どんなところかと思ったら。
いきなり森が切れて、目の前に断崖絶壁が広がる。しかもゴリっとえぐれていて、登るには相当なボルダリングの技能がいりそうな石の壁。
えぐれた先端は、見上げてみて十メートル以上……もしかしたら二十メートルくらいあるかも。すごい。
そのえぐれた上の台になったところに、なんと羊が!! たぶん羊。グレーでもこもこ。ラームと言う名前の魔獣。草食だけど気性が荒くて人間くらい軽くひき殺すことができる力がある。羊……かな……
なんでも、岩の上に生えてるコケみたいなのが好物で、生え始めてくるこの時期から、ここまで下りてくるんだとか。普段はもっと山の上の方に生息しているらしい。
その羊めがけて、お兄ちゃんたちが石を投げる! けれど、距離もあるし、私が前世で知ってる羊の四倍以上あるから、当たらないし当たってもそんなダメージなさそうにもしゃもしゃコケを食っている。
あの羊、肉が相当おいしいらしく、たまにこうやって何とか倒せないか頑張ってるんだそう。
生まれてこの方一度も食べたことないから、たぶん、相当捕まえるの大変なんだろうね。
お兄ちゃんたちが石を投げるのに疲れたころ、ふと思いついた。
そう、アレだ。昔読んだ小説にあったじゃないか。水をやりみたいに飛ばすやつ。えーっとなんだっけ。
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