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やさしいキスの見つけ方
6-3 心
しおりを挟む耐えきれない快感の中で、夏清が頭を横に振りながら訴える。足を閉じ合わせてしまいたかったのに、体にうまく力が入らない。
夏清の体をまたいでいたはずの井名里が、いつのまにか夏清の両足の間に体を割り込ませていて、思いきり足を開かされている。体の奥まで覗かれているようで、恥ずかしさがこみ上げる。
「どうして?」
自分のソコを見つめる井名里の顔を見ることが出来なくて、夏清がぎゅっと目を閉じてしまう。
恥ずかしいからに決まってるじゃない、と心の中で叫んでも、言葉にすることができなくて夏清はただただ首を振る。
「こんなにきれいなのに?」
どこもかしこもきれいだった。薄い明かりの下で白い肌が浮きあがって、さらにそこに井名里がつけた赤い痕が散らばっている。
無毛の恥丘も、足を開かれて耐えられずにぱっくりと口をあけた秘唇も。ほかの部位が白いせいで、充血して赤くなった中心は、文字どおり咲いたばかりの花のように震えている。
「うそ」
目じりに涙を溜めた、夏清が言えたのはたったそれだけ。
こんな格好をしているときにキレイだと誉められても、素直に喜べるわけがない。
見つめられて、堪らないくらい恥ずかしくなって夏清が両手で胸を覆う。
「うそじゃない。きれいだよ」
そう言って井名里がひざを割るように手を入れ、所在なげに宙に浮く細い足を肩に乗せる。浮きあがった柔らかい尻の下へと指を滑らせて、そっと震える中心に口をつけた。
「…だめだめだめだめー!!! っああッ!! ………んっくぅ……!」
たったそれだけの刺激で、あっさりと夏清はイってしまった。夏清の腰ががくがくと震える。蜜が止めどなく流れて、井名里の顔を汚していく。
「ふぁ……ああ……どうしよう……ごめっ……ごめんなさ……」
不規則にびくんびくんと、足が跳ねる。胸を隠していたことも忘れて、夏清が両肘をついて頭を起こす。ぼろぼろと閉じた瞳から涙が零れ落ちる。どうしてなのかわからないまま、嗚咽をこらえて夏清が謝る。
「あやまらなくていいさ。気持ち良かっただろ?」
長くてきれいな井名里の指が、涙で濡れた夏清の頬をぬぐったあと汗で張りついた髪の毛を払ってくれる。
気持ち良かったかと問われて、頷きかけた夏清が慌ててあいまいに首を振る。
「わかんない。初めてだもん……こんなの……」
熱に浮かされたような、まだ涙の残る瞳が、戸惑うように揺れたあと井名里を見つめる。
初めてされた時は、体中あちこち痛かった。苦痛でしかなかった。ただ乱暴に自分の欲望を達するために動く従兄や叔父には夏清に対するいたわりもなにもなかったからだ。
「いやだった?」
頬を優しく這う指に、うっとりとひとみを閉じて、夏清が、今度ははっきりと首を横に振った。
いやじゃなかった。
体が別のものになったような気がするくらい、自分が自分でなくなったような気がするくらい、なにがなんだか訳がわからなくなったけれど、全然不快ではなかった。けれどこれが『気持ちいい』と表現されるものなのかどうか、夏清に分かるはずもない。
「そうか、じゃあもっと気持ちよくしてやるよ」
「え? あ……っふ」
余韻に潤むソコを指でなぞる。二度三度割れ目に沿うようになで上げると、またじわりと花蜜が漏れて指の動きがスムーズになったとき、するりと中指の第一関節まで、蜜を吐き出すその中に埋める。
「いっ……あんッ……」
そのまま中を探るように、ゆっくりと指を進める。細い指に、柔らかい肉が絡みつく。
そっとかきまわす。
指の質量に押し出されて、こぷん、と蜜がこぼれる。中に入った空気と蜜が攪拌されてぐじゅぐじゅといやらしく響く濁音に、夏清は頭の中までかきまわされるような錯覚に酔いながら目を閉じる。
「…………っ!!」
指の動きはそのままに、井名里がまたソコへ口をつける。産毛しか生えていない秘唇の中の、一番敏感な場所を乳首と同じように舌先でなでて転がし、吸い上げる。
胸が反り上がる。夏清の意志とは全然別の場所からの指令にしたがって、井名里の肩に上げられた足が突っ張るように動く。
大声で叫びそうになって夏清が唇をかみ締める。頬が真っ赤に上気し、首から胸にかけてうす桃色が広がる。鼻でくり返される荒い息に、小さな胸が上下している。
人差し指を抜くとじゅぷっ……っと言う音とともに大量の蜜がいっしょにあふれる。すかさず今度は指を二本に増やして、また挿入する。人差し指と中指が強弱をつけて中で踊る。攪拌される力が二倍になって、与えられる快感が二乗される。
「はぁ……あん、あッ! ……せん、せ……だめ、もう……も、耐えらんない…………よ、ぅ」
シーツの上をせわしなく這いまわっていた夏清の指先が、井名里の髪をそっと掴んだ。
熱っぽい息の間に、途切れがちの言葉。
仕事用に作ったものでも、こんなにいやらしい声を出したことは、夏清にはない。また井名里も、甘く脳髄に届くその声に、このまままたイかせてしまいたい衝動に駆られる。
「ダメ………こんな……わた、し、ばっかりぃ……セン、セ……も………いっ……しょ……じゃなきゃ……やだ」
その言葉に、井名里が顔を上げる。決して広くはないベッドの上で、いつのまにか追いたてられて夏清は枕を肩に当てるようにしている。首が不自然なくらいギリギリまで上げられて、肘をついて支えないと辛そうな体勢。それでも井名里のことを考えて、精一杯両手を井名里の頭に伸ばしている。
井名里を見ながらいやいやをするように夏清が頭を横に振る。
そこにある劣情に井名里が息を呑む。だめになるのはこちらの方だと思いながら、苦笑すると肩に乗った足を下ろして、そっと指を引きぬき、体を離す。
「あッ……」
腰を持ってぐい、と引いて、夏清の体をベッドの中央に移動させてやる。突然動かされて、すがろうとする夏清に、井名里はちょっと待ってと言い置いてベッドからおり、すぐ脇のサイドボードの引出しから薄い袋を取り出す。
袋の端を咥えて片手であけながら同時に穿いたままのトランクスを脱ぎ捨てる。
黙って近づいてくる井名里のしぐさの一つ一つから目がはなせない。
「……あんまり見るなよ。照れるだろう」
言葉と裏腹に余裕さえ見える笑みを浮かべて、井名里が夏清に覆い被さる。
「うそ、ばっかり。人のこと散々見てたくせに」
そっと井名里の頬に触れる。汗ばんだ髪に指を絡める。
「先生が言ってたの、ちょっとわかった気がする」
「ん?」
「うん。今すごくキスしたい」
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