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前世の記憶は突然に。
理不尽はどこにだってある。
しおりを挟む私は今、十三。暦がないので誕生日の概念はない。春生まれとか秋生まれとか、そういう分類くらい。
つまりまあ、早ければ今すぐ、遅くともあと二年もしたら誰かと結婚するってことか。前世、三十過ぎても独身だったのにね……
あ! あと、弟のレットは、村から歩いて五日ほどのところにある街にいる。正確には、街の学校の寮にいる。レットはやっぱりすごく頭がよかったんだ。
そんなレットに、神父さんが学校へ行くことを勧めてくれて、試しに受けてみた試験になんと最年少の首席で合格した。
学費が免除になったのもありがたかったけど、幸いにも、トイレや壁土の開発のおかげ(お礼は要らないと伝えていても、いくばくか包んでくれる人はそれなりにいた)で、うちにはある程度の余裕があったので、レットが学校に行くくらい何とかなった。
レットは最後まで、私が学校に行くべきだ、私の方が頭がいいと言っていたけれど、私は前世のインターバルがあるだけだ。
何もないところからあれだけの神童っぷりを発揮したレットこそ学校で学ぶべきだし、そもそも庶民の学校は男子しか入れない。女に学問は必要ないって風潮は田舎ほど高いのだ。
大勢で雑魚寝していた我が家は、なんとお父さんとお母さんと私だけになってしまった。家族が増えたって言ったって? 一緒に住んでいるとは限らないのだよ。
私は、冬の間は神父さんに頼まれて教会で小さい子に勉強を教えている。
なんでって、お裁縫が全くできなかったから。
前世はもうちょっと何とかなってた気がするけど、こっちの縫物はすごく難しい。布が固いし糸は太いし、ちょっとやり間違うとさんざんな出来栄えなのだ……
ついでにこの三年、寒いところでも育つ作物を探し続けていた。
いつまでも豆と芋と麦と野草では、なんか病気になりそうな気がして。
幸いにも、お父さんがいろんな村や街に行ってトイレを普及させるついでに、よそで育てている作物の種や苗をもらってきてくれたので、それを頑張って育てて種を採取している。
増えた作物は、カボチャ、ニンジン、大根、ごぼうと長いもの中間みたいな根菜、白菜とサニーレタスの中間のような葉物野菜、ネギとニラの中間のような、ニギという香味野菜。
どうやら、トマトやキュウリ、ナスもあるみたいだけど、このあたりでは寒くて育たない。品種改良とかもされてないだろうし、これは仕方ない。
米らしきものはない。がっかり。
採取した種は、村長さんに渡して、きちんと分配してもらった。うちも同じように。作付けは、やっと何とかなって来たってところかな。
うちは、移住から十年以上経ったので、税が通常徴収になってしまった。なんと収穫の六割! 半分以上!
私が知らなかっただけで、免除されていた十年だって、麦・芋・豆は四割、税で持っていかれていた。
異世界の農民に対する税、メタクソ高い。そりゃ、みんな貧乏から抜け出せませんよ。
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