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AFTER DAYS 終わらない日常
27 草野キリカの視点 1
しおりを挟む休題閑話
ちょっとここから「ん?」「どういうこと?」みたいなのが増えていきます。この「AFTER DAYS 終わらない日常」の次の章とその次の章で「あ……そういうこと」みたいな感じで落ち着く予定なので、お付き合いいただけるとありがたいです。
実際この章を書いていた時、前話「14 真宮真吾の視点」とこれから始まる「27 草野キリカの視点」の間に閑話を二つほど書いてたらしくてね…私(すっかり忘れてた)
アルファポリスの章設定の都合上、それをかませるのは難しそうなので、とりあえずこの章を突っ走って、種明かしにしたいと思います。
っていうか、次はともかくその次は、もう一つ、このお話から生まれたスピンオフ「幸せのありか」の二人ががっつりダブル主演なんで、どっちに載せるか悩んだんですけど、本筋はこちらということで。
どっちも読んだらより面白い仕様になっております!!!(宣伝
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
あーもうっ大学。何でこんなに始まるの早いの? 高校より一週間も始業が早いってのはどういう了見なのかしら。
卒業からほとんど毎日毎晩、朝までゲームしてる自分が悪いんだけどさ、一緒にやってた弟や妹が、きっとまだ寝てるんだと思うとすごくムカつくわ。シロかキミ、どっちか嫌がらせに起こしてから来たらよかったわ。そう言えばやつら、今年入学だから普通より一日春休み長いんだよね。ああ、ほんとに、嫌がらせしたい。
とりあえず今出来るのは、どっちかの担任が井名里先生になるように呪うくらいか。あとは数学の担当が井名里先生になるように。シロは多分ついて行きそうだけど、キミは無理だろうからできればキミで。
なんてバカなこと考えてないと、ほんとに寝そうだったの。明日は学校だから寝なきゃって思っても、体が休みに慣れちゃって眠れないから遊ぶ悪いパターンが身についちゃってさ。
昨日の入学式も眠いかったけど、今日あったガイダンスも眠くて死にそうだったわ。そのあとそのまま、ガイダンスを受けた教室で、同じ学科の仲良くなれそうな子たち……って言っても女の子が少ない学科だから、なんとなく同じ学科の女の子全員と同じ選択することにして、情報収集。
大抵、同じ地区内の高校からなら毎年一人や二人入学生が居てもよさそうなもんだけど、なんと私が受けた学科には去年もその前もまたその前も、新城東からは誰も入っていないのだ。頼みの綱だった仰木樹希(おうぎたつき)(一応この大学のこの学部の某ゼミの助手で今のところまだカレシ)は『リカだけ贔屓するようなことはしません』とかいいやがって、聞いても教えてくれない。贔屓してよバカ。だから私にはどの先生の授業を取ったらいいのかなんてサッパリ。要領のいい子はちゃっかり教科書とかも先輩に譲ってもらうらしい。ほんとに、教科書代もバカにならない額。これもバカ樹希に職員割引ないのって聞いたけど『あるわけないだろバーカ』と言われてしまった。バカを伸ばされると本当にバカにされてるみたいでハラ立つわー。思い出しても。
「あ」
取りたい授業をチェックしてどの先生が女の子に甘いかとか、厳しいとか、雑談をしてたらジーパンのポケットに入れた携帯がガタガタ震えながら『キリカちゃんっ! カスミちゃんから電話だよ!!』と若手俳優の声で繰り返している。この声メロもいい加減変えないとここではちょっと恥ずかしいかも。高校生っていう生き物だった頃は何してもヘイキだったけど、もうこの場所は同じ『学校』でも『高校』じゃなくて、みんなおそろいの制服を着ていないってだけでなんだかこう言う些細なことでも変えたくなっちゃうからフシギ。
「はいはーいっ」
『あ、キリカ? 終わった?』
「終わったよー疲れたよぅカスミは? そう。んじゃなんか食べに行こう。おなか空いたよぅ」
待ち合わせを正門にして電話を切る。
お先にって立った時うしろから声をかけられた。
「ちょっと待って。今電話が言ってた『カスミちゃん』ってもしかして昨日新入生代表やってた渡辺夏清さん? ……えっーと……ああ、僕、青谷清一(あおたにきよかず)」
で、声をかけた本人、私の名前知らないんでやんの。そうそう。人に名前聞くときはまず自分から。あからさまにアンタダレ? ってにらむ私も私だけれど。
「草野。草野キリカ。私が電話してた相手がなにか?」
「えっと、うん。多分僕、同じ中学だったと思う。彼女と」
なんとなく胡散臭くて、邪険に見下ろすみたいになっちゃった。私、今日はちょっとばかりかかとの高い靴をはいている。彼の方が若干……十五センチくらい、頭の位置が低いものだから、その差だけのプレッシャーでたじたじして視線を逸らしながら、最後は口の中で含むような聞き取りにくい声でそう言った。
「え!? アオタニ君ってカスミと中学一緒だったの!?」
「ああ、クラスは違ったんだ。彼女は一組で、僕は三組。それにあの頃と雰囲気がすごく変わってて、別人だったとき恥ずかしいから、本人には聞けなくて」
そのあと確認するようにアオタニ君が卒業した中学の校名を言ってくれたんだけど、そう言えば私、カスミが出た中学の名前知らないわ。聞いても全然分らない学校。こっちが高校名を言っても、今度はアオタニ君が知らないから確認にならなかった。
「なら本人に聞けば? これから逢うから。カスミの方が覚えてるかもよ」
リュックを担ぎなおして、今度こそ女子にバイバイを言ってから、アオタニ君従えて歩く。
あーもう大学っ!! どうしてこう無駄に広いの?
その無駄に広い校内で、たまたま偶然、男子と歩いてる時に、廊下の向こうからなぜかバカ樹希が歩いてきたり。声かけようとしたのに、全然見えてないみたいな顔してすれ違われた。むかつく。中途半端にあげた手をどうしろと? 今度されたら追いかけて誰が居ようが抱きついてちゅーしてやるから覚えてなさいよ。
「草野さん?」
「え? ああごめん」
突然立ち止まってあげかけて止まった手を握りこぶしにして震わせてた私に怯えたようなアオタニ君の問いかけ。半径五十センチより少しはみ出してしまった怒りのオーラを範囲内に引っ込めて、歩き出す。
「行こう」
別にね。動揺しろとか、そう言うのはないけど。挨拶くらいいいじゃんか。シカトすんなバカ。
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