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AFTER DAYS 終わらない日常
42b 真宮真吾の視点 2
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「か……かこう? かっ!! って、え?」
加工、下降、河口。
じゃなくてっ!
「囲う………?」
「そうそう。囲う。しかもヤツのほうが哉より期間ながいんでやんの。高二になる直前から一緒に暮らしてたっつーんだから、かれこれ二年」
「あー……あの直後……」
聞けば時間ぴったりじゃん。例のあそこのあの件。くっそぅ。やられた。あれからも何度か逢ってたのに、一言も言わないんだもんな。
「お? なんか知ってんの? 真吾」
「……忘れた」
「てめー都合イイ脳みそ持ってんだな?」
「そりゃな、記憶無くすのと命無くなるのとなら、記憶無くすほうとるって」
それにまぁ、あんまり人にべらべら喋っていいことでもないし。本人たちだって、なぁ。
その代わり、哉のことは聞かないから。速人が喋らないようなことってのは、わりと、よっぽどでしょ。
「……ふーん」
「……哉?」
速人がつまらなさそうに相槌を打つのと、哉が立ち上がるのとが重なる。ズボンのポケットから携帯。
そのまま短く応答してスタスタと店外へ。
「仕事か?」
「だろう。あれでかなり忙しいらしいから。土曜も毎週午前中は仕事に出てるらしいし」
「そうなのか? 俺はてっきり、副社長とかなら仕事なんかないんだろうと思ってたのに。
大体さ、言えっての。こっち帰ってくるなら。そう言えばどうしてるのかなって思ってた元クラスメイトが、本屋に平積みされてたビジネス誌の表紙にでかでか載ってたら、びびるって」
売られてたのは去年の二月ごろか。連絡とろうにもこっちの連絡先なんか知らないし、礼良に聞いて電話かけたら、しれっと、十月からこっちにいるとかいいやがるの。怒る気にもならないよ。
「アイツそんなもんに載ってたのか?」
「知らなかったのか? 持ってるよ俺。中にインタビューとかも載っててさ。ホントかウソか、脚色されてんのか知らないけど、一問に一人で二ページ分近く語ってるの」
読む用と保存用の、計二冊。こう言う買い方を抵抗なくできてしまう自分ってなんだろうと思うけど。
現在の日本経済とか、会社のこととか、かかわってる業界のこととか。写真や資料もあったけどインタビューだけで十ページくらい。前後のヒカワの特集とあわせたらトップのカラーページから三十ページ近くがすべて、氷川一色。
「あー……仕事してる時は喋ってるぞ。びっくりするくらい。俺たちといる時はサボってるけど。一回職場にかけてみ? プライベートで喋るのとは全然違う速さで喋るし意思の疎通が伺える答えが返ってくるぞ」
「……へー……想像つかん。仕事そんなに好きなのか?」
あの哉が?
「好きでもないし、嫌いでもない」
うわぁ。
いつの間にか、哉が背後に。気配がないのと、騒がしいのと。
「お前、いつからいた?」
「今」
「仕事は?」
「片付けた」
するりと音もなく自分の席に戻って、氷が全部溶けてしまったウーロン茶を飲み干しながら、哉がそっけなく答える。
「そっちの話は?」
「終わりかけてた。お前の公私二重人格っぷり」
速人にそう言われて、哉が少し眉間に皺を寄せる。
「それとジュリチャンのこと」
「………………」
「ウソ」
すげー目で哉に睨まれて、速人が笑った。
「……どうした? 真吾」
いや。別に、なんでもな……くはない。
「哉が、喜怒哀楽が……顔の筋肉が……」
それだけやっと言えた俺に、速人が壊れたおもちゃのようにまたおかしそうに笑い出す。
本人は気付いてないから、と言う速人の言葉どおり、哉自身はどうして俺が日本語を喪失するくらいの衝撃を受けたのか、速人が壊れたのか、無表情の中のわずかな変化の中に、わけがわからないって表情で飲み物のお代わりのオーダー。
「おもしれーだろ? 彼女限定だ」
おもしろい。確かに。
「あ」
また哉の携帯電話が鳴り出して、哉が席を立つ。ホントに忙しいんだなとその後姿を見送ってたんだけど、飲み屋の出入り口まで行って、落としかけた携帯をなんとか持ち直したあと、くるりとUターンして帰ってきた。耳に電話を寄せるのではなくて、画面を見てたのでメールかと思ったら、テレビ電話だ。画面でかい。色もキレイ。さすがにいい電話もってるなぁ。で、映ってるのはあの子。噂の樹理ちゃん。速人の顔をみて、カンザキセンセイモキイテクダサイって。先生って柄じゃないだろ、こいつは。
「ナニ?」
『あのっ なんだか氷川さん、信じてくれてないんですけどっ』
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