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2 なんとなくもやもやする、のはなぜなのかと。

こうげきはさいだいのぼうぎょだ。

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すみません、なんか予約投稿がずれていて、次の話が先に公開されていました・・・(なんで

明日公開分を気づいた今()公開にします。明日7時は更新ありませんごめんなさい。


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 私が選んだのは、まだボーカロイドがそこまで世間に浸透していなかったころにその存在を知らしめた、その筋じゃ知らない人はいないくらい有名な曲を選んだけど、きっとここにいる人たちはこの曲の元歌を歌ってる存在がなんなのかもこの曲も知らないんだろうなぁ。

 この曲でボーカロイドの楽曲に目覚めた私が偉そうに言う資格はないのだけど。


 しっとりとバラードを歌い上げた佐藤君に、内藤さん達が拍手をしている。他の人との扱いの差がすごいなぁ


 そしてすぐにバラードの余韻を吹き飛ばすようなポップな伴奏が流れ出す。

 慌ててステージにいる佐藤さんのところに行って、マイクを譲ってもらう。

 私が似合わないくらいかわいい感じの曲を選んだことにびっくりした顔をしている佐藤君に、ちょっと笑いかける。

 きょとんとした顔は本当に三十を過ぎた男性の物とは思えなくて。

 まるで聞いたことのないイントロと、高音の女の子のコーラスに、内藤さん達が顔を見合わせている。

 知らない曲なのに古臭くないから戸惑っているみたいだ。

 歌い出しの部分の低音が出しにくいので、三キー上げる。一瞬イントロがぐにゃんと曲がって、安定する。


 息を一度大きく吸って、歌いだす。

 自分勝手なことをしている人たちを見たくなくて、だからほとんど目を閉じて。

 大好きになった歌だから、家にある防音室で飽きるほど歌った。もう歌詞は見なくても覚えてしまっている。


 一番の最後のサビの部分。つい癖で囁くようにつぶやくように言ってからしまった! と思ってももう遅い。似合わないことをしてしまった。


 つい目を開けると、全員がこっちを見ている視線とぶつかった。うわぁ やっぱり変だったのかな。

 すぐに二番が始まって、もう一度目を閉じる。心臓がバクバクしちゃうかわいい恋の歌だけど、私は別の意味で心臓が壊れそうだ。

 とか考えながら、結局最後の部分も歌わずに囁いてしまった。家で一人自己陶酔でやってた癖がこんなところで裏目に出るとは。


 マイクを置いた私を見て、誰かが拍手をくれた。目を向けると友枝さんがヒューヒュー言いながら手を叩いていて、他の人がつられて拍手をくれる。

 顔に血が集まるのを感じながらぺこぺこお辞儀をして、さっきまで座っていた佐藤君の隣に座る。あ、別のところに今移ったらよかったんじゃないか!?


 ちらっと内藤さんを窺うと、かわいい顔が苦虫を潰したみたいになっている。

 そして、案の定私の歌なんか聞いてなかったのだろう、手にリモコンを持っている。

 それを乱暴に操作して、自分が入れた曲を削除してしまった。

 大型の薄型テレビの画面に、キャンセルしましたと表示されるので、何をしているのかは分かってしまう。

 メガネをはずしているせいで、内藤さんがどんな歌を入れていたのかは分からなかったけど歌わないのかな、内藤さん。

 そして、内藤さんの前に入れていたのか後に入れていたのか、同じ総務の先輩が以前ドラマの主題歌になった曲を歌いだす。


 他の取り巻きの皆さんが、不機嫌さを隠せない様子の内藤さんをチラチラ伺ってるけど、他の人がいる手前、居酒屋のトイレでのやり取りみたいなあからさまなおだて方もできないのか、その一角でなんかすごく、気まずい雰囲気が流れている。


 ついでみたいにこっち見ないでもらえますかね。私のせいですけど。



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