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AFTER DAYS 終わらない日常
42b 真宮真吾の視点 1
しおりを挟む『ああ、真吾(しんご)? 悪い。行けなくなった』
「は?」
『行くつもりだったんだが、もうムリだな』
「何がムリなんだよ」
『さっきUターンしたから』
「はぁ!?」
『ほんとに悪いな。運転してるから切……』
…………言い終わる前に切ってんじゃねぇ!!
短い通話時間が表示された携帯電話を見ていても仕方がないので諦めて折りたたんだ俺に、隣ですでに生中お代わり三杯目を半分空けた速人(はやと)が聞いてきた。
「どうした? まだ遅れそうって?」
「いや……来ないって」
「なに!? じゃあ俺がわざわざこんなところまで一時間以上かけて来たってのに、ヤツは来れないの一言で終わりなのか!? 礼良(あきら)も来るから中間地点でってことでこんな遠出になったんだろうが。今居るメンツだけなら近所の居酒屋で充分だ」
一気にそれだけ言って、残りのビールも一気。空になったジョッキ上げて、店員にお代わりの催促。
「怒鳴るなよ。わざわざってお前、哉(さい)に乗せてきてもらったくせに」
「時間と金がかかるだろうが、電車だと」
「車なんかで来たら哉が飲めないだろうが。なぁ哉?」
「……飲まないからいい」
ああ、そう。
軟骨のから揚げを食べながら、しれっとした哉の答え。
「プライベートでは断ってるもんな。酒」
「そうなのか?」
座ってる位置がカウンターのちょうど角。奥から俺、哉、速人。哉に顔を向けて聞いたら、ものすごく、嫌そうな顔をして頷いた。なにか知っているような口ぶりの速人を見ると、こっちはにやにや笑ってるし。
なんなんだ。俺が知る限りの哉は酒で失敗するようなヤツじゃないのに。でもどうしてと聞ける様子じゃないしなぁ。
「速人は相変わらずだな」
水のように、ってよく言うけど、水は飲めないよ。アルコールだからそれだけ飲めるんだ。
「家では発泡酒」
「充分だろう、発泡酒で。俺も家ではそっちだし。哉は」
「ない」
即答。答までに間がない返事。珍しいと言うより、初めてかも。哉ってわりと、喋る前に言葉を選ぶっていうか、相手に伝えるべき言葉を考えてる、そんな間を取ってる気がする。家でも飲まないってのは……
「引っ越し祝いだか就任祝いだかでもらったとか言う高い酒、捨てるって言うから全部もらった。言っとくけどもうないぞ」
速人にかかったら高かろうが安かろうがあっという間だろう。
「でもなんか、生活臭漂うよな……発泡酒って」
「悪かったな所帯じみてて」
「そこまでは言ってない」
言ってないけど、正直なところ、こんな風な速人は想像してなかったと言うか。もっと人生面白おかしく思い通りにやってそうな気がしたから。それこそ飲んでる酒は、哉が持ってたって言うような高いヤツ、キレイな女の子侍らせてやってる感じ。実際高校から大学の頃はそうだったから。
「所帯っつったら礼良だよ。もう、マジびっくり。あいつこそ死ぬまで独身だろうと思ってたのに、まさか」
生徒に手を出すとは。
「あー。ソレソレ。うん。女子高生囲ってんのなんざ哉だけだと思ってたのに、聞いたらヤツもだろ? さすがの俺も笑ったわ」
は?
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